目次
マーケティング戦略とは
マーケティング戦略とは、企業が「誰に・どんな価値を届け、どの市場で勝つのか」を決めるための基本方針です。思いつきの施策を並べるのではなく、顧客理解や競合状況、自社の強みを踏まえて方向性を定めるのが役割です。戦略が定まっていると施策の選び方がブレず、結果として売上やブランド構築につながります。
そもそもマーケティングとは
マーケティングは様々な定義が存在しますが、近代マーケティングの父と呼ばれるフィリップ・コトラーはマーケティングを「ニーズに応えて利益を上げること」とし、ドラッカーはマーケティングについて、「マーケティングの理想は販売を不要にすること」と表現しました。つまり、マーケティングは市場調査などから実際にモノやサービスの提供までの全てを包括しており、「顧客に価値を生み出すためのプロセスである総合的な活動」と言うことができます。
マーケティングの概念について知りたい方はこちらの記事もお読みください!
戦略と戦術の違い
戦略は“目的地を決めること”、戦術は“その目的地に向かうための具体的な行動”です。SNS広告やSEO施策などは戦術であり、戦略がないまま実行しても効果は上がりにくくなります。戦略で大枠の方向を定め、戦術で実行する、この両方がそろって初めて、マーケティングは機能します。
マーケティング戦略の策定プロセス
環境分析
環境分析は、市場や競合、自社の状況を客観的に把握し、戦略の前提となる情報を整える工程です。市場のニーズや競合の強み・弱みを確認しながら、自社がどこで優位性を発揮できるかを見極めます。このステップが正確であるほど、その後のターゲット設定や施策が現実に即したものになり、戦略の精度が高まります。
方向性・基本戦略の軸を策定
方向性や基本戦略の軸を決める段階では、環境分析で得た情報をもとに「どこで勝つのか」「どんな価値を届けるのか」を明確にします。ターゲットとする顧客像や、自社が選ぶべき市場ポジションを言語化し、ぶれない判断基準をつくる工程です。この軸が定まることで、後の施策選びがスムーズになり、組織全体が同じ方向に向かって動きやすくなります。
施策の具体化
施策の具体化では、設定した戦略の軸をもとに「何を、どの順番で、どう実行するか」を具体的なアクションに落とし込みます。広告やSEO、コンテンツ制作などの手段を選びつつ、必要なリソースやスケジュールを整理して実行計画にまとめる工程です。戦略で決めた方向性とずれないよう、目的とのつながりを確認しながら設計することで、成果につながる施策として機能しやすくなります。
マーケティング戦略立てに活きるフレームワーク
環境分析フェーズ
PESTLE分析

自社を取り巻く外部環境である「政治的(Political)」「経済的(Economic)」「社会的(Sociological)」「技術的(Technological)」「法的(Legal)」「環境的(Environmental)」要因に分けて分析します。これにより、市場に影響を与えるマクロ環境を把握し、長期的な戦略を立てる際の参考にします。PESTLE分析で浮かび上がってくるのは、ビジネスリスクや機会になり得る要素であり、ビジネスを進める中で、俯瞰的な視点でリスクや機会を見つけるのに有効です。
5Force分析

5フォース分析とは、業界の競争状況を5つの視点から整理するフレームワークです。「業界内の競争」に加え、買い手・売り手の交渉力、新規参入のしやすさ、代替品の存在という4つの要因を確認することで、市場がどれだけ競争的なのか、どこにリスクやチャンスがあるのかを把握できます。企業はこの分析をもとに、自社が取るべき戦略や強化すべきポイントを明確にしていきます。
3C分析

「Customer(市場・顧客)」「Company(自社)」「Competitor(競合)」という3つの「C」について分析する方法です。「市場・顧客」「競合」を外部環境、「自社」を内部環境として考えて行います。一つの分析で外部環境と内部環境を同時に比較することが可能で自社と外部環境を照らし合わせることで強み、弱みを可視化できます。
SWOT分析

内部環境を「強み(Strengths)」「弱み(Weaknesses)」、外部環境を「機会 (Opportunities)」「脅威(Threats)」に分類し、4つの側面から評価します。これによって、自社の状況と市場環境を包括的に理解することができ、自分たちが今どのポジションに位置しているのか、どこのポジションにあるべきなのかが明確に理解することができます。また、SWOT分析を行うことで今後の計画が立てやすくなります。
戦略構築フェーズ
STP分析

