サービスを開発する際、UXデザインにおいては「ユーザー目線」に基づいた考察を行います。
本来、「ユーザー目線」はサービスに関わるすべての人が持つべきですが、「ユーザー目線」の意味を勘違いしている人や、「ユーザー目線」よりも「ビジネス目線」を優先してしまっているケースが多いのが現状です。
ではなぜそのようなケースが発生してしまうのでしょうか?
「ユーザー目線」「ビジネス目線」とは何か、「ユーザー目線」を大切にしているUXデザインの本質とは何か、についてお話ししたいと思います。
(UXデザインについてより詳しく知りたい方はこちらにまとめています。)
目次
ユーザー目線とは何か
UXデザインにおける「ユーザー目線」とは、ユーザーの立場に立って、サービスに対してどんな感情を抱いているかを考えることです。
「ユーザー目線」を『ユーザーの意見を鵜呑みにし、そのまま反映させること』だと勘違いしている人も多いかもしれませんが、これは適切な「ユーザー目線」の考え方ではありません。
ユーザーの意見を鵜呑みにしていては、当然良いサービスは生まれません。では、ユーザーの意見をどのように捉えたら良いサービスにつながるのでしょうか?
「ユーザー目線」だからわかる、ユーザーの本質的な目的
そこでポイントとなるのが、ユーザーの本質的な目的です。ユーザーの意見には、その先に本質的な目的や課題が存在しているケースがほとんどです。
たとえば、
- 車が欲しい→車を使って遠くに行きたい
- スタバに行きたい→ちょっとおしゃれな空間でゆっくりしたい
このように、ユーザーの意見には隠れた本質が存在します。それを見極めるために必要なのが、「ユーザー目線」なのです。
ビジネス目線とは何か?
「ビジネス目線」といえば…?
皆さん「ビジネス目線」といえばどんなことが思い浮かべますか?
- 短期間で効率的に稼げること
- KPIを達成すること
上記のようなことが浮かぶ人が多いのではないでしょうか?
ビジネスを継続するには、お金は不可欠です。しかし、目先の利益ばかり考えていてはビジネスはうまくいきません。これはサービス開発でも同様です。
では、なぜ目先の利益にとらわれ、「ビジネス目線」を優先してしまうのでしょうか?
たとえば、このような例があります。
- 『スタートアップの企業で経営が苦しく、利益率を優先せざる負えない』
- 『上司が数字しか評価してくれず、効率よく数字が出る案しか通らない』
このように、ビジネスを行う際には様々な要素が複雑に絡み合っており、気が付かないうちに「ビジネス目線」が優先されているのです。
ビジネスの目的に戻って考える
そもそも、ビジネスとは、誰かを幸せにすることが目的です。なので、この場合の「ビジネス目線」はどちらかというと「利益重視」のようなニュアンスに近いかもしれません。
人々は、『自分がどのくらい幸せになれるか』でサービスの価値を決め、対価を払っているのですから、ユーザーの気持ちを無視したサービスがうまくいくわけありません。
UXデザインとは、「ユーザー目線」を第一に優先しているからこそ、人々を幸せにする本当の意味での「ビジネス目線」を持っているのです。
UXデザインとは何をするのか?
では、具体的にUXデザインとは何をすることなのでしょうか?
UXとは『ユーザーエクスペリエンス』のことであり、デザインとは『設計する』ことです。よって、UXデザインとは、「ユーザー目線」でより良いユーザーの体験を設計することです。
しかし、これだけの説明ではわかりにくいと思うので、実際に例を用いて、UXデザインとは何をすることなのか見ていきましょう。
ある情報サイトを設立する場合
下の画像のようなケースがあったとします。
この場合、1と2どちらの施策が適切でしょうか?
