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デザイン思考とは?ビジネスに必要な考え方

みなさんはデザイン思考という言葉を聞いたことはあるでしょうか?
「デザイン思考はデザイナー以外は必要ない」と思いがちですが、実はビジネスにおいて必須と言ってよいほど重要な役割を果たします。

「デザイン」は「アート」と同じだと思っているなら要注意。

「アート」というのは、自分の感性を元にし、人の心を動かすものを表現することが目的です。
一方で「デザイン」は、英語で「設計」と訳されるように、どう見えるかではなく、どう機能するか、そして、その機能によって何らかの問題を解決することが目的。

つまり、単純に自分の感性で姿、形、色を決めるのではなく、「ヒト」を軸において設計することがデザインの本質。そしてデザイン思考は、人を中心にビジネスを設計する、まさにビジネスマンに必要な考え方なのです!

この記事では、デザイン思考とは何か、ビジネスにおいてなぜ重要かや、5つのステップを使った成功事例、関連書籍までデザイン思考の全てをご紹介します。

デザイン思考とは

デザイン思考とは、一言で表すと、人間中心設計を基本にビジネス課題を解決をしていくデザイナー的思考のことを言います。

ここで重要なのが人間中心設計という考え方です。人間中心設計というのは、商品やサービスなどの「モノ」を生み出す際、「モノ」をスタート地点に機能や性能を考えていくのではなく、まず、それを使う「ヒト」のニーズにアプローチする考え方のことを言います。
このニーズをエンジニアリング観点、ビジネス観点で実行可能なものと結び付けることで、良質なアイデアからイノベーションを生み出せる考え方がデザイン思考なのです。

デザイン思考の3つのレンズ

デザイン思考がビジネスにおいてなぜ必要なのか

デザイン思考がビジネスにおいてなぜ必要なのかは、現代の市場において「モノ消費」より、「コト消費」が増えたことにあります。
技術革新が進み、成熟した日本市場では、多くの商品やサービスから「モノ」を選択できるようになったため、「コト」消費が当たり前となりました。

ではなぜデザイン思考がビジネスにおいて必要になったのか、事例を用いてわかりやすく紹介します。
多機能があふれる家電、その中でも電子レンジについて、コト消費を追求しヒットを生んだバルミューダを事例にあげました。


時は遡ること1950年代後半。

高度経済成長期に開発されたのが電子レンジでした。
当時はそれまでできなかった/面倒だった温めが簡単にできることから、広く普及しました。電子レンジのあたためそのものが新たな体験で新鮮だったのです。

時は過ぎ、2000年代

技術力の進歩で製品はさまざまなニーズに答えられるようになりました。

  • 設定温度まで自動で温めてくれる
  • パンが焼ける
  • 魚も美味しく焼ける
  • スチーム機能でラップの必要もなし

企業はこぞって「われこそは一番の技術力を持っている」と細かなニーズに対応する形で多機能化していきました。
「120種類もの豊富なメニューから最適な温めができます」と多機能であることが付加価値となっていったのです。

献立から今日の天気まで教えてくれる電子レンジが登場

そして時代は2017年。

スマートフォンが普及しネットで調べれば情報があふれ、簡単に物事を選択できる時代。

そんな時代、多機能で優位性をつけていた電子レンジ業界に突如現れたのが「バルミューダ」でした。
バルミューダの「The Range」はあたため5種類、オーブン2種類と、非常にシンプル。今までの「多機能こそ正義」をひっくり返したのです!

デザイン思考を取り入れて開発した電子レンジ

理由は至ってシンプル。

「レンジに求めているのは温める体験」

多機能レンジの調査を行うと、ほとんどのユーザーが機能を使っていませんでした。細かなニーズに答えた結果、温めるという根本の体験を損ねてしまっていたのです。ユーザーは温めに勝る体験を求めていなかったのです。


このように「コト」消費の現代では、企業の都合でモノを良くするだけでは売れない時代となりました。ビジネスを成功させるにはユーザーが本当に欲しい物を見極め体験を提供する「コト」にアプローチする必要があります。

デザイン思考

そのため現代のビジネスでは、「ヒト」を中心として創造的に課題解決を行う、「コト」にアプローチするためのデザイナー的思考が必要になるのです。

他にもビジネスにおいてデザイン思考を使った成功事例をこちらで紹介していますので、ぜひご覧ください!