市場を細分化(Segmentation)し、狙うべきターゲット(Targeting)を明確にし、競合と差別化(Positioning)するための基本戦略です。新規事業では「どこで戦うか」を定めるための最初の一歩として重宝されます。無駄な施策を減らし、効果的なマーケティングができます。
マーケティング・ミックスフェーズ
4P分析

4P分析とは、Product(商品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(販売促進)の頭文字をとったフレームワークで、自社の商品やサービスをいくらで、どのような流通経路やチャネルで、どのようにプロモーションして販売していくかを考えます。 これは自社目線で商材を分析するために使います。
4C分析

4C分析はCustom Value(顧客にとっての価値)、Cost(顧客が払うお金)、Convenience(顧客にとっての利便性)、Communication(顧客とのコミュニケーション)の4つを分析するフレームワークです。こちらは顧客目線での商材の分析のために使います。
購買行動プロセスフェーズ
AIDMA分析

AIDMA(アイドマ)分析とは、消費者が商品を購入するまでの心理的プロセスを体系的に表した古典的なマーケティングモデルです。これは、広告や販売促進がどのように消費者の心理に影響を与えるかを理解するために用いられます。AIDMA は Attention(注意)→ Interest(興味)→ Desire(欲求)→ Memory(記憶)→ Action(行動) の5段階で構成され、まず消費者が商品やブランドの存在を知り、次に興味を持ち、欲しいという感情が生まれ、記憶として保持され、その後、購買行動に結びつくという流れを示します。特にマス広告全盛期に有効とされたモデルであり、消費者が受動的に情報を受け取る状況を前提としているのが特徴です。現在でも広告効果分析や販売促進設計の基礎として広く活用されています。
PPM分析

PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)分析とは、企業が複数の事業や商品を保有している場合、それぞれの位置づけを把握し、どこに経営資源を投下すべきかを判断するためのフレームワークです。縦軸に「市場成長率」、横軸に「市場占有率(シェア)」を取り、この2軸の組み合わせによって事業を 花形(スター)/金のなる木/問題児(クエスチョン)/負け犬(ドッグ) の4つに分類します。
市場成長率が高くシェアも高い「花形」は将来的な収益の柱となり得ますが投資も必要です。「金のなる木」は成長は鈍いものの安定収益を生む領域で、資金源として企業を支えます。「問題児」は成長市場にあるもののシェアが低く、投資すべきか撤退すべきかの判断が求められます。「負け犬」は成長もシェアも低く、縮小や撤退を検討する領域とされます。PPM分析によって企業は自社の事業構造を俯瞰し、戦略的な資源配分を行うことができます。
マーケティング戦略を成功させる重要な3つのポイント
ターゲットのペルソナを明確にし合致する施策を打つ
ターゲットを明確にしないまま施策を打つと、メッセージがぼやけて誰にも刺さらなくなります。そこで重要になるのが「ペルソナ」の設定です。年齢や職業といった属性だけでなく、抱えている課題、情報収集の手段、意思決定のプロセスまで具体的に言語化することで、「その人に届けるべき内容」がはっきりします。
ペルソナが決まったら、その人が検索しそうなキーワードやよく使うメディアを起点に、コンテンツや広告の内容・トーン・配信チャネルを合わせていきます。「誰の、どんな悩みを解決する施策なのか」を一つひとつ説明できる状態にすることが、マーケティング戦略を成功させる近道です。
顧客データを効果的に活用する
顧客データは、集めるだけでは意味がなく、施策に落とし込んで初めて価値が出ます。購入履歴やアクセスログ、問い合わせ内容などを分析し、「よく買われる組み合わせ」「離脱の多いページ」「LTVが高い顧客の共通点」といったパターンを見つけることで、どの層に何を提案すべきかが明確になります。
見つかった示唆は、小さくてもよいのですぐ施策に反映します。リピート顧客向けクーポンやカゴ落ちメール、人気記事からLPへの導線追加などを試し、「データを見る → 仮説を立てる → 施策 → 結果検証」のサイクルを回すことが、マーケティング戦略を継続的に強くするポイントです。
施策の効果検証と修正を常に行う
マーケティング施策は、打って終わりではなく「どの程度成果が出たのか」を必ず数字で振り返ることが重要です。事前にKPIや目標値を決めておき、CV数・CVR・クリック率・離脱率などを定期的にチェックすることで、「うまくいっている点」と「改善すべき点」がはっきり見えてきます。
結果が思わしくなければ、訴求文やクリエイティブ、導線、ターゲットのセグメントなどを一部ずつ変更し、A/Bテストを繰り返しながら精度を高めていきます。この「検証 → 修正 → 再実行」のサイクルを習慣化することで、同じ予算でもより高い成果を生み出せるマーケティング戦略に育てていくことができます。
マーケティング施策の成功例・失敗例・その原因まで
成功例
スターバックス

