7月27日(火)にNIJIBOXさん主催のイベント「BUSINESS&CREATIVE」に登壇させていただきました。
テーマは『ビジネスをグロースするデザインプロセスを解剖する 〜UX視点で考える、プロダクト価値を最大化させ続けるプロジェクトの進め方〜』
プロダクトを通して提供できる体験をデザインして、より多くのユーザーに愛され、プロダクトグロースを狙うUXデザイナーはどういうプロセスで考えるのか。
プロダクトグロースを考える時のプロセスと、その中で意識をおくべきだと思っている3つの大切なことについて、お話しした内容をまとめます。
グロースは地道にやる以外に他にない
日々、「プロダクトを良くするためにはどうすればいいか?」「ユーザーにより価値を提供するには何をすればいいか?」を考えて、とてつもなく忙しい日々を過ごしていらっしゃると思います。
でも、プロダクトを伸ばすって簡単じゃないですよね。一生懸命に考えて、「これでどうだぁぁ!」と意気込んで施策を打っても、特段データに変わりはない、動きはない、一瞬伸びが見れたと思ったらしばらくすると元に戻っている。そんな時にはなんとも言えない虚無の感情に。((-_-)←こんな顔になる)
「優秀なマーケティングの方々は何を考えているんだろう?」と思うのですが、いろんな方々の思考を覗いてみて思うのは「地道にやる以外にない気がする。」ということ。一つ一つの問題を分解して、紐解いて、原因まで突き止めて、解決できそうな施策を打つ。近道なんてないんだなーと。
すごい方々も踏んでいるステップ数は同じなんじゃないかな、と考えています。
ただ、踏むべきステップを丁寧に、すごいスピードで踏んでいく、ので近道しているように見える。
が今のところ僕が感じていること。
「グロースができる人」に対する印象は「大企業で新規事業を手がける人」ぐらい華やかな印象も想起できますが、
どちらも実際は、「正しい、を何回連続で出せるかのために地道なプロセスと努力を続けられるか」なのではないかと思います。
以下はプロダクトのグロースの図です。
矢印の数は施策の数、長さはそれにかかる力の大きさ、向きは施策の影響を表しています。
日々葛藤する中でたくさんの施策を考えて打つ、忙殺される中でなんとかリリースまでこぎつける、ふと道を振り返った時に、「あれ?今どこに向いているっけ?」となることもあるのではないでしょうか。
理想は、正しい方向に一直線に進むことですが、最初から答えがわかっているケースなんてないし、到底不可能だと、凡人の僕は思います。
↓天才の所業
なので、「挑戦を繰り返す中で正解ではない施策を打ってしまうこともある、でもちゃんと筋に戻ってまた進み出せる」状態が良いと思います。
この道筋を示してくれる、コンパスの役割を担ってくれるのがミッションやビジョンになります。
施策の意思決定において「整合性のない思いつきの連鎖による非効率を減らすこと」が大事です。
ここでいう効率はコスパ、という話ではなく、「エネルギーを注いだ分だけ、パワーに変えられる」という意味です。
ビジネスは最速で山を登るレースであること、が前提なので、より早く登れるように注いだエネルギーを効率的に使いたいところです。
大切な3つのこと
ここからは、プロダクトのグロースを考える時のステップと進める時に大切にしている3つのことについてお話しします。
こちらはグロースのプロセスです。(※前回同じような記事を書いたのですが、その時はどちらかというとデザインすることを主観においたので、若干内容を変更しています。)
このプロセスを進めていく上で、大切にしていること3つをお話しします。
#01 正しい課題に取り組む
プロダクトをグロースさせるには、正しい課題に正しいタイミングで取り組まなければいけません。
順序を間違うと、本来得られるはずだった成果も半減してしまう、こともあります。
(よくあるバケツに穴が空いた状態で水を注ぎ込むと漏れてしまう。という話ですね!)
