UXデザイナーは、ビジネス戦略から要件に落とし込み、デザイナーやエンジニアともコミュニケーションを取る、多くの役割を持つ職種です。
ただ、「ユーザー体験を考える」箇所だけが切り取られてしまい、楽しいフェーズだけやるような、間違ったUXデザイナーの解釈もされています。
そこでこの記事では、現場の実態を元に、UXデザイナーの実際の仕事内容、役割、求められるスキルについてご紹介します。
目次
UXデザイナーの仕事とは「ビジネスとクリエイティブを繋ぐこと」
UXデザイナーの仕事はどの様なイメージがありますでしょうか?英語を直訳すると、User Experience(ユーザー体験)を設計する人。これだけ聞くと常にユーザーの事を考えものづくりをしている、凄い楽しそうなイメージがありますね。
さて、結論から言うと、ユーザーのことだけ考える仕事はありません。
一つ例を挙げましょう。ユーザーの事を考え、素晴らしい体験を設計し「最高に良いモノ」ができたとします。これは良いUXと呼べるのでしょうか?
答えはNOです。売上に繋がることが前提でなければサービスは持続化成長できず、サービス終了せざるを得ません。良いモノが提供できなくなりますし、ユーザーにとって幸せではありません。
ビジネスを行っている以上、どんな良いUXをデザインしたとしても、収益と紐付けなければいけません。
(「最高の体験を考えればユーザーはついてくる」の論がありますが、そんなことはあり得ないです。そう見えていたとしても、前提ビジネスとして成立見込みがある上で戦略的体験を優先しているだけであり、切り離して考えることはありません。もしビジネスと切り離して考えているのであれば、それはデザインではなくアートです。)
ユーザー目線で体験を提供しビジネスとして持続化成長できる仕組みをデザインする。
これがUXデザイナーの仕事です。
ギャレットの5段階モデルにもある通り、UXデザインは市場調査から市場の勝ち筋を見つけた上で戦略を立て、戦略に紐付いて要件を出します。この様にユーザーの体験はビジネスに紐付いており、インタラクションデザイン、ビジュアルデザインとUIデザイナーへの橋渡しとなる、ビジネスとクリエイティブを繋ぐことが役割なのです。
UXデザイナーが意識すべき5段階モデルについてはこちらで詳しく紹介しています。
UXデザイナーに求められるスキル
UXデザイナーに対する解像度は上がりましたか?
ここからは実際に現場で求められるスキルは何かをまとめました。かなり実践的な内容でまとめています。
課題解決力
一番はどんな課題にも打ち勝てる課題解決力です。
UXデザイナーは常に新しい課題と向き合います。その課題は企業によってもその時の状況によっても異なるため、テンプレート化できません。最高が最善とは限らず、常にその時の最適解を導く必要があるのです。
ちなみに課題解決力について、多少の地頭の良さは影響しますが多くは後から身につけられます。
「クリティカル・シンキング」によって身につけられるのですが、詳細は以下記事にまとめていますのでぜひ御覧ください。
事象の構造化
今起きている事象に対して、何が起きているのか原因を洗い出し構造化、特定に向けてアクションできる力です。UXデザインでの要件定義において、手段を感覚で考えることはありません。何かしらの意図を持って策を考えます。
ロジックツリーを使って整理するようなイメージを持って貰えれば良いと思います。
構造化の具体的な事例について、セブンデックスの採用改善施策が参考になるので、こちらの記事もぜひ読んでみてください。どの様に事象を構造化してアクションするのか、イメージが掴めます。
具体化と抽象化
例えば、改善のユーザーインタビューで出てきた改善案は、その通りにすべきでしょうか?
答えはNOです。
ユーザーインタビューの意見は、ユーザーが見えている事象の一部にしか過ぎません。そう思った、行動したファクトから「要するにこの人は〇〇だったんだな」と一度抽象化し、本質を見つけた上で具体に落とします。
傾向として具体から抽象化する作業が苦手な場合が多いですが、起きた事象について「要するに…」を考える癖を付けることで頭の使い方がわかってくると思います。
(会議のファシリテーターなど意見をまとめながら前に進められる人はこの作業が得意です。ファシリテートの様な瞬発性まで無くてもこの作業ができるようになればOKです。)
疑問思考
UXデザインの5段階モデルにもある通り、デザインは戦略から綿密に紐付いてアウトプットされています。どんなことでも、常に「そもそも合っているか」「これは本当か」「もっと良い方法はないか」と、現状を疑います。
(トヨタ式の「なぜを5回考える」と似たような感じです。)
当たり前の中で物事を考えていては、どこかでバイアスがかかりロジックに矛盾が生じます。この様なケースを発見する必要があります。
このスキルは意識の積み重ねで身につけられるのですが、例えば「なぜ自分は朝食にパンを選んだのだろう」の様な、ほんの些細な事から始めても良いのです。
対人力
UXデザイナーはビジネス、クリエイティブ、エンジニアリングのハブとなりながらプロダクトアウトに繋げます。必然的に他の方とのコミュニケーション力を求められます。
コミュニケーションを求められる職種柄ソリューション営業出身のUXデザイナーもいます。
バイブス、雑草魂
これを入れるかどうか迷ったのですが(笑)ただ最終的にはここだと思っています。
UXデザイナーの仕事において、スマートに仕事を行い綺麗な答えが出ることはまずありません。1つの答えを出すために地道に情報をかき集め、多角的にひたすら考え続け、やっとの想いで答えを導き出します。
それは泥臭い作業ですし、精神論的な部分もあります。思考ハードな状況で、何が何でもやり切る、突破する力は必要です。
UXデザイナーの採用においてテクニカルスキルを重視しない理由
さて、ここからは視点を採用目線に変えて、UXデザイナーについて話せたらと思います。
採用面談の場でよく「UXデザイナーに求められるスキルは何か?」「UXデザイナーの経験が無いが大丈夫か?」など、スキル面の質問を頂きます。
結論、テクニカルスキルよりもスタンスやポータブルスキルが重要です。
UXデザインを行う上での手段は「解決するための手札」に過ぎません。そしてUXデザイナーに求められるのは「その手札をいつどのタイミングで出せるか」。どれだけ手札を持っていても、出すタイミングを間違えていたらそれは手札が無いことと同じです。
そのため小手先のテクニカルスキルではなく、最適解を出せる思考や行動を重要視しているのです。
ちなみにこれらのスキルはすぐに変えられず、歳を取るにつれて変えづらくなります。(スタンスは20代前半、ポータブルスキルは20代後半までには固まってしまう。)
また、ほとんどの人はテクニカルスキルを習得しようとしがちになります。(手に職付いた方が安心感もありますしね。)
これからUXデザイナーのスキルを身につけたい方にアドバイスするなら、自分のスタンス/ポータブルスキルへの課題に向き合い、無意識レベルで体現できるまで刷り込むか、そうせざるを得ない状況まで自分を追い詰めることをおすすめします。(私自身は自分に甘いので後者を取りました。)
まとめ
いかがでしたでしょうか?
「ユーザー目線で体験を提供しビジネスとして持続化成長できる仕組みをデザインする。」
今回現場のリアルをベースに書いたので、UXデザイナーの解像度が上がったのではないでしょうか?
UXデザイナーを目指す方の参考になれば幸いです。