デジタル化にともない、ビジネスにおける体験デザインの重要性が高まっている現代。デザインやクリエイティブをどのようにビジネスに活かし、統合していくかについて、さまざまな議論が進んでいます。
そこで、ビジネス戦略からクリエイティブ制作まで一貫して支援するセブンデックスでは、「ビジネスとクリエイティブの統合」をテーマに新連載をスタート。ビジネスとクリエイティブの統合に先進的に取り組む企業が、両者の関係性をどう捉え、どのような実践をしているかを紐解きます。
連載第5回となる今回は、株式会社SmartHRのVP of Product Design 宮原 功治さんにお話を伺いました。多様なバックグラウンドを経てSmartHRに入社した宮原さんは、VP of Product Designとしてプロダクトデザイン組織およびアクセシビリティ組織の統括を担っています。
プロダクトデザインを単なる制作にととどめず、本質的な価値提供を追求するSmartHR。組織づくり、採用、人材育成、そしてAI時代のデザイナー像に至るまで、SmartHRが目指す“業務の当たり前を再定義する”プロダクトづくりの裏側について、お話を伺いました。
▼プロフィール:
宮原 功治(みやはら こうじ)
イベントオーガナイザー経験後、音楽スタートアップを共同創業しデザイン責任者を務める。2016年以降、プロダクトデザイナーとして複数社のプロダクトデザインを請け負い、その後freee株式会社(現 フリー株式会社)でサービス開発とデザインシステムの立ち上げに従事。2019年6月にSmartHRへ入社後、プロダクトデザイングループの立ち上げと、コンポーネントライブラリ『SmartHR UI』のリニューアルを主導。2021年1月現職に就任、現在はメンバーの活躍支援や環境整備も担う。
目次 [開く]
社会制度とデザインが接続される感覚に惹かれスタートした SmartHRでのキャリア
—これまでのキャリアについて教えてください。
結構“使える”話もあるんですけど、正直キャリアとしてはあまりきれいなスタートじゃないんですよ(笑)。SmartHRは僕にとって6社目で、どこからが「キャリアの始まり」と言えるのか、正直自分でもよくわからないんです。
20代前半の頃は、クラブイベントのオーガナイザーをやっていたり、催眠術師をやったりと、かなり雑多なことをして生計を立てていましたね。
その後あるタイミングで、元祖メタバースである『セカンドライフ』を国内でマーケティングしていた会社に、デザイナーとして入社しました。しかし、セカンドライフのブームがすぐに落ち着いてしまって、さらにリーマンショックの影響もあって、会社自体が立ち行かなくなってしまったんです。そこから知り合いのツテで制作会社に入り、Webの実装やデザインの仕事をやるようになって。さらに、知人と一緒に音楽アプリのスタートアップを立ち上げたりもしましたが、そのスタートアップもうまくいかなくなって、一時期はサイバーエージェントで新規メディアの立ち上げを少し手伝ったんですけど、そこも長くは続かず……。その後、誘われて入社したのが、前職のfreeeでした。freeeでは、人事労務のアプリ開発やデザインシステムの立ち上げなどを担当させていただきました。

—様々なご経験をされてきた中で、SmartHRにはどのような経緯で入社されたのでしょうか?
すごくシンプルに言うと、きっかけは「誘われたから」なんですよ(笑)。
当時、前職のfreeeで年末調整機能のリニューアルプロジェクトに携わっていたんです。ちょうどそのタイミングで、配偶者特別控除の導入など、わりと大きな税制改正があって。それに合わせて、プロダクト全体のUIや使い方も大きく見直すというプロジェクトでした。
その仕事が、めちゃくちゃ面白かったんですよね。制度、つまり国の戦略みたいなものが、ユーザーにとっての“使えるプロダクト”としてどう形になるのか。税や法律といった一見遠い仕組みが、UXとしてちゃんと目に見える形になっていくプロセスが新鮮で、深くて、「こういう仕事、もっとやりたいな」と思ったんです。
それで、「またああいうチャレンジができる場所、どこかにないかな」と考えていた時期に、偶然の出会いがあって。当時、株式会社マネーフォワードでデザイナーをされていた知人とSmartHRのデザイナーの渡邉の3人で飲みに行く機会があったんです。そこで僕が「またあんなプロジェクトやりたいんだよね」って話していたら、渡邉から「うち(SmartHR)来なよ」と誘ってもらって(笑)。その流れで、SmartHRへの転職が決まりました。
入社後は、本当に“お約束通り”というか、年末調整周りのプロダクトのリニューアルに携わることができて。さらに、freeeで経験していたようなデザインシステムの立ち上げに関しても、SmartHRではちょうど取り組みが始まったばかりだったので、そこの整備や推進も担当させてもらうことになって。今に至る、という感じです。
—これまでのキャリアを振り返ったときに、ご自身にとって「ターニングポイントだった」と感じる場面はありますか?
