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送客率350%UP!デザイン思考でECサイトの売上を伸ばした方法

「おうち学習」を手助けする種類豊富なドリル・参考書を提供していることで広く知られる学研グループ。これまで学研の教材は主に本屋などの店舗で購入されていましたが、これからのサービス成長のためにはオンラインでの購買体験を改善することが不可欠でした。

私たちセブンデックスは、オンライン購買の要となるECサイトリニューアルを行いました。UXデザインプロセスに基づいて設計した結果、サービス全体の送客率(商品購入画面への遷移率)を351%向上させることができました。ここでは、その過程で実施した具体的な取り組みをまとめていますので、是非ご参考いただければと思います。

ECサイトリニューアルでいちばん重要だったこと

家で勉強しようサイト

このプロジェクトでは、学研プラスの「家で勉強しよう。」(以下「イエベン」と称する)という、小中学生向け学習ドリルを紹介するサイトのリニューアルを行いました。このサイトの目的は、自宅学習に興味を持つ保護者や生徒に対して、ユーザーニーズに適した教材を提示し、購入までのプロセスをスムーズにサポートすることです。

プロジェクトの取り組みとしては、UXデザインの手法を用いて、データ分析を通じた定量的な分析と、ユーザーインタビューによる深層の問題点の抽出を行いました。その後、学研さんとともにクリエイティブな発想から解決策を見出すアイディエーションをワークショップ形式で行い、それに基づいたECサイトへの改善を実施しました。

その結果、今回のプロジェクトを一言で表すなら、「バケツの穴を塞ぐこと」と言えます。

「バケツ理論」とは

バケツ理論の図解

「バケツ理論」は、新規集客と顧客流出に関する概念です。バケツは一つのビジネスを表し、水はそのビジネスの顧客を象徴しています。この理論は、ビジネス(バケツ)が常に新しい顧客(水)を取り込む一方で、何らかの理由で顧客を失う(バケツから水が漏れる)という状況を表します。新規顧客獲得(水を追加する)はビジネス成長に不可欠ですが、同時に顧客の流出(バケツからの漏水)を防ぐこともまた重要です。

特にバケツの底に近い部分の穴、ECサイトでいうと購入完了に近い穴は大きな機会損失につながるため、真っ先に改善すべき部分です。バケツの穴と一口に言っても、大きな要因のこともあれば小さな要因の積み重ねであることもあるため、なぜ流出につながってしまったかの要因をしっかり分析する必要があります。

ここからは、イエベンを改善するために具体的にやったことをまとめていきます。

デザイン思考で学研ECサイトを改善した方法

①社内のカートシステムを思い切って廃止した

購入画面

リニューアル前のイエベンでは、カゴに入れた商品を、学研内部のカートシステムで購入するか、あるいは楽天ブックスやAmazonなどの外部ECで購入するかを選べるようになっていました。メインの購買導線は学研内部のシステムだったのですが、商品をイエベンでカートに入れてから、学研の出版サイトで商品詳細を確認し理解を深め、最終的にショップ学研のカートシステムで購入するまでに、3つのサイトを渡り歩く必要がありました。これでは、イエベンがリニューアルされたとしても、他のサイトがユーザーフレンドリーでない、あるいは何度も遷移を繰り返すことで購買意欲が落ちてしまう等、ユーザー離脱を防ぐことができない状況でした。

そこで思い切って学研のカートを無くし、外部ECのみにすることで、よりスムーズな購買体験を実現するサイト設計に取り組みました。手数料はかかりますが、ユーザーが購入したいと思った瞬間にすぐに購入できることで、離脱を減らし、全体的な成果につなげることができました。

今回のように「自社のカートシステムを廃止する」という決断を、必ずしもできるわけではないと思います。もしそのような制約条件があったとしても、例えば外部ECに誘導するような導線設計を行うなど、解決策はいくつもあります。目的を達成するために何が重要なのかを見極めることが、何より大切なのです。

②ユーザーの意思決定軸をつかんだ

サイト上の体験だけでなく、サービスを使う前と後にも着目し、行動と心理状態を深堀りするためにユーザーインタビューを実施しました。現状のサイトのユーザーだけでなく、ネットで教材を買ったことがある人まで幅を広げてヒアリングを行った結果、これまでオフラインが主流だった教材購買ををオンラインに移行させるための輪郭が見えてきました。

