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リーンキャンバスとは?事例とともに作成方法を解説

リーンキャンバスとは

リーンキャンバスは、ビジネスの新規立ち上げやプロジェクトの計画において、ビジネスモデルを9つの観点から整理するためのフレームワークです。

Running Lean の著者アッシュ・マウリヤ(Ash Maurya)氏により提唱され、ビジネスシーンで広く用いられている「ビジネスモデル・キャンバス」よりも、よりスタートアップにとって重要な顧客とその課題解決方法にフォーカスされている点が特徴です。

具体的には以下のように、「主要パートナー」「主要活動」「主要資源」「顧客との関係性」が、「ユーザー(顧客)の課題」「ソリューション」「主要指標」「圧倒的な優位性」に置き換わっています。

リーンキャンバスとビジネスモデル・キャンバスの違い

リーンキャンバスは、既存事業の延長線にもない、全く新しい新規事業を検討する場面で、自分たちが検討してきたアイデアや仮説を整理するのに役立ちます。

例えば UX デザインプロセスではユーザー調査などを通じ、アプローチするユーザー像や抱えるニーズを明らかにし、そのニーズを満たすサービスアイデアを検討するというプロセスを踏むことが想定されます。

その際、リーンキャンバスで情報を整理することで、ビジネスの視点で実現性を考慮しながら、アイデアを検証するのに活用できるでしょう。

リーンキャンバスのメリット

リーンキャンバスを作成する利点は、ビジネスとユーザーの視点双方から、バランスよく簡潔にビジネスモデルの整理ができることです。 1ページに可視化されるため、開発を進める上での論点を発見しやすく、関係者やクライアントとの目線を合わせることにも有効です。 メリットを端的にまとめると以下のようになります。

  • 高速
    30分 ~ 長くても数時間で作成可能です。項目を埋めることで仮説を検証し、また素早くアップデートできるため、ビジネスの軌道修正を即座に反映することができます。
  • 簡潔
    ビジネスの要点がわかりやすくまとまっており、関係者やクライアントに対する説明にも活用できます。
  • 携帯性
    1ページのビジネスモデルなので、持ち運びや共有が容易であり、関係者にも簡単に内容を共有することができます。

リーンキャンバスの作り方

リーンキャンバスは、後述の順番に沿って項目を埋めていくと作成しやすいと言われていますが、埋めやすいパートから記入しても問題ありません。

以下では、それぞれの項目の書き方やポイントについて説明していきます。

参考までに、Airbnb のリーンキャンバスを作成しておりますので、併せて参考にしてみてください!

リーンキャンバスの実例(Airbnb)

参考:Railsware Product Academy「Lean Canvas Examples of Multi-Billion Startups」

1. 顧客セグメント

サービスやプロダクトを利用する顧客(ユーザー)をここに記します。以下の金言があるように、ポイントは顧客セグメントを出来るだけ具体的に記述することです。

When you’re trying to build a product for everyone, you’ll end up selling it to no one. 全ての人のために製品を作ろうとすると、結局誰にも売れなくなる。

例えば Airbnb だと、安く手頃に海外に泊まりたい旅行者(ゲスト)と、気軽に空きスペースを有効活用したいオーナー(ホスト)がターゲットとなるでしょう。

この中で、最初にサービスを利用してくれるであろう、マジョリティ層よりもニーズが強いユーザー像を「アーリーアダプター(※)」として定義します。

ここでは、ホストについて記載していますが、旅行者に対し解像度を高めると、「現地の体験を重視するバックパッカー好きの 20代 ~ 30 代旅行者」がアーリーアダプターとなるかも知れません。

アーリーアダプターとは、イノベーター理論における5つのグループの1つ。 流行に敏感で、自ら情報収集を行い判断する層。 新しい商品やサービスなどを早期に受け入れ、消費者に大きな影響を与える。 オピニオンリーダーとも呼ばれる