2つありますが、ひとつは、やっぱり自分で起業したことです。
ビジネスって、どんなにチームがあっても、最終的には誰かが責任を取らなきゃいけないじゃないですか。起業すると、それがすべて自分に返ってくる。事業に関わるあらゆること、全部やらなきゃいけないんですよね。給与の計算や振り込み、役所とのやりとり、資金調達……。一通り経験したことで、会社ってどう動いてるのか、自分が実際に経験して理解できたのは大きかったと思います。
もうひとつのターニングポイントは、freeeにいたときの経験ですね。特に、人事労務や税に関わるような領域のプロダクトに取り組んだことは、自分にとってドメインへの“愛着”が芽生えるきっかけでした。
社会人としてある程度キャリアを積んでも、「なんで税金取られてるんだっけ?」みたいなことって、意外と深く考えるタイミングってないと思うんです。でも実は、税制度ってすごく戦略的なものなんですよ。たとえば年末調整の書類や毎月の給与明細の控除枠の中には、「この国が今どういう課題を抱えていて、どういう社会を目指していくか」っていう戦略が全部詰まってる。
しかもそれが、毎年ちゃんと見直されてアップデートされている。その事実に気づいたとき、めちゃくちゃ面白いなって思ったんです。社会制度とデザインが接続される感覚というか。プロダクトを通して“国の戦略”を翻訳するような仕事に、深く惹かれるようになりましたし、それは今も変わらないですね。

—これまでのターニングポイントやご経験を通じて、ご自身にとって“デザイナーであること”にどんな意味を感じてこられましたか?
僕自身、キャリアの中では“デザイナー”という役割でやってきた時間が長いんですけど、実は「自分がデザイナーであること」に対して、強い価値を感じたことって、あんまりないんですよね。
特に初期のキャリアって、ちょうど日本のデジタルデザインが始まりかけていた時代で。iPhoneが出る前後くらいで、当時の“デジタルデザイン”って、いわば広告の延長線上にあったんです。とにかく派手なWebサイトをつくって、グラフィックで目を引いて、アワードを取る。そういうのが評価軸だった。
でも、自分は絵が描けなかった。だから差別化するなら、コードを書くとか、ちょっと違う領域で価値を出すしかなかったんです。なのであくまでもデザイナーとしての生存戦略でしかなかったので、未だに強い価値観などは感じないかもしれないですね。
プロダクトデザイン組織における“リソースの価値”をどう定義するか──VP視点で考えるリソース戦略
—現在、SmartHRではVP of Product Designという立場でご活躍されていますが、具体的にはどういった職責を担われているのでしょうか?
