UXデザイン

デザインの本質|“問題”とは何か?事例から読み解く

デザインという言葉が身近なものになってきました。「デザインは問題解決だ」と説明されることも増えていますが、問題はどこからやって来るのでしょうか?そもそも、解決されるその「問題」とは一体、何なのでしょうか?

この記事では、デザインにおいて最も大事だともいえる問題設定、中でも問題がどう生まれるかについて事例を用いてデザイン思考の観点から紹介します。

まずは、デザインの意味を確認

デザインは「見た目を美しくする」ような意味で思われていることが多いと思いますが、本来デザインは「設計」の意味も含んでいます。グッドデザイン賞を運営する日本デザイン振興会は、デザインを次のように定義しています。

「常にヒトを中心に考え、目的を見出し、その目的を達成する計画を行い実現化する。」

公益財団法人日本デザイン振興会

抽象的な表現ですが、この一節は表面的な装飾だけでなく、目的達成のための計画やその過程もデザインに含まれることを説明してくれています。前半の “常にヒトを中心に考え” の部分は、デザイン思考における人間中心設計のことを意味し、後半の “目的を達成する計画を行い実現化する” という部分は、問題解決と言い変えられることがわかります。デザインとは、ユーザーのために問題解決することであり、見た目を良くするという意味でのデザインはそのための手段の一つであるというわけです。

それでは、問題とは何か考えてみよう

辞書的な意味から考える

デザインとは問題解決である。では、その「問題」って何なのでしょうか?一度、問題という言葉について考えてみましょう。試験の問題、洗面所の水漏れ、上司との人間関係…。世の中には色んな種類の問題があることがわかりますよね。では、ここで辞書で「問題」について調べると

1. 解答を求める問い。試験などの問い。「数学の問題を解く」「入試問題」
2. 批判・論争・研究などの対象となる事柄。解決すべき事柄。課題。「そんな提案は問題にならない」「経済問題」「食糧問題」
3. 困った事柄。厄介な事件。「新たな問題が起きる」
4. 世間が関心をよせているもの。話題。「問題の議員」

と出てきます。非常に分かりやすいです。ですが、漠然としています。ここで ”少し” 深く考えてみましょう。

問題を問題と認識するのはなぜ?

では、そもそも、「問題を問題と認識するのはなぜででしょうか?」言い変えれば、今困っている「それ」はなぜ問題と考えられてしまうのでしょうか?

わかりやすいように、簡単な例を挙げてみましょう。仮にあなたが今ダイエット中で、食べ過ぎてしまい体重が増えるとします。体重を減らそうとしているにもかかわらず、体重が増える行為をしてしまい、そして実際体重が増えた。これは明らかに問題ですよね。

ほかにも、今受験勉強中だとして、志望校の模擬試験の結果がE判定だった。これも問題です。志望校に合格できない可能性が高いわけですから。そう、気づいたかもしれませんが、「自分の理想」(ビジョン)と現状が違うから、問題と感じるのです。スリムな自分、優秀な自分と今の現実を比較して、両者にギャップがあるから、問題だと認識するのです。

ビジョンとは何か?

理想がなければ問題・不満は生じません。ですが、一切不満を感じないなんてことはそんなにあるのでしょうか?たとえ、明確な理想も持っていなくても、なんとなく良くないな、この部分が良くなるんじゃないかと思うことがあると思います。ここでは、理想・ビジョンの特徴について考えてみましょう。

経験から作られる

ビジョンには、こんな社会を実現したいんだという大きなものもあれば、あんな結婚生活を送りたい、はたまた今日の晩ごはんはこれがいいといった少し先のものから身近なものまであります。共通なのは自分が見聞きしたことがあるものから作られているということです。

仕事終わりの一杯が楽しみなのは、当たり前なことですが、その一杯を飲んだことがある、もしくはTVで美味しそうなのを見たことがあるからです。子供がスーパーヒーローになりたいと思うのは、スーパーヒーローをテレビで見たことがあるからです。見たことない、経験したことないことから全く新しい夢を描くことは、ほぼほほ無いではずです。

ぼんやりとしている

ビジョンには、経験から作られるという特徴のほかにも、「ぼんやりとしている」という特徴があります。気づけば、憧れの人の服装を真似していたなんてことはありませんか?これは無意識に理想を追っているケースです。自分で好きだと気付いていなくても、様々な経験の中から、どれがいいかを勝手に脳が選択してるわけです。

では、意識的に好きなものが分かっている人、例えば寿司と焼肉が同じくらい好きだと言っている人に、どちらかを選ぶようにお願いするとどうでしょうか。少しは悩ぬのではないでしょうか。好きだとわかっていてもその優先順位がついていなかったりするわけです。

このように、ビジョンは無意識に選択されていたり、意識的に選択されていたとしても厳密な優先順位がついていないことがほとんどでしょう。

ビジョンは「共感」から始まる

自分でもはっきりとわからないのがビジョン。そんなビジョンをクリアにしていく方法を紹介します。

自分の事のように感じる

ビジョンをはっきりさせる手法の一つが“共感”です。デザイン思考の最初のプロセスでもあります。英単語を用いた説明をすると、デザイン思考における“共感”は、“Empathize”です。共感は他にも英語で “Sympathize”がありますが、これは外からの視点で、感情に共鳴するに過ぎません。しかし、“Empathize”は感情移入をして、「自分の事のように感じる」ことを意味します。つまり、外側から客観的にはなく、内側から相手の主観になりきることが大切だということです。

なぜ共感なのか

他の手法のインタビューであれば、ユーザーのインタビューを「客観的」に行います。この場合、ユーザ自身が自覚している事柄については、聞き出すことができます。しかし、ユーザが自覚していない事柄については聞き出すことは困難です。まずは、ユーザを自分と同一化して感じることで少なくともユーザと同じ状況になることが必要となるわけです。

ゲーム機のヒットから見る共感

10年前に任天堂から発表されたWiiは覚えていますでしょうか?Wiiのヒットの裏にも共感がありました。ゲームを使うのは子供ですが、実際に買い与えるのは両親です。なので、ゲームを買うことに反対する親の場合、子供はゲームを買ってもらえません。

そこで任天堂はそんな子供に共感し、出したアイデアが「家族みんなで遊べる」ゲームでした。大人も楽しめるゲームを作ることで、大人を味方につけることができたのです。広告では、ゲームの中身を表現するのではなく、ゲームをみんなで遊んでいる家族の姿を映し、ゲームが家族団欒の機会を作ることを表現したのです。どこまでもユーザーに寄り添うことで、なりきることでいいサービス・商品を生み出すことができた非常に良い例です。

まとめ

いかがでしたでしょうか?デザイン、問題解決の中でも、今回は「問題」の部分に焦点を当ててみました。相手になりきる共感をすることで、本人も無自覚であったり、整理ついてなかったビジョンを明らかにする。そうするとことで、ようやく現状との差が「問題」になるというとでした。デザイン思考の本質である人間中心設計や問題解決の理解につながる内容でした。デザインに興味を持って頂ければ幸いです!