PARTNER
PARTNER

電子印鑑GMOサインの“次のUX”をかたちへ──共に挑んだプロダクト再構築の軌跡

GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社が提供する電子契約サービス「電子印鑑GMOサイン」(以下GMOサイン)は、コロナ禍におけるリモートワークの普及や脱ハンコの流れに伴い、急激に注目を集め、ユーザー数が飛躍的に伸びました。一方で、サービス開始当初よりもユーザーのニーズが多角化し、全面的なリニューアルが求められていました。

株式会社セブンデックスは、そのGMOサインのプロダクトフルリニューアルをご支援。ユーザーリサーチを起点に、UI・UX設計からデザインシステム構築までを包括的に担当しました。

どのようにしてセブンデックスは既存のプロダクトを再構築し、GMOサインならではのユーザー体験を設計したのか。そして、このプロジェクトを通じて築かれた両社の関係性とは。本プロジェクトに携わった株式会社セブンデックス 代表取締役 中村と、GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社 GMOサイン事業部 部長 牛島直紀様に、プロジェクトの背景から今後の展望までをお話しいただきました。

問い合わせ後、相談会の日程を提案いたします!
自社の課題をプロに壁打ちする!

急成長プロダクトの“複雑化”にどう挑んだか?セブンデックスが担った、GMOサインのUXフルリニューアル支援

ー今回のプロジェクト体制やアウトプット、そしてプロジェクト発足の背景について教えてください。

牛島さん:
最初にお願いしたのが2020年の冬頃でした。GMOサインは2015年11月にリリースしたサービスですが、2020年の春、コロナ禍による緊急事態宣言が出され、リモートワークの普及とともにユーザーが急激に増えたんです。それまで機能追加をする中で、UIが複雑になったり、つぎはぎになったりという課題感を持っていたのですが、このタイミングで全面的にUI・UXを見直そうということになったのがプロジェクト発足の背景です。

中村:
今回のプロジェクトの体制はGMOサインの運営を担当している皆さんと我々セブンデックスの合同チームで、当時のメインメンバーとしてフロントに立たれていたのは、UX設計やデザインを担当するチームの方々でしたね。我々は、ユーザーリサーチから始まり、UX設計、さらにデザインシステムの構築、UIデザインまで、プロダクトをフルリニューアルするという広いスコープで担当させていただきました。

GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社 GMOサイン事業部 部長 牛島直紀様

ーありがとうございます。今回、パートナー企業を探される中で、セブンデックスを選ばれた決め手をお聞かせいただけますか?

牛島さん:
そうですね、まず一番はUI・UXの改善実績がある企業であることが非常に大きかったと思います。プロジェクトの目的がUI・UXの改善でしたので、その領域での実績が豊富なパートナーを求めていました。それに加えて、様々な企業様と商談を進めていく中で現場のメンバーからよく耳にしたのが、「セブンデックスさんだったらワンチームでプロジェクトに取り組めそうだ」という声だったんですよね。発注者と受注者という堅苦しい関係ではなく、まるで自社の内部チームのような感覚で、率直な意見を交わしながら一緒に仕事ができる雰囲気を感じたことが決め手でした。

中村:
今だからお聞きしたいお話しなのですが、具体的にはどのような流れで決まったのでしょうか?他にも検討された会社さんもあったかと思うのですが、実際にはどのような感じで決めていただいたんでしょうか?

牛島さん:
そうですね、おっしゃる通り業界内の複数の企業さんにご提案いただいていました。当然、各社から企画書などを頂いて比較検討していましたが、正直なところ、私自身はデザインの専門家ではないので、最終的には弊社企画開発部メンバーの現場の感性に任せる部分が大きかったですね。もちろん、私の立場からは実績や金額、コスト面など客観的に評価できる点はしっかりチェックしましたが、それ以上に重視したのは、やはり現場メンバーが「この方々となら気持ちよく仕事を進められる」と感じられるかどうか、という温度感でした。現場からの信頼感と「一緒に仕事をしたい」という熱意が一番の決め手になったと思いますね。

UI/UX改善への期待から始まり、チーム全体でサービスの本質へと踏み込み、深化したプロジェクト

ー当時、プロジェクト開始時にセブンデックスへ期待されていたこととして、もちろんUI・UXの改善という部分が大きかったと思うのですが、それ以外にも何か期待されていたことはありましたか?

牛島さん:
正直に言うと、ほぼUX・UIの改善への期待に集中していました。我々としては、本当にそこを直したいという想いが一番強かったので。というのも、当社はクラウドインフラ事業や電子認証事業をメインとする企業で、SaaSのUXやUIといった分野については十分な知見がありませんでした。サービス開始から約5年間、自分たちなりに進めてきましたが、やはりプロフェッショナルの意見を取り入れながら、さらに質の高いものへと改善していきたいというのが率直な期待でした。ですので、当初の感覚としては、UX・UI改善が期待の90%を占めていたと思いますね。

ーそうだったのですね。そのような期待がプロジェクトを進める中で変化していった部分はありますか?

