大和ハウス工業株式会社

確固たる強みを調査・定義し、賃貸住宅事業を推進する本質的なブランド戦略を支援

住宅・建設・不動産分野で国内最大規模の売上高を持つ大和ハウスグループ。同グループが展開する賃貸住宅ライン「D-room」全体のブランド戦略刷新を、セブンデックスが担当しました。
定性/定量両面からのブランド調査から、調査結果に基づく市場でのポジショニングの再整理、ブランド戦略・ブランドDNAの設計、商品構成変更やネーミング策定、ブランドアセット構築、実際のWebサイト制作に至るまで。ブランドの根幹からアウトプットまでを一貫して支援。
市場・顧客両面の視点から、企業・商品のあり方と見え方を捉え直し、ブランドという切り口から企業価値向上に尽力しています。

Brand Design
YEAR2022 - 2023

本質的なブランディングを担うパートナー

本プロジェクトは「ブランド」という、更なる事業推進力を手にしたいというクライアントの想いからスタートしました。
大和ハウスグループが展開する賃貸住宅「D-room」は、長年躍進を続けてきました。しかし、市場環境が着実に変化する中、今まで通りではいつかその成長も頭打ちになってしまう恐れがある。そうした将来性も踏まえ、同社が打ち手の一つに据えようと考えたのが「ブランド」でした。もちろん、大和ハウスグループでは、長年広告をはじめブランドコミュニケーションは重ねてきています。ですが、今の社会の状況や顧客のニーズを踏まえ、あり方の再定義や、訴求方法の検討、組織内への浸透含め本格的に取り組むべきではないか——そんな思いがありました。また、当時は、D-roomや自社の強みや特徴に対する理解や、発信内容に差異があり、社内でも人・部署・商材によって打ち出し方にばらつきが生じていました。また、商品構成やネーミングも複雑化しており、外から見た時にも一貫性が弱かったり、難しく見えてしまうという側面も。そうした複合的なブランドを取り巻く課題を紐解くパートナーとしてお声がけいただいたのが、我々セブンデックスでした。
オーダーいただいたのは、ブランドが持つ根本の言語化や価値の定義といったより深い部分からのブランド構築。ビジュアルを中心とする表層的なブランドの刷新ではなく、本質的なブランディングを期待し、ご相談いただきました。
我々にとっても、このような規模のブランディングに根本から挑むのはまたとない機会。是非ご一緒させていただきたいと考え、御提案・プロセスを設計していきました。

大規模だからこその、綿密な合意形成

プロジェクトを推進していく上で、まず考えたのはその規模を踏まえた“進め方”でした。本プロジェクトは、「ブランド」の影響範囲が企業内の非常に広範にわたります。かつ、それを構築するにあたっては、巻き込まなければいけないステークホルダーも非常に多い。
そこで大きく二つ、進行上で重視する点を設定しました。
一つ目は、段階的な進行。今回のように根源的な部分からブランドを定義していくには、プロセスが長くなると共に、現状把握等で詳細な調査なども求められます。ですが、それには一定規模の予算・時間を要してしまう。
クライアント視点でそれを承認するには、その必然性や期待される成果を社内で明確に提示することが不可欠。そのため、まずは「ブランディングの必要性」の検証をおこなったうえで、実際のブランディングへと移す二段構えのプロセスを設計しました。
二つ目は、ステークホルダーとの丁寧なコミュニケーション。今回のプロジェクトは組織全体に関わるもののため、全社への浸透を見据えて合意形成を図らなければ、ブランドは絵に描いた餅になってしまいます。
それを避けるためにも、時には経営レベルまで巻き込みながら、主要なステークホルダーの方々と要所ごとに合意形成をできるよう機会を設定。同時に、ブランディングという抽象度の高い活動の役割や意義をかみ砕きつつコミュニケーションを重ねるべく準備を進めていきました。

1.「そもそもブランディングが必要か否か」から確認

まずは、そもそもブランディングが必要か否かを検証すべく、「ブランド認知調査」に取り組みました。
「ブランディングの必要性」こそ感じていたものの、それを定量的に評価できる十分な情報は、当時はまだ持ち合わせていませんでした。そこで、ブランドの現在地をデータを元に把握すべく調査を実施。
定量を中心に、自社の認知度や競合との差異などを調査していきました。実際に調査をかけてみると、現状のブランドが持つ課題感がかなり表出。調査前からの仮説が裏付けられるとともに、「ブランド」にはテコ入れすべき余白があることがクリアになりました。
この調査結果に基づき、以後のプロセスの必然性をクライアントと丁寧に合意形成。ブランディングプロセスへと入っていきました。

