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カスタマージャーニーマップ完全ガイド: ビジネスモデル別の作り方・テンプレートを紹介

カスタマージャーニーとは、顧客が商品・サービスを探すところから購入・使用に至るまでのプロセスのことです。そのプロセスをビジュアル化したカスタマージャーニーマップを作成することで、複雑な顧客体験を一枚のマップとして俯瞰できるようになり、ユーザー理解に役立ちます。

この記事では、ビジネスモデル別にカスタマージャーニーマップを作成するポイントを紹介していきます。自社のビジネスモデルに合った適切なカスタマージャーニーを作り、実際のプロジェクトに活かしていきましょう。

ユーザーの行動を可視化し、体験設計に活かす

パーティーに着ていくドレスを買いたい20代女性のカスタマージャーニーマップ

カスタマージャーニーマップとは、顧客が商品やサービスを発見し、購入し、使用するまでの一連の体験をビジュアル化したツールです。顧客がたどる行動、その過程での思考や感情、利用するタッチポイントなどを書き起こします。一般的に時間軸に沿って表示され、左(興味関心)から右(使用後の体験)へと顧客の体験を描きます。

企業がカスタマージャーニーマップを作成する理由はさまざまです。新規事業立ち上げの顧客体験を考える場合もあれば、既存の顧客体験を評価し改善するために使用することもあります。また、組織全体で顧客についての理解を共有し、全員が一貫した顧客体験を提供することに役立てる場合もあります。

基本の作成ステップはこちらをご覧ください。

また、作成前に知っておきたいポイントやコツはこちらの記事で紹介しています。

ビジネスモデル別カスタマージャーニーの作り方

顧客の体験は、対象とする商品・サービスの業種業態、ウェブサイトの機能やコンテンツによって大きく異なります。カスタマージャーニーマップを作成する際には、自社のビジネスモデルを十分に考慮し、適切に設計する必要があります。自分の事業に近いサンプルをぜひ参考にしてください。

BtoC

BtoC(Business to Customer)とは、企業が一般消費者に対して、商品やサービスを直接提供するビジネスモデルです。コンビニエンスストアなどの小売店や飲食店など、日常生活のなかで利用する店舗のほとんどはBtoCにあたります。

BtoCカスタマージャーニーマップ作成のポイント

  1. 感情の視点が重要
    BtoCビジネスでは特に、消費者の体験に伴う感情が購入意欲に大きく影響します。そのため、消費者が製品やサービスに対して感じる感情(嬉しい、イライラなど)をマップに反映させることが重要です。
  2. 幅広い顧客がいる
    BtoCビジネスは、広範で多様な顧客を対象とすることが多いです。異なる顧客群ごとに複数のカスタマージャーニーマップを作成すれば、異なる顧客層のニーズや期待により効果的に対応することができます。
  3. タッチポイントをうまく活用する
    ウェブサイト、アプリ、店舗など、顧客とのタッチポイントは多岐に渡ります。それぞれのタッチポイントで、消費者の体験をスムーズに進める役割を果たしているか、一貫性のある体験を提供できているかを確認しましよう。
  4. 購入後のフロー
    消費者がSNSで体験談を共有し他者の購買につながることも多いため、購入後のフローについてもマップに記載が必要です。リピーターを増やすためにインセンティブを提供するなどの施策が有効なこともあります。

ECサイト

ここでは、「ECサイトで家のインテリアに合うソファを買いたい30代男性」を例に、カスタマージャーニーマップを考えてみます。

ECサイトで家のインテリアに合うソファを買いたい30代男性 カスタマージャーニーマップ

ECサイトでは、実際に商品を見れないことから生じる不安の感情や、不安を取り除くための行動が考えられます。特に家具などの大きさや質感が重要となる商品では、「商品が自分の予想通りのものかどうか」という不安や、「必要な時期までにちゃんと届くかどうか「何かあった際に返品対応をしてくれるか」という心配が起こりやすいです。これらの心理的バリアを取り除くために、他のサイト・商品との比較行動があります。営業時間や場所に制約されることなく多くの商品から比較し、商品やサービスのレビューを他の消費者から直接参照することができるのが、ECサイトの特徴です。また、オンラインでの購入はクレジットカード情報や個人情報の提供を必要とするため、登録が簡単かつ安心感のあるサイト設計をすることが重要です。

サブスク

ここでは、「映画サブスクリプションサービスを契約したい40代女性」を例に、カスタマージャーニーマップを考えてみます。

映画サブスクリプションサービスを契約したい40代女性 カスタマージャーニーマップ


サブスクリプションサービスでは、もともと単体で購入・利用していた商品やサービスを定額で好きなだけ利用したいというユーザー像が考えられます。そのため、「自分の欲しい商品やサービスが網羅されているか」、「月額で契約することによりお得になるか」、「使用したい時に簡単にアクセスできるか」という思考が生まれます。サブスクリプションサービスには無料期間を設けているものも多く、まずは無料で試してみようと考えるユーザーも多いです。また、定額制の料金が一見リーズナブルに見えても実際にはあまり活用できていないということが続くと、元が取れていないと感じ解約を考えるかもしれません。入会・退会のプロセスが簡単であることはブランドイメージにもつながります。