牛島さん:
そうですね、実際にプロジェクトが進行する中で意外な気付きがありました。具体的には、サービスのブランディングや事業ミッションといったより深い部分まで言語化し、共有する必要性が出てきたんです。当時のデザインチームは、もともとは広告デザインを担当するチームだったのですが、彼らがブランディングを真剣に考えるようになったというのが印象的でした。

また、当時は事業メンバーが20人ほどでしたが、コロナ禍で急激にメンバーが増え、その中で改めて自社のブランドやミッションを整理する必要性に気付かされました。我々のサービスがどう見られたいのか、事業としてのミッションをどう定義していくべきか、そうした共通の言語化が不可欠だと感じるようになりました。

中村:
私たちも元々はブランディングやマーケティング、プロダクトを一体化させて考える思想は持っていましたが、GMOサインさんとのプロジェクトでは特にその重要性を強く感じましたね。市場リサーチを進める中で、機能だけで差別化するのは難しいことが明確になりました。当時の電子契約市場は競合が非常に多く、さらには新規参入者も相次いでいて、どの企業も似たようなサービスを展開していました。

その中で、本当にユーザーにとって価値のある体験を作るためには、機能面の優劣だけでなく、誰のために、どういった思想でプロダクトを提供していくかが非常に重要だと考えていました。そうした観点を深めていくことが、このプロジェクトの中でより際立ったという印象がありますね。

牛島さん:
まさにその通りで、我々のサービスは元々多機能性が強みで、署名方法ひとつとっても、立会人型や当事者型、さらにはマイナンバーを利用した署名、送信方法もメールに加えてSMSまで対応しており、幅広い要望に対応できるようになっています。ただ、そうした多機能性がかえってユーザーに選択の負担を与えてしまう側面もあり、まず最初に中村さんにお願いしたのが、不要な機能を削ぎ落とすことでした。ユーザー体験の本質に立ち返り、「どんな体験を提供したいのか」を深掘りして考えられたのは、本当に大きな気付きでしたね。

中村:
プロジェクトの序盤で牛島さんからそうしたご指摘をいただき、プロダクトの作り方そのものを再考しましたね。使われるかどうかという単純な視点だけではなく、法務業務を含む関連業務全体を俯瞰したときに、多機能性が持つメリットとユーザビリティの両立を考えるのは非常に難しい課題でした。クラウドサインは契約締結に特化していましたが、GMOサインはDX化を推進し法務業務全般をデジタル化することを目指していたため、機能の優先順位付けや思想に基づいた取捨選択が必要だったんです。そのバランスを見極めるのが、非常に重要な課題だったと思いますね。

本質を捉えた情報設計で導く。ナビゲーションと文言に宿るセブンデックスのこだわり

ー少し話を戻しますが、支援開始時にはセブンデックスとしてどのようなアプローチで課題解決に取り組もうと考えられていましたか?

中村:
当初伺っていたお話では、やりたい方向性やサービス全体としての方針はあるものの、プロダクト自体を具体的にどういう方針で進めていくのかが明確には定まっていない、という状況でしたね。当時は、主に広告や集客などを改善して伸ばしていく方向で進められていましたが、プロダクトそのものがどのようにあるべきかという点については、まだ明確に整理されていない印象でした。

また市場環境としては、既に他社の電子契約サービスが先行していて、その存在感が非常に強かったです。そのため、プロダクトのUXやデザインを決める上では、自社がどのポジションを狙っていくのか、どこにユーザーのニーズがあって、どの部分が満たされていないか、さらに競合と比べてどこに優位性を築けるのかを徹底的に分析しなければ、良い体験設計やデザインを作ることは難しいと考えていました。

とにかく、ユーザーの実態やマーケットの状況、競合との差別化ポイントを高い解像度で把握し、それを競合が追随できないレベルで進めていくことが重要だと思っています。ただ、支援を進める中で、現実には制約も多く、そうした理想的な形を実現するのは容易ではありませんでした。そのため、まずはプロダクトチームの皆さんとしっかり目線を合わせること、そして良好な関係性を築くことに注力しましたし、同じ目標を共有し、一緒に取り組める土台を作ることこそが、プロジェクトを成功させるために最も必要なことだと考えていましたね。

ー実際にGMOサインさんの改善や体験設計を進める中で、GMOサインらしさとユーザー体験の両立に特に意識したデザインポイントはどのようなところでしょうか?