デザイン思考の主な考え方

ここで、デザイン思考の主な考え方を解説していきたいと思います。

まずは、徹底的なユーザー理解

デザイン思考は、インタビューやアンケート、行動観察によって、ユーザーが課題に感じていることや、ニーズを引き出し、徹底的にユーザーを理解することを起点とします。

ここで、デザイン思考におけるユーザーへの徹底的な理解とはどのようなものなのか、インタビューを例に挙げて解説していきたいと思います。

デザイン思考によるインタビューでの質問は、課題を引き出すことばかりに気を取られて、形式的になってはいけません。
先ほどのバルミューダの例を上げると、ユーザーに「電子レンジを使ってて他に欲しい機能はありますか?」とそのまま聞いたとしても、「温めだけで良いから、シンプルな電子レンジが欲しい」とは返ってこないでしょう。

インタビューをしていく中で、「多機能な電子レンジを持っているけど、実際あたためしか使ってない」や、「普段、贅沢な暮らしをしているわけではないけど、家族に対して美味しい料理を振舞うために良い食材を使うようにしている」など、ユーザーの行動や価値観を引き出すことで、ユーザーが潜在的に抱えてるニーズを知ることができるのです。

このように、デザイン思考は、人々がどのように行動するか、なぜ行動するか、どのような価値観を持っているかを徹底的に理解し、ニーズを需要に変えていくという考え方が核となります。

アイデアを発散する

デザイン思考は、可能な限り多くのアイデアを抜け漏れなく考え出すことに重点が置かれます。
デザイン思考には発散的思考の段階と収束的な思考の段階があり、デザイン思考は発散的思考から始まります。

つまり、アイディアの選択肢の幅を狭めていくのではなく、最初に選択肢を広げようとするところから始まるため、創造的なデザイナー的発想が可能になるということです。

テストと反復

アイディアを素早くプロトタイプ化し、テストをすることで、強みや弱みを明らかにし、ユーザーのフィードバックを収集するというプロセスを繰り返すことで、ユーザーへの理解をさらに深めていくという考え方です。

始めから完成品を作ってしまうと、製作コストに重きが置かれてしまうため、ユーザーからのフィードバックが得られなくなってしまうといった可能性もあります。

このように、デザイン思考においては、プロトタイプをビジュアルまで完璧に作らない曖昧さを良しとし、何度もプロトタイプをテストすることでユーザーへの理解に繋げることを徹底します。

チームで考える

現代の複雑化した世の中でより良いアイディアを生み出すには、異分野同士の思考をコラボレーションさせることが必要とされます。

様々な背景や物の見方を持つ人と対等な立場で対話し、協同することは、一つのものに縛られない柔軟な発想に繋がります。

Apple社のiPodは、開発体制として、社内の開発者だけでなく、社外のデザイン専門家や心理学者、人間工学の専門家など、35名が共創して偉大なアイディアが生み出されました。

また、サムスン電子では、年齢や専門性の異なる人々を集め、チーム単位で活動する体制をとっています。
デザイナーが企画段階から参加することで、いち早くニーズに合った製品を生み出すことが可能になり、昨今の成長につながったと言われています。

デザイン思考の5つのステップ

デザイン思考には、「共感」「課題定義」「創造」「プロトタイプ」「テスト」と、5つのステップを体系化したものがあります。

デザイン思考のステップ

このステップは、あくまでデザイン思考を体現する方法の一つなので、ただ実践するだけがデザイン思考というわけではありません。デザイン思考は“考え方”であるということを念頭においた上で実践しましょう。

共感

ユーザーへの徹底的な理解、つまり共感を深めるために、インタビュー、アンケート、観察などを行います。
この段階の目的は、ユーザーが自分では気づいていない潜在的に抱えている課題やニーズを知ることです。
ここで、ユーザーの潜在的な課題を引き出すとはどういうことなのか、例として、エクストリームユーザーへのインタビューを紹介します。

エクストリームユーザーへのインタビュー

エクストリームユーザーとは、ターゲット層から極端に外れた行動や性質を持つ人のことです。

デザインコンサル会社であるIDEO(アイディオ)は、主婦向けのキッチン用品を開発するために、子どもが料理をする様子を観察し、キッチン用品の使いづらさにおける普遍的な課題を発見しました。
その結果生まれた敢えて持ち手を統一せずに作られたZyliss(チリス)のキッチン用品は、ヒット商品となりました。
このように、人々の潜在的な課題を知ることは、ビジネスにおいて革新的なアイデアの創造に繋げることが可能になります。

課題定義

この段階では、共感から得たユーザーへの共感を分析し、どのような視点で課題を捉えるかの着眼点を定めます。

デザイン思考における課題定義は、例えば、「忙しい母親が時短できる料理道具を作るには?」ではなく、「忙しい母親が家族に健康的な食事を作るには?」というように、人間中心の考え方が基本となります。

課題定義の分析方法の一つとして、共感マップを紹介します。

共感マップ

共感マップとは、インタビューやアンケート、観察をもとに、ユーザーが置かれている状況・環境などを可視化し、チームで共有して分析する方法です。

主に、次の項目を紙に書いて共感マップを作成します。

  • やっていること(どのような行動をしているか)
  • 見ていること(生活の中で見えていること)
  • 言っていること(生活の中での発言)
  • 聞こえていること(周囲の人々の発言、ニュースなど)
  • 考えていること(関心のあることなど)
  • 感じていること(願望、心配事など)