マクロミル

2.課題

1.顧客セグメントで定義したユーザーが抱える課題はなんでしょうか?1~3ほどのペインポイントを出来るだけ具体的に記載します。

また、現在彼らが活用している代替手段も明らかにしましょう。代替手段は、直接の競合他社ではなく、現在代わりに代用されている手段を明らかにすることがポイントです。

例えば Airbnb では、直接の競合としては booking.com などを通じた安価なホテルが考えられますが、友人の家やホームステイ先が代替手段として考えられるかも知れません。

3. 独自の提供価値

サービスを通じ、ユーザーに提供する独自価値(Unique Value Proposition)を記載します。

Airbnb の独自価値は、ゲストが地元の人々のように暮らすことができる、真の旅行体験を提供できることです。

キャンバスの中心的な位置を示すのにふさわしく、このサービスの独自性を示し、類似サービスや競合他社と比較した違いや強みが分かるようにします。

明確で、顧客の印象に残る簡潔なメッセージを記入できると良いです。

4. ソリューション

ユーザーの課題を、どのように解決するかを記載します。「2.課題」で記載した具体的なペインポイントやニーズを解決するソリューションとなっているか、またユーザーにとって既存の代替手段に替わる方法になっているかを確認しましょう。

Airbnb ソリューションは、ホテルのオーナーでもない地元のホストが自分の住まいを共有しマッチングするという、これまでにないアイデアだったと言えます。

5. チャネル

オンライン・オフライン双方で、どのように顧客と接点を持つかを記載します。

出来るだけ網羅的に記載してみましょう。以下のように体験前後に分けてチャネルを書くことで、どのように顧客にアプローチするか整理しやすくなります。

  • 購入前:口コミ、ソーシャルメディア、DM など
  • 購入時:ウェブサイト、カタログ、営業担当者とのコミュニケーションなど
  • 購入後:メールでの更新、お客様の声アンケート、ソーシャルメディア など

6. 収益の流れ

事業を収益化するための料金体系や、収益元を記載します。例えば1回限りの料金体系なのか、サブスクリプション型モデルなのか、あるいは広告収入かなど、具体的な収益方法を考えます。

ユーザーの課題を解決するためのアイデアを検討していても、どのように収益化できるかがわからなければ実行可能なビジネス・アイデアといえないため、実際にプロダクトを開発する前に検討しておく必要があります。

7. コスト構造

ユーザーに価値提供するために発生しうる、固定費や変動費含むコストを洗い出し記載します。

例えば固定費としては家賃や設備費用、人件費、変動費としては材料費、マーケティング費用、開発費用が挙げられます。

Airbnb では、例えばホスト向けの保険料もコストに関わってくるため記載します。

8. 主要指標

ビジネスモデルの成功を計測するための指標をリストアップします。

アイデアを構想する段階で設定することはマストではありませんが、ビジネスモデルやサービス内容が定まった段階で、ビジネスの成長のために追跡すべき指標を定量的に定めます。

Airbnb にとって PV数やユーザー数は必ずしも適切な指標とは言えません。なぜなら、ホストが増えて提供できる宿泊施設が増えなければ、ユーザーはサービスを利用するようにならないためです。

したがって、あくまで一例ではありますが「ホスト数」をまず増やすことが重要になってきます。

9. 競合優位性

英語では Unfair Advantage と記載され、直訳すると「不当な優位性」となりますが、いわゆる既存サービスや競合他社と比較した、模倣されにくい(圧倒的な)優位性を指します。

例えば Airbnb だと、世界中のホストにより提供される幅広い宿泊施設やアパートのラインナップや、ユーザーのニーズに応える宿泊のレコメンドシステムといったものが挙げられます。

Ash Mauryaは、リーンキャンバス「競合優位性」の項目として、「市場に最初に出た」ことを挙げないよう述べています。簡単に模倣されにくい要素を記載することがポイントです。

終わりに

いかがでしたでしょうか?

リーンキャンバスは、ビジネスモデルを検証するためだけでなく、これまでチームで検討してきたペルソナや、カスタマージャーニーマップで設計してきたサービス体験の情報整理としても活用することができます。

新規事業のアイデアを整理し、気づきや課題を得る手法として手軽にできるものなので、ぜひ活用してみてください。

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