スターバックスは創業期から「家庭(First Place)と職場(Second Place)に次ぐ、第三の場所(Third Place)を提供する」というコンセプトを掲げてきました。コーヒーそのものだけでなく、「一人で仕事や勉強に集中できる」「友人と落ち着いて話せる」「ちょっと気分転換できる」といった“自分の居場所”としての価値を提供することが狙いであり、先ほどの居心地の良い空間づくりやWi-Fi・電源の整備、フレンドリーな接客は、まさにこの“サードプレイス”思想を具体化したものだと理解できます。つまり、スターバックスは「コーヒーを売る企業」というより、「第三の場所という体験を売る企業」としてマーケティング戦略を組み立てていると言えるでしょう。
| ペルソナを明確にし合致する施策を打つ | ◎:街のビジネスパーソンやくつろぎたい人を想定し、価格・禁煙・内装・Wi-Fiなどを一体で設計 |
| 顧客データを効果的に活用する | ◯:テイスティングや「Wi-Fiが欲しい」などの顧客の声=定性情報を施策に反映 |
| 施策の効果検証と修正を常に行う | ◎:CMの効果が薄いと判断して早期撤退し、体験重視・SNS活用へ戦略を素早く切り替え |
ワークマン

ワークマンのマーケティング戦略は、「現場の職人向け作業服専門店」から出発しつつ、リーマンショックや人口減少などの環境変化をきっかけに、ターゲットをアウトドア・スポーツ愛好家、一般ファミリー、さらに30代〜若年女性へと大胆に広げてきた点が特徴です。その軸になっているのが、自社PBによる「高機能 × 低価格」というポジションづくりで、防寒ブランド「イージス」の意外なライダーヒットを起点に、ワークマンプラスや「#ワークマン女子」といった新業態を展開し、客層に合わせた品揃え・店舗フォーマットでブランドを再構築してきました。商品開発では、キャンパーやランナーなどのアンバサダーの声を徹底的に取り入れ、SNSで自然なクチコミが広がる仕組みを構築。さらに、アウトドアブームの一服や減益を受けて「週7日着られる普段着」や防災対応ウエアなどへ軸足を移すなど、環境と結果を見ながら戦略を細かく修正しているのが現在の姿です。
| ペルソナを明確にし合致する施策を打つ | ◎:職人 → アウトドア層 → 女性・ファミリーへと明確に分けて業態・品揃えを設計 |
| 顧客データを効果的に活用する | ◎:SWOT分析・市場予測+顧客・アンバサダーの声を商品・業態に反映 |
| 施策の効果検証と修正を常に行う | ◎:ショックやブームの変化ごとにPB強化・業態変更・コンセプト調整 |
失敗例
コカ・コーラ

コカ・コーラの「ニューコーク」は、マーケティングの典型的な失敗例です。1980年代、ペプシに味で負けているというテスト結果を受けて、約20万人のブラインドテストを行い、「よりおいしい新レシピ」が支持されたことから、従来のコークをやめてニューコークに全面切り替えました。しかし、長年オリジナルを愛してきたファンは「本物のコークを奪われた」と感じて大反発・不買・抗議に発展し、発売から79日後には旧レシピを「コカ・コーラ・クラシック」として復活させる事態になります。味の好みという“合理的なデータ”だけを信じ、ブランドへの愛着や象徴性といった感情価値を読み違えたことが、今回の大きな失敗の本質です。
| ペルソナを明確にし合致する施策を打つ | ×:「長年のコークファン」の感情価値を深く想定できず、「味が良ければ乗り換える人」として見てしまった |
| 顧客データを効果的に活用する | △:大規模な味覚テストには依存したが、ブランド愛や“コークらしさ”という定性的な声を軽視した |
| 施策の効果検証と修正を常に行う | ◎:炎上を受けて79日で旧レシピ復活を決断し、傷は大きかったが素早い軌道修正でブランドを立て直した |
Nestle