僕の職責は、職能的な部分でいうとプロダクトデザイン。VP of Product Designとしては、SmartHRの全てのプロダクトにおける「使いやすさ」に責任を持つことです。
VPとしては現在、「プロダクトデザイン統括本部」という組織で2つの部署をメインで見ています。
ひとつは「プロダクトデザイン本部」。ここにはプロダクトデザイナーたちが所属していて、日々サービスの情報設計をしています。もうひとつが「アクセシビリティ本部」です。ここは、サービスを誰もが使えるようにするために、特にアクセシビリティにフォーカスして改善を進める専門組織です。
この2本柱で構成された組織をどう育てていくか。人をどう活かすか。そういったことも含めて、プロダクトの使いやすさを高めていくための全体設計と運営に責任を持っている、というのが今の立ち位置ですね。

ー組織を束ねる中で、特に苦労されていることや、逆にご自身が意識的に工夫されていることがあれば教えてください。
ここ1〜2年で特に大事にしているのが、「リソースアロケーション」の考え方です。
といっても、単なる「誰をどの案件にアサインするか」といった配置の話ではありません。たとえば、デザイナーやアクセシビリティの専門職が、会社にとってどんな役割を担っているのか、どんな価値や成果を期待されているのか。そうした視点を、組織全体がしっかり持つことを意識しています。この考えを軸にしてきたことで、今では現場が自律的に動けるようになってきました。
一方で、そうやって裁量が広がると、今度は「この活動は本当に自分たちのミッションに合っているのか?」と軸がぶれやすくなる側面もあります。
たとえば、アクセシビリティの価値を広げるために営業資料を改善したり、マーケティングの施策に協力する、ということもあります。もちろん、そういった取り組みも価値はあるし良いものです。ただ、私たちは「プロダクトの使いやすさを向上させること」を専門とするチームです。そうであれば、最終的には「プロダクトにどう貢献できたか?」という観点から活動を評価しなければならない。そう思っています。
また、僕のレポートラインはCPO(最高プロダクト責任者)なので、だからこそ、「プロダクトに対しての貢献」が第一義に来るべきだと考えています。組織としてどう定義され、何をするチームなのか。それに基づいて意思決定する判断軸を育てていく。その設計に今、一番注力していますね。
「一度“普通”に負けた人こそ、普通を設計できる」──SmartHRがデザイナー採用で大切にしている視点
—社内でのプレゼンス向上に加えて、SmartHRのデザイン組織は社外に向けた発信も非常に積極的な印象です。そうした“外への見せ方”について、何か戦略や意識していることがあれば教えてください。
僕たちがデザイン組織として目指していることははっきりあって、それは「日本のデジタルプロダクトデザイン全体をもう少し前に進めたい」ということです。
今の日本のプロダクトデザインって、まだまだ発展途上だと思っていて。たとえば、WebデザインからそのままUIに発展させようとしていたり、グラフィックデザインの延長としてUIを捉えているようなケースって、今でも多いんですよね。それが悪いとかではまったくないんですが、僕たちが価値を感じているのは、情報設計とか、顧客の業務フローそのものをリデザインしていくような部分です。そうした設計によって、プロダクトの文脈から社会全体に与えるインパクトってすごく大きいと感じています。
だから、「自分たちがそれを完璧にできている」とは言わないまでも、そういう力を持つ人がもっと増えていくための後押しはしたいと思っているんです。その一環として、発信はなるべく増やすようにしています。
それに加えて、僕らの中でよく言っているのが「プロダクトデザインマフィアになりたい」というビジョンです。「ペイパル・マフィア」ってあるじゃないですか、ペイパル出身の創業者たちがその後さまざまな企業で活躍して、業界に広く影響を与えている、あれです。僕たちも、SmartHRのデザイン組織から出た人たちが、どこへ行っても活躍して、業界全体を前進させる。そういう状態をつくれたら最高だなと思っていて。そのためにも、デザインシステムの公開や、知見のオープン化を進めて、学びの循環を社内だけでなく業界全体に広げていきたいと考えています。

—今のお話にあったような考え方は、採用や日々の業務にも影響しているのでしょうか?
そうですね。特に採用においては、僕らがすごく大事にしているスタンスがあります。それは、「一度”普通”に負けたことのある人」を採用したい、ということです。
どういうことかというと、僕らは“普通の人たち”が、“普通に”使えるサービスをつくりたいと思ってるんですね。つまり、生活や業務のなかで自然に馴染むような、いわば“普通であること”が価値になるようなプロダクトです。
でも、それをちゃんとデザインするには、「普通」ってなんだろう?を一度、外側から見つめ直した経験が必要だと思っていて。自分がかつて「普通」に適応できなかったり、マジョリティから外れたと感じたことがある人の方が、“普通”を客観視できる感覚を持っている。だからこそ、そういう経験をしてきた人にこそ、共に働いてほしいなと思うんです。
実際にチームでも、レビューの場で「一般的には〜」みたいな言い方はあまり出てこないです。それよりも、「この業務担当者はどう考えるか?」「実際のユーザーがこの場面でどう感じるか?」っていう具体的な視点で、デザインを徹底的に突き合わせていく文化ができていると思います。そういう意味では、「普通って何か?」を一度問い直した人たちが集まるからこそ、本当の意味で“普通の人が使えるサービス”を作れている気がしていますね。
—まさに“ユーザーファースト”な思想ですね。これまでのご経験の中で、クリエイティブやプロダクトデザインによって「ビジネスにインパクトを与えた」と感じた瞬間はありましたか?
