新しい事業を立ち上げる瞬間は、まるで荒野に一本の旗を立てるようなものです。ワクワクする期待感と同時に、「果たしてうまくいくだろうか」という不安も押し寄せます。市場のニーズを見極め、競合との差別化を図り、限られたリソースで成果を出す──そのプロセスには、成功のための確かなセオリーがあります。本記事では、数多くの事例や実践的なプロセスをもとに、新規事業を成功へ導く秘訣を徹底的に解説します。これから挑戦を始める方も、すでに第一歩を踏み出している方も、ヒントを掴んでいただけるはずです。
目次
企業が新規事業を行う意味
そもそも新規事業とは
新規事業とは、既存の枠を超えて新しい商品・サービスやビジネスモデルを市場に投入する取り組みです。売上拡大や収益源の多角化、成熟市場からの脱却などを目的に行われ、ゼロからの創造だけでなく既存技術の応用や協業による展開も含まれます。不確実性やリスクは伴いますが、市場や社会の変化を捉え、独自の価値を提供することで企業の成長を牽引する重要な手段となります。
新規事業の形態
新規事業にはいくつかの代表的な形態があります。まず挙げられるのが既存事業の延長線上にあるタイプです。既存の技術や販売チャネルを活かしながら、新しい商品やサービスを開発する方法で、比較的リスクが低く短期間で立ち上げやすいのが特徴です。
その他にも新市場への参入、全くゼロから生み出す創造型、他社との共同開発・協業型や、M&Aによって事業を取得し新たな形に再構築する買収型など、多様なアプローチがあります。企業の資源や目指す方向性に合わせて、最適な形態を選ぶことが成功への近道となります。
新規事業の存在意義
自社における新規事業の意義とは何でしょうか?それは自社の競争力の維持や向上をさせるためです。どのような企業であっても経済情勢の影響やトレンドの変化による打撃は受けます。そのような中の打開策として新規事業創出は非常に有効な一手です。しかし投資額が大きい上、失敗許されないものです。だからこそノウハウやプロセスを知ることは成功への一歩になります。
新規事業を成功させる8つのプロセス
アイデアのブレスト
新規事業の第一歩は、自由で活発な発想の場づくりです。社内外の関係者が立場や役職に関係なく意見を出せる雰囲気を整え、顧客の不満、市場の隙間、社会課題、最新技術など複数の切り口でアイデアを広げられることが大切です。この段階では質より量を優先し、否定や評価は後回しにすることで、思いがけない着想が生まれやすくなります。最後に、出されたアイデアを整理し、実現可能性や市場性が高いものを選びます。
市場・環境分析
アイデアの価値を検証するため、市場規模や成長性、競合の強み・弱み、法規制、社会トレンドを多角的に調査します。統計や調査レポートなどの一次情報を活用し、数字で裏付けることで分析の信頼性を高めることができます。下記で詳しくご紹介しますが、PESTLE分析や4Pなどのフレームワークを用いると、抜け漏れを防ぎやすくなります。得られた情報は単なる現状把握にとどめず、将来の市場変化を予測する材料として活用することが重要です。
事業計画の作成
事業計画では、「誰に」「何を」「どうやって」「どのように収益を得るか」を明確にします。ターゲット層のペルソナ設定や提供価値の定義、収益構造とコスト見積もりを数字とともに示し、実行スケジュールやマイルストーンを設定することで社内外の関係者からの理解や支援を得やすくなります。また、リスク要因と対策も盛り込み、計画の現実性と柔軟性を確保することが重要です。
資金調達
必要資金を算出したら、自己資金、銀行融資、補助金・助成金、VC投資を比較検討します。資金調達方法によって返済条件や経営への関与度が異なるため、事業フェーズや目的に応じて最適な組み合わせを選ぶことが大切です。調達先に対しては資金の使い道と期待される成果を明確に説明し、信頼を獲得することが重要です。申請や交渉には時間がかかるため、計画初期から準備を進めるのが望ましいです。
撤退基準の設定
事業には撤退の判断も欠かせません。売上、利益率、利用者数など、事前に明確な数値目標を設定し、それを下回った場合は撤退を検討するルールを定めます。こうした基準があることで、感情や惰性に流されずに冷静な判断が可能になります。撤退の際は顧客や取引先への説明方法やスケジュールも事前に用意し、信頼関係を損なわない対応を心掛けます。
製品・サービスの開発
最小限の機能を備えたMVP (必要最低限の製品)を短期間で開発し、市場に投入し、ユーザーインタビューなどを通してフィードバックを得ます。その結果を迅速に改善へ反映し、小規模な改善サイクルを繰り返すことで、顧客のニーズに沿った製品へと進化させます。完璧を目指すよりも、早く試して早く修正するリーンな開発姿勢が重要であり、開発チーム全員が進捗と課題を共有し、柔軟に対応できる体制を整えましょう。
マーケティング・販促活動の実施
ターゲット層に適した販促チャネルを選び、広告・PR・コンテンツマーケティングを組み合わせて展開します。BtoCならSNS広告やイベント、BtoBなら展示会や業界誌、ホワイトペーパーなどが効果的です。SEO対策を施した記事や動画コンテンツで継続的に顧客接点を作り、認知から興味・購買までの導線を設計し、短期的な反応と長期的なブランド構築を両立させることが理想です。
評価・改善
事業の成果を測るため、KPIを設定し、週・月・四半期ごとに進捗をチェックします。数値指標だけでなく顧客の声や現場からのフィードバックも評価に組み込みます。改善点を特定し、次のアクションプランへと反映することで、事業の成長スピードが加速します。定期的な振り返りと改善サイクルを仕組み化することが、長期的な成功の鍵となります。
新規事業に活きるフレームワーク3選
PESTLE分析
自社を取り巻く外部環境である「政治的(Political)」「経済的(Economic)」「社会的(Social)」「技術的(Technological)」「法的(Legal)」「環境的(Environmental)」要因に分けて分析します。これにより、市場に影響を与えるマクロ環境を把握し、長期的な戦略を立てる際の参考にします。PESTLE分析で浮かび上がってくるのは、ビジネスリスクや機会になり得る要素であり、ビジネスを進める中で、俯瞰的な視点でリスクや機会を見つけるのに有効です。