では正しい判断を行うために、何を考えるべきか。
プロダクトの状況だけでなく多角的な視点で判断を行う必要があります。
正しい課題に取り組むためには何が必要か。
その中で重要な役割を果たすのが、「正しいKPI」です。
正しいKPIを設計できれば、そのKPIに起因する範囲で考えられるので、自ずと打率は高くなります。
ではどうすれば、正しいKPIを考えられるか。
「KPIを考えることができる。だけど正しいKPIを考えることはとても難しい」と言われます。
達成とプロダクトのグロースがちゃんと連動するKPIを設定するところは、難所です。
正しいKPIを考えるためにはプロダクトの成長サイクルを考え、KPIをマッピングすると、正しいKPI設定に近づきやすいです。
プロダクトの成長サイクルは、「プロダクトが認知されて流入して、プロダクトの中で何が起きて、その結果どのように影響が生まれて、新しい認知を生んで…」といったグロースの因果関係の全体像です。
全体像を考えることも大変なのですが、作っておけるとその後が楽になるのでオススメです。
これはプロダクト以外でもグロースをさせたいものなら利用しやすいです。参考までに弊社の採用活動に対する全体像を。
この全体像を捉えた上でKPIをマッピングすると、達成とグロースが連動したKPIに比較的なりやすいと思います。
どのKPIを今選ぶべきか、優劣はどのようにつけるか、迷うこと、正解がわからないことは沢山出てきます。
(正直、正解がわからないことだらけ)
その時、最終的に判断基準になるのはプロダクトのミッションやビジョンです。
#02 正しい原因を突き止める
取り組む課題が決まったら、「なぜその課題が起きているか原因を考える」ステップになります。
ここで大事なのはいきなり調べるのではなく、仮説を立ててからのぞむことです。
データを見て、「全く知らなかった。こんなことがあるなんて!」っていうケースってあまりないかなぁ。と僕は思っています。それよりはなんとなく頭の中にはあったんだけど、非言語化されてたり潜在的であったりしたものが、見えて「なるほどなー。」ってなるケースの方が多いのではないかと思っています。
課題の原因は誰かが肌感で思っていることの中にあったりはします。
ですが、肌感だとどうしても「個人の主観」に見えてしまう。
それだと、本人も主張しきることが難しいし、聞く側も「そうかもしれないけど。。」で止まってしまう。
ここで止めてしまうと、大きくリソースを割くこと、ひいては投資することは難しくなってしまう。
肌感に自信を持って欲しいです。そして肌感で終えずに検証して、正しいかどうかを確認しましょう。
そして、肌感が合っていればそれが正しかったんだ、と自信を持ってリソースを割くことができるし、
たとえ違ったとしても、「別の原因があるんだ!」ということがわかり、次のことを考えられる。
肌感が合っていても、違ったとしてもいずれにしてもポジティブな結末です。
#03 正しくアタックする
原因が分かれば、解決できる施策を考えるフェーズです。
すぐさま適切な解決策が思いつくのであれば、施策を考えるもよし。
糸口を探しにリサーチするのもよし。
リサーチといっても、アプローチする方法はいろいろ。
先述したのですが、ユーザーリサーチを行う時も事前に仮説立てを行うことで、よりリサーチを充実することができます。初手で、「まず調べてみよう!」というケースは、イシューを見逃しやすいです。
なので、例えばユーザーインタビューを行う際も、事前に想定できるワークフローなどを可視化して持っておく。
そうすることでリサーチ中に、「あ、ここ違うんだ。」とか「ここはこうなるんだ。」と差分を発見しやすくなり、フォーカスする場所を増やすことができます。
施策を打つ時に気をつけたいのは確かさとスピードのバランスです。
1つ1つの施策の精度も大事ですが、一定期間内でどれだけ歩みを進めることができたか。も重要です。
なので、打率にこだわりすぎず、不可逆性の低いものであれば「エイヤー!」と手数打ってしまっても良いと思います。
打った施策はきちんと検証と内省をすること。
「あれやったけど、結局どうなった?」を置いておくと、一つ一つの施策の効果がわかりづらくなり再現性を持たせづらい。チームで検証と結論を持っておくことで、次に繋げやすくなります。
気をつけたいこと
グロースを進める時に、気をつけたいことがあります。
まず、1人でやりきるには流石に脳のキャパシティが足りません。(少なからず僕は足りません。。。)
チームでないと達成できないことだと思うので、連携、コミュニケーション、リスペクトは必須です。
定量と定性の関係は、問題視されやすいですが、結論どちらも異なる強みで補完関係です。どちらがいいはないと思っている派です。
ビジネスをする上でスピードはマストで考えたいところ。フェイスブックのハッカーズウェイでも語られるように「素早い実行は完璧に勝る」、確かさが欲しいところは確かめる、スピードを担保してアグレッシブに動くバランス感を意識します。
施策を打ちっぱなしにしたい人はいないのですが、次から次へと忙殺される中で、やることが積み重なるので後回しになりやすい。とっても気持ちはわかるのですが、チームに資産を残すことで生まれるレバレッジも大切に。
まとめ
ここまでのお話を最後にまとめます。
正しいをどれだけ続けられるか、ですが正解がわからないものばかりです。
でも、だからこそ挑戦できて難しいからこそ、成果が生まれた時の嬉しさがあります。
「正しいかなんてわからない、それでも正しいを目指す」ことでプロダクトがグロースされ、より良いプロダクトが社会をよくすることに、少しでもこの記事が役に立てば嬉しいです。