世の中で広く使われている製品やサービスには、ユーザーが使いやすいと感じるための仕組みが多く取り入れられています。
この背景には、心理学の発展によって人の行動や感情が起きる仕組みが解明されてきたことで、UIデザインに心理学が援用されることが増えてきたことも要因の1つと言えるでしょう。
今回は、心理学の中でも特に人の意思決定に関する法則や理論について、いくつかご紹介します。
また、本記事でご紹介する法則以外にも多くの心理学的法則が私たちの身の回りのデザインに活かされています。それらをまとめた記事もありますので、興味のある方は以下のページも合わせてご覧ください。
認知容易性
・見覚えや聞き覚えのある繰り返された経験や、読みやすい表示、気分が良い時に人は認知が容易だと感じる
・認知容易なものに対して、人は親しみや信頼、楽だと感じる
以前の記事で紹介した通り、デジタル製品は処理がブラックボックスとなっていたり、操作に対する反応が直接的に目にみえる形で返ってこなかったり、もともと認知負荷が高いものです。
複雑な操作をユーザーに要求する場合は、例えば操作のステップを細かくしてあげたり、イラストなど親しみやすい図を用いることで認知負荷を下げるような仕組みが有効です。
フレーミング効果
大抵の人は表示されている通りにしか情報を見ないため、同じ情報でも提示の仕方が違うと、違う感情や反応を抱く
例えば、ECサイトのキャンペーン表示など、「6月中にキャンペーン期間は終了です」と伝えるよりも、「あと◯日でキャンペーン期間は終了です」と伝えた方が、同じ情報だとしてもより切迫感が伝わります。そのため、ライティングはビジネスニーズやユーザーの感じ方をよく考慮した上で検討する必要があるでしょう。
ヒューリスティックス
・感情的ヒューリスティック
論理的思考を用いず、感情や好き嫌いに基づいて判断する
・単純化ヒューリスティック
似たものを探して単純化する
・利用可能性ヒューリスティック
人間は記憶から容易に呼び出せる問題を相対的に重要だと評価する傾向にある
思い出しやすさ、入手しやすさに判断が影響されること
私たちは意思決定や判断をする際、常に論理的・合理的に行うわけではなく、多くのヒューリスティック(経験則)を利用しています。
例えば、アプリを使っていてエラーが発生した場合に、発生頻度の多い通信エラーをまず初めに疑う等です。
しかし実際エラーが起きる要因は、アカウント認証、予期せぬ操作など無数にあります。
このような場合、「エラーが発生しました」と伝えるよりも「オフラインのためエラーが発生しています」など具体的なフィードバックを返すことで、ユーザーを適切な行動に導くことができるでしょう。
終わりに
今回ご紹介した法則は一部になりますが、実際のユーザーの操作環境ではこのような法則が無数に影響し、複合的な要因から判断を行なっています。
全ての影響を考慮することは難しいですが、このような背景が前提にある事を意識してライティングや操作仕様を検討することで、よりユーザーにとって使いやすい製品サービスを検討する事ができるでしょう。
参考文献:
- ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか?(上) ダニエル・カーネマン
- UIデザインの心理学 わかりやすさ・使いやすさの法則 Jeff Johnson