一見UXデザインと聞くと、デザインという言葉に引っ張られて、1のサイトのレイアウトの改善に目が行きがちですが、2の方がUXデザインの施策としては適切です。
なぜなら、1の施策では「ユーザー目線」が持てていないからです。
1の施策では
・『リピート率が低い』
→『サイトが見にくいのが原因である』
→『サイトのレイアウトを改善』
と考えているのに対し、
2の施策では
・『リピート率が低い』
→『他サイトとの差別化ができていないことが原因である』
→『そもそもなぜ丁寧な暮らしがしたいのか』
→『SNSで丁寧な暮らしをしているのをアピールしたいから』
→『SNSの投稿に必要な写真の加工に関するコンテンツなどを追加』
と考えています。
このプロセスを見てわかる通り、1の施策ではユーザーの感情を無視して、表層的な解決にとどまっています。
このようにUXデザインとは、ユーザーの本質的な目的を見抜き、より良い体験を作ることです。
ユーザーの本質的な目的を見抜くにはどうしたらいいのか?
UXデザインでは、ユーザーとサービスが関わるすべての場面で、どのようにしたらユーザーが一番幸せかを考えます。つまり、本質的な目的を満たすほど多くの幸せを与えることができ、そのサービスの価値を上げることができます。
UXデザインには、本質的な目的を見抜くために様々な手法や考え方が存在しますが、今回はその中で代表的なものを紹介します。
UXタイムスパンとは?
ユーザーの本質的な目的を考える際には、ユーザーとサービスがかかわる場面を4つに整理して考えます。これをUXタイムスパンといいます。
UXタイムスパンとは、予期的UX(サービスの利用文脈や、体験時を想像すること)、一時的UX(体験したときにどう感じたか)、エピソード的UX(体験を振り返ってどう感じたか)、累積的UX(サービスとの出会いから現在まですべて)の4つの期間から構成されています。
UXタイムスパンをもとに整理して考えることで、どの期間に課題があり、それがどのような影響を与えているのか、時系列でスムーズに課題を深堀することができます。
UXデザインのフレームワーク
UXデザインでは、まず、ユーザーの観察や、ユーザーインタビューで情報を集め、UXタイムスパンをもとにカスタマージャーニーマップを作成することで、課題や本質的な目的を発見します。
ユーザーの本質的な目的はユーザー自身も気が付いていないことが多く、言語化されていないこともあります。そのため、観察をサービス利用時以外にも行ったり、インタビューにおいてもサービスに関係ない雑談をすることがあります。こうすることで徹底的な「ユーザー目線」を持つことができるのです。
その後、観察結果やインタビュー結果をもとにカスタマージャーニーマップなどを作成し、『どの期間に』『なぜそのような感情になるのか』『なぜそのような行動を起こすのか』を考え、より本質に迫っていきます。
カスタマージャーニーマップの作り方はこちらから。
このように、ユーザーの行動や言動、感情に対して、徹底的に『なぜ?』を繰り返すことが「ユーザー目線」をもつ、ということです。
本質にたどりつくための「なぜ?」
この『なぜ?』の繰り返しはUXデザインだけでなく、本質を見抜く際には最も重要なことです。
トヨタ式の5回の「なぜ?」
なぜなぜ分析(なぜなぜぶんせき)とは、ある問題とその問題に対する対策に関して、その問題を引き起こした要因(『なぜ』)を提示し、さらにその要因を引き起こした要因(『なぜ』)を提示することを繰り返すことにより、その問題への対策の効果を検証する手段である。トヨタ生産方式を構成する代表的な手段の一つである。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%AA%E3%81%9C%E3%81%AA%E3%81%9C%E5%88%86%E6%9E%90
おわりに
今回、「ユーザー目線」、「ビジネス目線」とは何か、UXデザインにおいてユーザーの本質的な目的を見抜くにはどうしたらいいのかをお話ししました。
「ユーザー目線」と「ビジネス目線」は切り離されて考えられがちですが、これを機に、ユーザーの本質的な目的を考える「ユーザー目線」こそがビジネスに役立つと感じていただけたら幸いです。