前提、「クリエイティブ」って言葉がどこまで指しているかちょっと不安なんですけど、僕自身が最もインパクトがあった、あるいは今も出したいと思っているのは、ユーザーの“業務の当たり前”を変えることですね。
その中で、SmartHRが出したプロダクトで象徴的なのは、やはり「年末調整」だと思います。
これまで年末調整って、どこの会社でも紙ベースでやるのが当たり前でしたよね。でも今は、SmartHRではアンケートに答えるような感覚で手続きを完了できる。作業の構造自体をガラッと変えたわけです。つまり、「業務」というものの本質的な体験を、デザインによって再定義したと言えると思うんです。
たとえば、これから5年後、10年後に社会に出てくる人たちが「昔は年末調整って紙でやってたんだよ」と聞いたら、おそらく「信じられない」と言うと思うんですよ。それぐらいのゲームチェンジができた。こういう変化を起こせたのは、単にデジタル化したからではなくて、プロダクトデザインがユーザーの現実を見つめ直し、構造を見直したからなんだと思います。
だから僕にとっての「クリエイティブがビジネスに与えた価値」というのは、そういった社会的な“当たり前”を塗り替えるような体験を提供することなんだと思いますね。
—ユーザーが感じる感情的な価値や体験の印象など、なかなか数値化が難しい部分もあると思います。そうした“見えにくい価値”については、どのように捉えていますか?
そうですね、実は「感情そのもの」をデザインの対象として扱うことは、あまりないです。
特に僕らが取り組んでいるような業務プロダクトにおいては、感情を直接的に扱うシーンって意外と少なくて。どちらかと言うと、「感情の手前にある認知や判断」をどう設計するか、という方が中心になります。
たとえばインターフェースの中で、「このボタンは押せそうだ」とか「ここをタップすれば先に進めそうだ」とか、そういったユーザーの無意識の認識をどう導くかという部分ですね。これは、“シグニファイア”に近い考え方なんですが、要素一つひとつが「どう振る舞うように見えるか」を重視して設計しています。
なので僕たちは、どちらかというと感情を直接測るよりも、「その人が自然にそう行動するように導けているか?」という認知設計の精度を問い続けている感覚が強いです。
コモディティ化するAI技術の中で、人間に残るのは“問いを持つ力”
—最近はAIに関する話題も増え、「デザインの仕事がAIに取って代わられるのでは」といった議論もよく耳にします。そうした中で、宮原さんご自身はどのようにお考えでしょうか?
AIやデザインシステムといった存在は、あくまで“補助線”であるべきだと考えています。その上で何をどう作るのか、なぜそうしたのかを説明する責任は、最終的にデザイナー自身にある。そして最終的なアウトプットの責任は、あくまで人間側にあると考えています。
最近課題として、組織が大きくなって、デザインシステムもそれに伴って複雑になっていく中で、そのデザインシステムが“ルール”として硬直的に運用されはじめている状況があるなと感じています。
本来、デザインシステムに記載されたガイドラインというのは、開発や制作を効率よく進めるための“補助線”のようなものであって、「必ず守るべきもの」として使うべきではないと思ってるんです。必要に応じて意図的に補助線を越えていく判断も、クリエイティブな仕事には不可欠なはずです。でも、今はWeb上に明確な定義があり、SlackでURL付きで共有できるようになっていることで、“チェックリスト的”な使われ方が目立つようになってきている。
そうすると、意図を持って挑戦的なアウトプットを出した時にも、「ここ、ルールから外れていませんか?」という指摘が飛んできてしまう。もちろん指摘自体が悪いわけではないですが、“ルールに従ったかどうか”が評価の中心になってしまうと、本質的な議論が置き去りになってしまうんですよね。
だからこそ今後は、デザインシステムを“制作の途中で自然に寄り添ってくれる存在”に進化させていく必要があると感じていますし、AIは、そうした“プロセスに溶け込む形での提案や補助”に非常に適していると感じています。

—AIが台頭していく中でも、変わらず“デザイナーに求められること”って、どんな部分だと思いますか?