ユーザー調査

探索型のコンテンツをしっかり設計

ECサイトのユーザーは大きく二つに分けられます。ひとつは、何を買うか決めてからサイトを訪れる「直線型」のユーザー。もうひとつは、サイトを訪れてから何を買うかを探し求める「探索型」のユーザーです。直線型のユーザーの満足度を高めるには、書名で検索できたり、学年から選べるようにするなど、目的の教材に迅速に到達できることが大切です。一方、探索型のユーザーの満足度を上げるには、診断フローチャートやおすすめ機能など、少々複雑なコンテンツが求められます。ユーザーと最適な教材とのマッチングを特に力を入れていたため、探索型のユーザーに対して役立つコンテンツを充実させました。

教材 × オンラインならではの意思決定軸

イエベンは、小中学生向けの教材を紹介するサイトです。しかし小学生向けの教材は、基本的に親が意思決定者なため、「子供にどんな教材を使ってほしいか」、「しっかりやってくれそうか」といった基準で選ばれます。その基準とは、例えば「やる気を出すためにシールを貼ってもらえる教材」が良い子供もいれば、「問題量が多い教材」が好きな子供や、「解説が丁寧な教材」が必要な子供もいます。つまり、人によって求められる要素は様々です。そのため、親たちは「教材の大きさ」、「教材のボリューム」、「付録が付いているかどうか」など、具体的な詳細情報を必要としていることが明らかになりました。実際の書店では、教材の一部を覗くことができますが、オンラインショッピングではできないため、ユーザーが気になる情報を明記することが不可欠です。教材ならではの情報に何が含まれるのかを理解し、その内容をサイトの必須要件として反映させることにしました。

③ワークショップで作り手と共に考え、思いを届けた

ユーザー調査で抽出した課題に対し、解決できそうなアイディアの発散を学研さんと共にワークショップ形式にて実施しました。体験イメージを膨らませることで、サイトに訪れるシーンの解像度を高められました。

ワークショッププロセス

  1. ペルソナシート見て、課題を解決できそうなアイディアを個人で発散する
  2. 出てきたアイディアを共有する
  3. アップデートできそうなアイディアをみんなで話し合う
  4. アイディアに投票し、優先順位をつける
ワークショップ風景

実際に出てきたアイディア

ワークショップ中にでてきたアイディア

一つの課題にも、解決するアイディアはたくさんあります。例えば、「教材のサイズを知りたい」という課題に対して、「寸法を示す」、「商品を手に持っている写真を掲載する」、「商品の大きさが比較できるようにリンゴなどと並べる」など、様々なアイディアが考えられます。

実際に出てきたアイディアには「単元で検索できるようにする」「解答が取り外せるか確認できる」など教材ならではの視点があったり、「教材マトリックス図を作る」「編集者の顔が見える」などユニークな視点からの提案も多くありました。これらのアイディア全てをみんなで検討し、投票を行った結果、どのアイディアを改善策として採用するかを決定しました。

ワークショップで得られたこと

ワークショップの進行中、学研の社員さんから「この教材はこういう学習のサポートを目指して作られている」「こういうお子さんたちにぜひ使ってほしい」といった熱心な意見が多く聞かれました。私たちはその情熱をユーザーにしっかりと伝えたいと感じ、改善案に組み込みました。「編集部からのメッセージ」というコーナーを新たに設けることにより、製作者側の思いや視点を、ユーザーにもっと直接的に届けられるようになりました。

編集部からコーナー

最終的に成果につなげたサイトがこちら

最終的にリニューアルしたサイトがこちらになっています。

このプロジェクト終了後、劇的に送客数が改善し、ネット書店での売り上げを伸ばすことができました。

リニューアル後の数値改善率

デザイン思考を用いて、サービス成長に繋げよう

デザイン思考とは、「ユーザー視点に立って本質的な課題・ニーズを発見し、変革させるイノベーション思考」と定義されています。ユーザーの真のニーズを捉え、その解決に向けてアイデアを出し、実際に形にするというプロセスは、既存のサービスやプロダクトの品質を向上させ、組織全体のイノベーションを推進する重要な手法となっています。これからの多様化し、複雑化した経済状況に対応するためにも、ビジネスにデザイン思考を活用することをおすすめします。

UXUIデザイン支援資料

セブンデックスのUXUIデザインプロセスと実績詳細が解説されている資料を無料でダウンロードできます。

プロダクト/空間/グラフィックなど幅広くデザインを学び、その奥にある体験設計に興味を持つ。グラスゴー美術学校とケルン応用科学大学でサービスデザインの質的リサーチやデザインツールを学び、実践的なUXに挑戦したくセブンデックスにインターンとして入社。千葉大学大学院デザインコース在籍。