株式会社セブンデックス 代表取締役 中村

中村:
牛島さんからは当初、「誰もがわかりやすく使えるものにしたい」というご要望をいただいていました。それはGMOサインが将来的に幅広い顧客層に利用されることを考えると、とても重要な視点ですし、契約締結だけに留まらず、その周辺業務、つまり契約の送信や管理、さらには契約関連業務全般で利用できるプラットフォームにしたいという思いも強く伝わっていました。GMOサインの場合、契約と言っても単純なフォーム的な契約だけではなく、企業間や当事者間での合意書など、より広義の契約業務にも対応していますよね。

そのため、営業や法務、総務など多様な部署の方々が利用する可能性がありましたし、業務に関わる方のリテラシーも非常に幅広かったんですよね。そうした背景もあり、ナビゲーションのわかりやすさやUXライティングには特に注力しました。具体的には、ユーザーが操作する際に迷わないよう、どこを触れば何が起きるのかを明確にすることです。例えば、ボタン一つ取っても、普段使い慣れている方には当たり前でも、初めての方が見たら理解しづらい文言もありますよね。そういった細部まで気を配り、ボタンの文言一つを決めるにしてもチームの皆さんと1時間以上のミーティングを重ねるほどでした。

“オンライン完結のプロジェクト”でも心の距離は近く。セブンデックスが実践したリモート時代の共創スタイル

ー関係性やコミュニケーションの部分について少し重複するかもしれませんが、特にコロナ禍でのプロジェクトということもあり、両社間で効果的なコミュニケーションや関係性構築を意識されたことはありましたか?

中村:
おそらく私の方から話した方が分かりやすいかもしれませんが、プロジェクトのコミュニケーションは完全にオンラインだったんですよね。実は牛島さんやGMOサインの皆さんとはプロジェクト終了後に初めて直接お会いしたぐらいで、全てがオンライン上で完結していました。そのため、特にこだわっていたのがコミュニケーションの“深さ”です。オンライン環境では、普通に話しているだけだとどうしても距離を感じてしまうんですよね。なので、多少踏み込みすぎかなと思うくらいのコミュニケーションを心がけていました。支援会社としてはちょっとリスクがあると思われるかもしれませんが、良いプロダクトを作るためにはある程度踏み込んで、本質的な議論ができる環境を作らなければならないと考えていたこともあり、キックオフやチームビルディングの段階から、距離感が近すぎるぐらいのコミュニケーションを意識していました。

牛島さん:
この件に関しては、私も社内メンバーから事前に聞いていて。最初のキックオフの日には、中村さんがオンライン上で人柄を当て合うゲームをされていたとメンバーから聞き、これが特に印象的でした。直接会えない状況下だったので、お互いの人柄を知るきっかけとして非常に有効だったと思います。実際、この取り組みによって初期からお互い打ち解けることができ、深いコミュニケーションが生まれましたよね。

中村:
そうですね、「第一印象を当てるゲーム」をしたんですよ(笑)。オンラインで画面越しに見ただけで、「この人は学生時代スポーツをやっていそう」とか印象を言い合うものでした。もちろん外れるのが当たり前なので、外れたときに「真逆の印象を持っていたんだ!」という風に本音が引き出せるのが狙いでした。これは表面的なコミュニケーションではなく、お互いがより本音に近いレベルで話せるようになるための工夫でした。最初はちょっとリスクもあったかもしれませんが、結果的にはチームの結束を強くする非常に良い試みだったと思っています。

深まる信頼、進化する議論。プロダクトに向き合い続けたチームの成長曲線

ーもちろん、最初に打ち解けることができたのは大きかったと思いますが、プロジェクトを進める中でチーム内でどのような変化があったのか、例えば信頼関係や意思決定のプロセスなど、期間を経るごとに良くなった点があれば教えていただけますか?

中村:
GMOサインの皆さんが、私たちにとって支援しやすい環境をどんどん整えてくださった印象が強いですね。やはり私たちはお任せいただいている立場なので、その期待に応えるためには全力で取り組むのが大前提でした。ただ、プロジェクトを進める中でスコープが若干変わったり、当初の計画やスケジュールを途中で変更したりすることもありました。そうした状況でも、GMOサインの皆さんが私たちの意見に非常に熱心に耳を傾けてくださったんですよ。そのおかげで話せることが増えたり、プロジェクト進行の選択肢が広がったりして、結果として私たちが非常に動きやすい土台を築いていただいたと感じています。