「デザイナーだからこれをやるべき」っていうのは、そんなにない気がしてるんですよね。
たとえば最近、僕の直下にある企画室に新しく入ったメンバーがいて、その人がすごく面白い企画を進めてくれてるんです。まだ詳しくは言えないんですが、たとえばFigmaのモックを対話形式で自動生成していくようなプロセスを考えてくれていて、これがすごく面白い。
ただ、そういう流れを突き詰めていくと、人の手が介在するのは「最初にボタンを押すところ」くらいになってしまう可能性もあるんですよね。でも、そのボタンを押す前提に、「どんなイシューを解くべきか」「なにが課題なのか」「どこに向かうべきか」という問いを立て解決していくことこそが、人間の仕事として、今後ますます重要になってくると思います。だからこれは、もはや「デザイナーに求められる職能」ではなくて、あらゆる人間にとって求められる思考の責任なんじゃないかなと。デザイナーかどうかに関係なく、「なにを作るべきか」「なにを解くべきか」を考える役割を担える人でありたいと思っています。
これからAIも、どんどん社会の中でスタンダードな存在になっていって、いずれはコモディティ化していくもののひとつだと思っています。そして、コモディティ化していく手段をこれから扱っていきますという職能であれば、やはり“普通”との距離感が相変わらず大事になってくるかなと思いますね。
AIが当たり前、普通になった社会で、AIを使ってこなかったことで生まれる軋轢であるだとか、その普通を享受できなかった時の悲しみであるだとか、そういう差分みたいなものを敏感に感じ取れると良い物作りに繋がるのかなと勝手ながら思っています。
「やることが前提」の業務を、ゼロベースで見直す──SmartHRが挑む給与計算の構造改革
—最後に、宮原さんが今後実現したいことを教えてください。
先日発表させていただいたデータ入力レスな「給与計算」機能を“ヒット商品”にすることが直近のミッションです。実は僕がそのプロダクトデザインを担当しています。
SmartHRの最大のヒット商品は、やっぱり「年末調整」なんですよね。なぜヒットしたかというと、単にUIが良かったからではなく、ユーザーの業務が根本的に変わったからだと思っていて。紙でやるのが当たり前だったものが、オンラインでアンケートに答えるだけで完了するようになった。業務の“当たり前”を変えたことにこそ価値があったと思っています。
だから、給与計算も同じように業務の“当たり前”を大きく変えていきたいと考えています。
今、給与計算や人事労務のSaaSって、レッドオーシャンなんですよ。いろんなツールがあって、どれも似たように便利です、効率化できますって言っている。でも僕たちはその中でも業務を思いっきり変えたいなと思っていて。便利なだけじゃなくて、そもそもやらなくていいことはもうやらなくていい。これまで当たり前だった工程そのものが“やらない選択肢”に変わる、そんな給与計算機能にしたいと思っています。
たとえば5年後、10年後に、「昔は給与計算のために、人事データを同期して、処理が終わるまで数時間かかって、締め日になると勤怠が締まらなくて……」みたいな苦労話が笑い話になるくらい、業務そのものの構造を変えていきたい。そのためには、やっぱり「これをやるのは当たり前でしょ」という感覚をちゃんと疑ってかかることが重要だと思っています。
そういう疑いを持てるのが、僕はデザイナーの強みだと思うんです。だから、もし自分がこれからもデザイナーとしてインパクトを出していくなら、まさにこの領域で、「業務の“当たり前”を再定義する」というチャレンジを続けていきたいですね。