2.多面的な調査で「ブランドの向くべき方向」をあぶり出す

ブランディング全体にGOがでてすぐ、我々が取り組んだのは、再びの「調査」でした。
というのも、前回が「ブランディングの要/不要を判断するための調査」だったのに対し、今回は「ブランディングの精度を高めるための調査」。調査項目も対象も大きく異なるものです。
実際にD-roomに入居されている方を対象にした「入居者調査」や社員の声を集める「自社調査」。そして、「競合調査」「市場調査」といったフラットな情報含め、集めていきました。
ここでも、いくつもの気づきが得られたのですが、とくに大きかったのは市場の立ち位置です。類似サービスを展開する事業者は、各社近しいポジションを意識した商品・ブランド展開をおこなっていました。たしかに、良く目にするようなブランドのポジショニングではあるものの、本当にそれが現状の市場感等を踏まえて正解と言えるのか。
そのような、いくつかのブランディングで紐解くべき問いを整理し、実際のブランド戦略へと落とし込んでいきました。

3.ブランドの根幹を定義する「戦略」と「DNA」

調査結果、そして解くべき課題感を実際のブランドへと落とし込んでいく上でつくるのが「ブランド戦略」と「ブランドDNA」です。
冒頭でも記したように、今回は単なる表層的なビジュアルの刷新ではなく、より根源からブランドを構築するプロジェクト。そのためには、ビジュアルへと落とし込む前に、戦略、言葉などからしっかりと「根幹となる価値観」を定めなければいけません。
調査に基づき、ブランドの狙うべきマーケットの選定などから、想定する顧客像、競合とのポジショニングなどを整理。掲げるべきタグラインやキャッチコピーなど、思想を実装していく上で鍵となる中心要素をまとめていきました。

中でも我々が「やるべき」と尽力したのが、商品自体のネーミング変更やラインナップの整理でした。当時の商人群は、担当される領域・部署ごとに異なる名前を付けたり、商品群を整理したりしていたため、複雑化しつつありました。
そこにメスを入れ、一つ一つを精査。統廃合やより明瞭ないネーミングへの変更を経て、現状のラインナップにまで落とし込んでいきました。
このプロセスも、本来であればステークホルダーが多く合意形成が難しい部分。ですが事前に幾度もやりとりを重ねていたこと、そして何よりブランディングの重要性を丁寧に伝えてきたことで、想定通りこのプロセスを終えることができました。

4.精緻な戦略を元にアウトプットへと接続

戦略部分がしっかりとまとまった上で、最後に取り組むのが顧客との接点となる部分のビジュアルデザイン。ビジュアルアイデンティティを取り巻くデザインシステムの構築や、Webサイトのリニューアルを中心に制作を進めていきました。
当時のWebサイトは、制作から時間が経ち改修を重ねていたこともあって、構造は複雑に。デザインのルールにもほころびが生じていたため、新たなブランドの戦略等をもとに、ビジュアル的にも構造的にもあらたな形に刷新していきました。このプロセスは、前段のブランド戦略等がしっかりまとまっているか否かで精度に差が出るパートでもあります。今回は合意形成も丁寧にとれていたため、スムーズに進行していけました。

組織・社員の行動変容までを見据えて

今回のプロジェクトはブランドの根幹にアプローチするからこそ、影響を受ける人の多さや変わる人の多様さ、そして与えたい影響の深さを理解したうえで向き合うことが不可欠でした。
ブランディングでは単に見た目が変わるだけではなく、組織・各社員への浸透、行動の変化まで見据えてブランドを新しくしていかなければいけない。その思いのもと、新たなブランドのあり方を探り、様々な方面から定義を重ねていきました。
ブランディングとしては、今回定義・用意したアセットが社内で展開されはじめてからが本番。Webサイトはすでに刷新されていますが、それを追いかけるように各所が少しずつ変化を重ねていきます。同社のブランドの変容はここがスタートラインです。