牛島さん:
私たち側での大きな変化としては、デザインチームが単にUI・UXの改善を超えて、プロダクトからブランディングを考えるという意識に変わっていったことが挙げられます。プロジェクト開始前、社内のメンバーはUI・UXについての経験が浅かったものの、本当にスポンジのように多くを吸収して、積極的にセブンデックスさんに質問したり議論を交わしたりすることで、知識や意識を高めていきました。だからこそ、「ブランディングが重要だ」という話も自然と増えてきたのだと思います。

中村:
お互いに成長していることを実感できたプロジェクトでしたよね。特にプロジェクト後半では、GMOサインの皆さんが主体的に考えを示したり、積極的に議論を交わすようになっていました。UI一つを決めるためにも細かな議論が増えて、皆さんの意見の精度が高まっていくのを感じましたね。我々としても、そういった難しいチャレンジを通じてプロダクトの品質を高めることができましたし、自分たち自身も成長できたと感じています。

使いやすさの設計から、使い続けたくなる体験へ__GMOサインの次なる挑戦

ー素敵な関係性ですね。リニューアルの実装がちょうど終わり、これから様々な節目を迎えると思います。リニューアル後に感じたインパクトやお客様からの具体的な反応など、現時点での状況を教えていただけますでしょうか?

牛島さん:
実は現段階ではまだ完全なリニューアルには至っていない状況なんです。UI・UXの変更というのは非常に難しい部分がありまして、ユーザーからすると、これまで使い慣れたものから新しいものに切り替えるのはストレスが伴うこともあると思うんですね。ですので、現在は旧UIと新UIを併存させる形で進めています。初期設定は旧UIのままですが、徐々に新UIへの切り替えを促進していく予定で、完全移行は今年の秋頃を目指しています。

そのため、まだ具体的な数値的効果をお伝えする段階ではありませんが、社内の感覚としては、新しいUIが以前より格段にわかりやすく、洗練されてきたと実感しています。例えば利用ガイドを作成する際にも、それを強く感じますね。また、このプロジェクトは非常に多くのメンバーが関わったので、みんなの手作り感というか、「自分たちが作り上げたプロダクト」という意識が強まっているのが嬉しいところです。

新規事業を立ち上げる際の醍醐味は、やはり自分たちの作品を世に出すことができるという点だと思っています。私はチームのメンバー全員にそういった体験をしてほしいと思っていて、機能やデザインのアイデアを積極的に出し合ってもらっています。その結果、当初は一部の立ち上げメンバーが作ったプロダクトから、「私たちが作ったんだ」とメンバー全員が自信を持って言えるプロダクトへと変化してきたように感じます。将来的には、さらに多くの人が関わり、「このサービスは自分たちが作った」と誇りを持って言えるようなプロダクトに育ってほしいと願っています。

ー最後に、今後の展望についてお聞かせください。リニューアルを秋頃から本格的に進められるということですが、短期的な目線でフォーカスしている施策や、長期的なビジョンについてお聞かせいただけますでしょうか?

牛島さん:
そうですね。短期的な目標としては、まず新UIの導入と浸透に注力しています。これまでは機能性や価格競争力を強く打ち出してきましたが、UI・UXでもGMOサインと言っていただけるように、新しいUIを通して、より優れたユーザー体験を実現し、多くのお客様にご満足いただけるようにしていきたいと思っています。もちろん、ビジネス的な観点での売り上げや利益拡大も重要ですが、まずはユーザーが本当に使いやすいと感じられるサービスになることを目指しています。

長期的には、契約の領域だけにとどまらず、あらゆる文書の電子署名プラットフォームへと進化させていきたいと考えています。現在すでに契約書や受発注書だけでなく、行政文書や教育機関の卒業証明書や成績証明書など、様々なドキュメントに活用範囲が広がってきています。将来的にはさらに幅広い業務で活用いただけるよう、サービスの範囲を広げていきたいと思っています。今回のUI変更でも、「契約を締結する」というボタン表記を「署名を依頼する」といったより広い概念に対応したUIにしています。このように利用シーンが拡大する中で、さらに適切な表現や操作性を追求していきたいですね。

また、将来的にさらにサービスが拡大した際には、今のデザインやブランディングが再び古くなってしまう可能性もあると思います。その際には、今回セブンデックスさんと培った関係を活かし、改めてUIやUX、ブランディングの方向性を相談しながら、次のステージへと進めていけることを楽しみにしています。

中村:
私たちも、今回培った深い関係性を生かして、次のステージでもより良いサービスを提供できるような提案をしていきたいと思っています。ぜひまたご一緒させていただける日を楽しみにしています。

会社紹介資料

セブンデックスの会社概要が解説されている資料を無料でダウンロードできます。

美容専門学校を卒業後、美容室の広報として新卒入社。マーケティング知識を広げるため、芸能プロダクションへ転職し新規事業開発に携わる。その後、セブンデックス一人目の広報として入社し、社内・社外広報として従事。