ネスレのマーケティングの失敗は、既存の手法が通用しなくなった状況への適応の遅れに起因するものです。ネスレ日本元社長の高岡浩三氏は、「とにかく何をやってもうまくいかない時期があった」と述べており、これは、単に新しい製品をローンチするだけではヒットに結びつかない、消費者の行動や価値観が変化した社会背景と、それに合わせたマーケティング手法の変革が追いつかなかったことが原因として挙げられます。
| ペルソナを明確にし合致する施策を打つ | ×/△:既存の“認知している顧客”ばかりを前提にしてしまい、新たなターゲット像を深く描けず、戦略の幅が狭まった。 |
| 顧客データを効果的に活用する | △:広告が効かない理由や、顧客の潜在ニーズを掘り下げきれず、表層的なデータに依存したまま判断してしまった。 |
| 施策の効果検証と修正を常に行う | △:「広告の限界」に気づくまでに時間がかかり、打ち手の切り替えが遅れた。分析〜改善のサイクルが十分に機能していなかった印象。 |
セブンデックスのマーケティング支援事例
GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社

同社は、電子契約サービス「電子印鑑GMOサイン」において、紙契約に慣れたユーザーを含めたあらゆる契約体験を向上させるという課題を抱えていました。セブンデックスは、契約プロセスを紙から電子へ移行するフローを徹底的にリサーチし、契約業務の全体を図解して設計を再構築しました。ユーザーテストや競合サービスリサーチを通じて、「紙に慣れたユーザーでも抵抗なく使える」UI/UXを導入し、使いやすさ・直感的操作・部署間共有のしやすさへの配慮も行いました。
さらに、「Friendly New Normal」というコンセプトのもと、カラーユニバーサルデザインを採用し、企業規模に左右されないデザインシステムを構築しました。
結果として、プロダクトチーム(開発・デザイン・営業・CS)が組織され、社内で継続的にサービス改善を行える体制が整い、将来的な運用・浸透まで見据えた伴走支援が実現しました。
株式会社MAKERS

同ブランドは、製品数が多く“製品単位での訴求”が中心となっていたため、ブランドとしての方向性や統一されたイメージが浸透していないという課題を抱えていました。 セブンデックスは、まず競合・顧客・自社視点から定性的リサーチを実施し、「誰に、どのような価値を提供するブランドなのか」を明文化してブランド価値を定義しました。次に、そのブランド価値を表現するために、ビジュアルアイデンティティを策定し、「uFitらしさ」が視覚的に伝わるデザイン設計を行いました。
さらに、ブランド体験を一貫させるために、ECサイトの全面リニューアルを実施し、製品訴求だけでなくブランドの世界観を伝える構成へと改善しました。 その結果、ブランド価値の明確化とビジュアル・UX刷新により、uFitらしさが伝わるECサイトを実現し、ブランド認知の拡大と顧客とのコミュニケーション強化に貢献しました。
株式会社スヴェンソン

スヴェンソンが運営する、がん患者向けアピアランス用品のECサイト「PreSta」では、リニューアル済みにもかかわらず、特に注力ターゲットである25〜44歳のユーザーが離脱し、期待した成果が出ていないという課題を抱えていました。セブンデックスはまず定量調査を行い、ユーザーがどの導線で離脱しているのかを可視化し、ターゲット層に最適化されていない導線設計が主要因であると特定しました。
その上で、行動・心理に沿ったユーザー体験へと導線を再設計し、同時に社内へKPI設計や効果検証の重要性を浸透させ、改善サイクルを自走できる体制構築を支援しました。プロジェクト参加者の満足度は100%を達成し、改善の考え方が確実に社内に根付いたことで、注力ターゲットの離脱抑制とEC全体のパフォーマンス向上につながりました。
マーケティングの“次の一手”に迷ったら、セブンデックスへ
認知があっても成果が出ない——そんな壁を突破するには、顧客理解と体験設計の再構築が欠かせません。
セブンデックスは戦略 × デザインを統合し、事業の成長を支える打ち手を伴走型で提供します。