このように、ユーザーの具体的な思考・行動を可視化し、チームで共有することで、主観から脱却することに繋げることができるのです。

創造

定義した課題を念頭に置き、課題解決のためのアイデアをできるだけ多く出してから、最後に収束させていきます。

この段階の目的は、正しい答えを導き出すことではなく、課題解決の可能性を最大限押し広げることです。
これにより、創造的で革新的なアイデアを生むことができます。

ブレインストーミング

ブレインストーミング(以下ブレスト)は、固定概念に縛られない創造的なアイデアが生まれたり、集団でアイデアを出し合ってお互いに刺激しあうことで、1人では思いつかない新たなアイデアを得ることに繋がります。

ホワイトボード、筆記用具、付箋を用意して、アイデアを書き出していくのが一般的です。

前述したように、課題解決の可能性を最大限押し広げることを目的にするので、次のようなルールを設けて行いましょう。

  • 質より量を重視する
  • 途中で判断・決断をしないで、ブレスト後に結論をまとめる
  • 批判をしないで、アイデアをさらに追加していくことだけに集中する
  • アイデアを組み合わせる

このように、ブレストは、デザイン思考の発散的思考を体現するのに最適な方法なのです。

プロトタイプ

収束させた課題解決のためのアイディアを検証するために、実際に目で見て触れることのできるプロトタイプ(試作品)を作ります。

デザイン思考でのプロトタイプは、完璧なものを作って課題点を見つけることではなく、とにかく簡易的に作って壊して、アイデアの改善点を見つけることが重要です。
頭で考えていたデザインを形にすることで、新たな気づきを得ることができます。

プロトタイプについてはこちらの記事に詳しく載っているので参考にしてみてください。

テスト

プロトタイプをユーザーにテストし、フィードバックをもらってアイデアが適切なものであるかを検証します。

ユーザーへのテストは、自分のアイデアの解決策や問題点を見つけるためだけでなく、ユーザーの更なる理解を得ることが目的です。


以上、5つのステップを紹介してきましたが、ここで注意していただきたいのは、これらは、順番通り実行すればいいというわけではないということです。

ある段階で新たな課題が見つかれば前に戻ったり、時には、ユーザーへの共感からやり直すことで、デザイン思考の体現に繋がります。

つまり、これらはただ形式的に行うものではなく、全ての段階において、ユーザーへの理解が核となっているものなのです。

デザイン思考が学べるおすすめの本、動画

デザイン思考について書かれた文献も多くなり様々な方法で学べるようになりました。
その中でも個人的に良かった本と動画をご紹介します。

デザイン思考が世界を変える

本書は、ビジネスにおけるデザイン思考の概念や重要性を学ぶ上でおすすめしたい本になります。

著者は、世界屈指のデザインコンサル会社IDEO(アイディオ)の社長兼CEOであるティム・ブラウン。
本書では、彼の経験から、様々なデザイン思考のケーススタディが取りあげられています。

フレームワークなどが体系的にまとめられているわけではないので、デザイン思考については個々に読み解く必要あり、具体的に何をすることがデザイン思考なのかということが一通り理解できるような本ではありません。
しかし、デザイン思考の本質は、そもそもフレームワークではないため、本書を読むことで、デザイン思考によってビジネスにどう向き合って行くべきか、その姿勢が重要なのだと実感できる本です。

デザイン思考の先を行くもの

本書では、日本人が「デザイン」に対して抱えてきた誤解を解くところから始まるため、そもそも「デザイン」とは何かというところから学びたい人におすすめしたい本です。

明日から実践できる革新的なアイディア発想法が書いてあり、まさに「デザイン思考の先を行く」アプローチを学ぶことのできる本になります。

一見難解であるデザイン思考が、図を用いてわかり易く書かれているため、一度は手にとっていただきたいおすすめの本です。

スタンフォード式デザイン思考

「本を読む前にまずは触りだけでも知りたい…」

と言う方にピッタリの動画がこちらです。

書籍『実践スタンフォード式デザイン思考世界一クリエイティブな問題解決』を14分間の講座形式の動画でまとめています。書籍に書かれているユーザーの本当のニーズ・課題の発見方法について、要点に絞って効率よく学べます。


その他デザイン思考を学べる本、動画、資料をこちらでもまとめました。
ビジネスですぐに実践できる内容もあるので、ぜひご覧ください!

まとめ

ビジネスにおいて必要なユーザー視点でコトを考えるデザイン思考。考え方やステップがイメージできたなら幸いです。
デザイン思考を理解したら、次は実際にUXデザインを行ってみましょう!

UXデザインのキーワードは「UXデザインの5段階」。5段階に沿ったUXデザイン進め方もこちらで詳しく紹介していますので、ぜひご覧ください!