飲食店舗

ここでは、「デートで行くディナーのレストランを選ぶ20代男性」を例に、カスタマージャーニーマップを考えてみます。

デートで行くディナーのレストランを選ぶ20代男性 カスタマージャーニーマップ


飲食などの店舗がある事業では、サービスや商品だけでなく、店舗の雰囲気やスタッフの接客態度などの直感的な要素も重要になります。公式の写真と実際が異なることもあるため、「写真通りの食事や雰囲気かどうか」を予約サイトでのレビューやSNSでの意見を参考にすることが考えられます。また、ECに比べて「自分の好みをスタッフが把握しているか」を期待する傾向があるため、顧客一人一人に対応したサービスの提供が求められることもあります。それに加えて、店舗の場所や営業時間、アクセスの良さなども、顧客体験に大きく影響を与えます。

複数の店舗を運営している場合、店舗ごとにサービスの品質が異なると混乱を招く可能性があります。事業を見直す際には、全ての店舗で一貫性のある体験を提供するためにスタッフトレーニングや内部コミュニケーションを強化する必要があるかもしれません。

採用

ここでは、「自分に合った会社に転職したい30代女性」を例に、カスタマージャーニーマップを考えてみます。

自分に合った会社に転職したい30代女性 カスタマージャーニーマップ

採用プロセスは人生に大きな影響を及ぼす決定であり、ユーザーは情報収集や比較、考慮に多くの時間とエネルギーを投資します。したがって、転職サイトの選択、求人情報や企業などの比較検討フェーズが非常に重要となるのが採用プロセスでの特徴です。自分のスキル、経験に合った求人というだけでなく、企業風土が自分に合っているかどうかやどんな人が働いているのかなどの情報を面接までに得たいという思考が考えられます。

また、転職プロセスは、履歴書の作成、求人の検索、面接のスケジューリングなど、複雑で時間がかかる場合があります。この複雑さを軽減したユーザーフレンドリーな設計も、転職サイトを選ぶ際の要因になり得ます。

BtoB

BtoB(Business to Business)とは、企業に製品やサービスを提供するビジネスモデルのことを指します。一般的に、オフィス用品の卸売り業者や建設機械の製造会社、ソフトウェア開発会社などがBtoBの典型的な例となります。

BtoBカスタマージャーニーマップ作成のポイント

  1. 長期的な関係の重視
    BtoBビジネスでは、長期的な顧客関係が中心です。カスタマージャーニーマップは長期的な顧客関係の全体像を理解する手助けとなり、短期的な取引以上の価値を見つけることが可能になります。
  2. 会議での決定
    BtoBビジネスでは通常、1人ではなく複数の関係者(例:購買部門、技術部門、経営層)が会議を行い意思決定を行います。そのため、各関係者の視点を考慮しそれぞれのニーズと期待を理解することが重要となります。
  3. 商品・サービス価値の明確化
    BtoBの顧客は製品やサービスがビジネス上の問題をどのように解決するのかを重要視しています。カスタマージャーニーでは、詳細な情報を得られるタッチポイント(カタログ・見積もりなど)を明確に示すことが求められます。
  4. オンボーディングとサポート
    製品やサービスを長期にわたり利用するため、製品のセットアップや使用方法の学習、問題解決のためのサポートなど、購入後の顧客体験もカスタマージャーニーマップに反映させる必要があります。

SaaS

SaaS(Software as a Service)は、インターネット経由で提供されるソフトウェアの配信モデルのことで、必要なソフトウェアを個々にインストールする代わりに、クラウド上でサービスとして利用できます。ここでは、「顧客管理ツールを導入したいと考える会社」を例に、カスタマージャーニーマップを考えてみます。

顧客管理ツールを導入したいと考える会社 カスタマージャーニーマップ

まず、BtoBビジネス全般として、内部会議やビジネスセミナーでのタッチポイントが特徴となります。ユーザーはSaaSツールの導入により、コストと利益がどう変化するかを合理的に検討し、稟議にかけるという行動を取ることが多いです。複数のステークホルダーが関与するため、購入プロセスは複雑で時間がかかる可能性があります。SaaSは通常、サブスクリプションベースの価格モデルを持っています。これにより、一時的な大きな投資をせずに、手頃な価格でツールを利用できることが強みです。またSaaSツールは企業の重要なデータをクラウドに保存するため、データのプライバシーやセキュリティへの不安が生じます。インターネット接続の問題やサービスプロバイダーのサーバー問題が生じると、アクセスが不可能になることがあり、その対策を練る行動も考えられます。また利用を開始した後も、社内の利用者全員が効果的に使えるようなオンボーディングも重要です。