5フォース分析
5フォース分析は、業界の競争構造を理解し、収益性や競争強度を評価するためのフレームワークです。
マイケル・E・ポーターによって提唱され、以下の5つの「力(フォース)」から業界環境を分析します。
その5つとは業界内の競争、新規参入者の脅威、買い手の交渉力、代替品の脅威、売り手の交渉力となります。これらを分析することで参入した後の市場の変化に対して準備することができます。

SWOT分析
内部環境を「強み(Strengths)」「弱み(Weaknesses)」、外部環境を「機会(Opportunities)」「脅威(Threats)」に分類し、4つの側面から評価します。これによって、自社の状況と市場環境を包括的に理解することができ、自分たちが今どのポジションに位置しているのか、どこのポジションにあるべきなのかが明確に理解することができます。また、SWOT分析を行うことで今後の計画が立てやすくなります。

基本的にPESTLE分析、5フォース分析、SWOT分析の順で行うと効率よく、自社周りの環境を理解することができ、質の高いブランドコンセプトやアイデンティティ、戦略を練ることが可能になります。
新規事業創出の自社支援事例
株式会社FUNPANY

セブンデックスは、大阪で誕生したクラフトポテト専門店「POTALU」の立ち上げにおいて、単なる飲食店の新規オープンではなく、まったく新しい事業コンセプトを創出することを目指しました。クライアントであるFUNPANY社が直面していたのは、限られた店舗面積という制約の中で、いかにユニークで話題性のある飲食体験を実現できるかという課題です。私たちはその制約をむしろ発想の原動力とし、市場調査や現地調査、ユーザー理解を徹底的に行い、フライドポテトを主役に据えたこれまでにない業態の可能性を導き出しました。手軽に楽しめ、居心地が良く、そして新しさを感じられる体験価値を核に据え、ブランドコンセプトから空間デザイン、メニュー開発、マーケティングまで一貫して支援。結果として、限られたスペースを強みに変えた覚えやすく話題性の高い業態を市場に送り出すことができました。POTALUは、制約条件を起点に独自の価値を設計し、調査とユーザー理解を基盤に一貫性のあるブランド体験を構築することで、新規事業がいかに差別化を実現できるかを示す、私たちにとっても象徴的なプロジェクトとなっています。
三井不動産株式会社

セブンデックスは、三井不動産様と共に、新規事業の構想段階から具体的な体験設計までを一貫して支援しました。プロジェクトの始まりは、アイデアの整理と提供価値の明確化から行いました。市場やユーザーの理解を踏まえ、事業として成立するための方向性を固め、その上で、UX/UIデザインの知見を活かし、ユーザー視点からの体験設計を進め、モックアップやプロトタイプを制作しました。複数のチームや事業フェーズにまたがる場面でも柔軟に対応し、バリュープロポジションの検討やサービスの骨格づくりを丁寧に積み重ねていきました。こうして、構想段階の抽象的なアイデアが、実現性の高い事業案として形を成し、三井不動産様のビジョンを具体化しました。この経験は、新規事業においてUX/UIが単なるデザイン領域を超え、事業の実現性そのものを高める重要な要素であることを改めて示すものとなりました。
日本特殊陶業株式会社

セブンデックスは、日本特殊陶業(NGKスパークプラグ/NTK)様の新規事業立ち上げにおいて、構想段階から伴走し、UXリサーチを軸に事業の具体化を支援しました。市場調査やユーザーインタビューを通じてターゲットや課題を明確化し、ペルソナやカスタマージャーニーを設計しました。サービスコンセプトの検証やプロトタイプ作成、市場規模算出まで行い、戦略へと落とし込みました。並行して、選抜メンバーを対象に対面型ワークショップを実施し、実務で再現可能なUX思考と姿勢を定着させました。知識の習得にとどまらず、社内でUXを推進できる“体現者”を育成し、結果として、事業構想の具体化と組織文化へのUX浸透を同時に実現し、今後の新規事業創出を支える強固な基盤を構築しました。
新規事業創出における補助金について
新規事業創出において経済産業省及び中小企業庁が運営している「中小企業新事業進出補助金」を知っていますでしょうか?
「中小企業新事業進出補助金」は、既存事業とは異なる“新市場・高付加価値”への進出に伴う設備投資等を支援し、中小企業の成長と賃上げを後押しする制度です。補助率は原則1/2、補助上限は従業員数に応じて2,500万〜7,000万円(賃上げ特例達成で3,000万〜9,000万円)で、下限は750万円です。
募集要件などもありますが、非常に新規事業が行いやすい環境が作られていますので、新規事業をお考えの方は参考にしてみてください!
詳しくはこちら
最初の一歩から、最後の成果まで伴走します
新規事業はワクワクする挑戦であると同時に、多くの不安や課題がつきまとうものです。セブンデックスは、構想づくりからブランド構築、UX/UI設計、マーケティングまで、一貫してサポートします。単なる外注ではなく、社内の一員のように寄り添い、事業の成長を共に喜べる存在でありたいと考えています。あなたの描くビジョンを、確かな成果へつなげましょう。