製造・プロダクト

ここでは、「業務用プリンターを導入したい会社」を例に、カスタマージャーニーマップを考えてみます。

業務用プリンターを導入したい会社 カスタマージャーニーマップ

BtoB製品の購入は高額な投資であり、購入者はその価値を明確に理解し、上層部に証明する必要があります。デモやカタログを取り寄せたり、見積もりを行うことで自分たちのニーズや予算にぴったり合うことを確かめます。またBtoCの製品に比べて、大量購入やリピート購入につながりやすく長期的な関係になるため、継続的なサポートとメンテナンスが顧客満足度に影響を与えます。カスタマージャーニーマップには、製品のライフサイクル全体にわたる保証・サポートの観点を取り入れる必要があります。

コンサルティング・業務委託

ここでは、「アプリをリリースして事業を成長させたい会社」を例に、カスタマージャーニーマップを考えてみます。

アプリをリリースして事業を成長させたい会社 カスタマージャーニーマップ

受託会社やコンサルティング会社は、一般的に似たようなサービスが提供する会社が多くあり、その中で自社が求める条件にフィットする会社を比較検討します。契約条件はケースバイケースなため、「この契約条件は公平か」を検証し、顧客がその費用に見合う価値を感じない場合に問題となる可能性があります。また長期的な関係になるため、担当者のコミュニケーションに満足度が大きく左右されます。設計開発フェーズでは、技術的な問題やリソースの問題などによりプロジェクトが遅延する可能性があり、定期的な進捗確認が行われます。

BtoBtoC、 CtoC

BtoBtoC(Business to Business to Consumer)とは、企業が消費者にモノやサービスを提供するまでの間に企業を介するビジネスモデルのことです。楽天やZOZOTOWNなどのマーケットプレイス型のECサイトや、SUUMOなど企業と消費者を結びつけるビジネスモデルを指します。

CtoC(Customer to Customer)とは、消費者が他の消費者に直接商品やサービスを販売または提供するビジネスモデルです。メルカリなどのフリマアプリや、AirBnbのような宿泊施設の貸し出しなどがCtoCにあたります。

BtoBtoC、CtoCカスタマージャーニーマップ作成のポイント

  1. 異なるニーズと期待
    これらの業界の顧客は、通常、売り手と買い手で異なるニーズと期待を持っています。例えば、売り手は、効率性などに重きを置く可能性がある一方、買い手側は品質、カスタマーサービスなどに焦点を当てることが多いです。違いを理解した上で、それぞれの視点のカスタマージャーニーマップを複数作成することが必要です。
  2. エンドユーザーの理解
    直接的に顧客と接触しないことも多く、インタラクションが限られているため、ユーザーの体験を理解することが難しい場合があります。そのため、パートナーやユーザーから得られるフィードバックやデータを活用し、ユーザー体験を把握することが重要です。
  3. 信頼と安全性
    売り手の顔が見えないが故に、CtoCの取引では特に商品の品質、送金の安全性、個人情報の保護など、信頼と安全性が大きな役割を果たします。ユーザーが信頼感を持てるような体験の設計と、それに対応するタッチポイントの明確化が必要です。

マーケットプレイス

通常BtoBtoCのビジネスモデルでは、売り手側と買い手側の2つのカスタマージャーニーマップを作成する必要があります。ここでは、売り手側である「ECモールに初めて出品を考えている小口製造者」を例に、カスタマージャーニーマップを考えてみます。買い手側のカスタマージャーニーマップはECの章を参考にしてください。

ECモールに初めて出品を考えている小口製造者 カスタマージャーニーマップ

ECモールに初めて出品を考えている製造者はオンラインでの販売路にどれほど可能性があるか、運用にどれほどの労力がかかるのかわからないことに不安が生じます。そのため、同業他社のECモール利用状況を調査し、「自社商品に最適な顧客を持っているECモールはどれか」「コストに見合う利益を得られるか」について比較検討が行われます。また、初めて商品を登録する時に、顧客にとって魅力的に見えているか支払い・配送方法が顧客とって便利かなど、エンドユーザー目線でのユーザー体験も気になります。また、販売成績が伸び悩んでいるときはECコンサル支援サービスを使うことも考えられます。

マッチングサービス

ここでは、「恋愛マッチングサービスを利用したい20代男性」を例に、カスタマージャーニーマップを考えてみます。

恋愛マッチングサービスを利用したい20代男性 カスタマージャーニーマップ

CtoCのサービスでは個人同士のやりとりとなるため、相手の素性がわからないことに不安を感じやすいです。そのため、SNSや友人の意見を参考にしてサービス自体の信頼性を確認する行動が生じます。特にマッチングサービスは非常に個人的な情報を共有する場であり、ユーザープライバシーとデータセキュリティが重要な考慮事項となります。また、ユーザーの興味、嗜好、生活スタイルなどに基づいたマッチングアルゴリズムがあったり、メッセージのやりとりなど個人に委ねられる部分では例文を用意するなど、誰でも簡単に利用し続けられる仕組みも必要です。

まとめ

ここまで、ビジネスモデル別にカスタマージャーニーマップを紹介してきました。それぞれの特徴を理解し、ユーザーの視点から体験を考慮することで、課題を事前に予測し、適切な解決策を計画することが可能になります。

是非、カスタマージャーニーマップを活用して、ビジネスに役立てましょう!

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