いま、モノやサービスがあふれる時代において、ただ「良いもの」をつくるだけでは選ばれません。
価格でも機能でもない、「このブランドだから選びたい」と思わせる“何か”が必要です。 その“何か”をつくり出すのがブランディング。とはいえ、「ブランディングって結局なにをすればいいの?」「どう進めるのが正解なの?」という声も少なくありません。
本記事では、成果につながるブランディングの流れを、はじめての方にもわかりやすくご紹介します。
ブランドのアイデンティティを見つけ、確かな形にするための第一歩を、ここから一緒に踏み出しましょう!
目次 [開く]
ブランディングとは?意味を簡単に説明!
ブランディングの意味
ブランディングとは「企業や製品のアイデンティティを定義し、そのイメージを構築・管理するプロセス」です。どのようなイメージを持ってもらいたいか戦略を立てるところから始まり、そこからロゴや広告、アプリ、パッケージなど、さまざまな接点に戦略を落とし込んで行きます。「その企業のらしさ」をイメージできるようになることで、ブランドは戦略通りの確固たるブランド像を獲得することができます。
ブランディングについて詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください!
ブランディングの2つの要素
インナーブランディング
インナーブランディングとは、社内に向けたブランディングのことで社員や関係者に自社のブランド価値や理念を理解・共感してもらい、それを行動に反映させるための活動です。言い換えると「ブランドの中身を社員がきちんと理解し、体現する」ための活動です。
さらに詳しくインナーブランディングについて知りたい方はこちらの記事も併せてご覧ください!
アウターブランディング
アウターブランディングとは、社外に向けたブランディングのことで企業が外部の顧客や取引先、投資家などに対して行うブランディング活動です。言い換えると、「社外の人にブランドの良さを伝えて、好きになってもらう」ための活動です。
さらに詳しくアウターブランディングについて知りたい方はこちらの記事も併せてご覧ください。
ブランディングのメリットとは
そもそも、ブランディングによって企業にもたらされるメリットとは一体何なのかについて解説します。
価格競争からの脱却
ブランディングを行うことで、商品やサービスに独自の価値が生まれ、価格以外の要素で選ばれるようになります。これにより顧客のロイヤルティが高まり、多少価格が高くても支持され続けます。結果として、価格競争に巻き込まれず、安売りに頼らない経営が可能になります。
ブランドイメージの刷新と親近感の向上
時代や市場の変化に合わせてブランドの姿勢や価値を再定義することで、これまで届かなかった層にも新たな印象を与えることができます。また、丁寧に設計されたブランド体験は、顧客との心理的な距離を縮め、自然と親近感を生み出します。単なる認知にとどまらず、「共感」や「信頼」へとつながる関係性が構築されます。
顧客体験の統一と信頼性の向上
ばらつきのない一貫したメッセージやデザインが提供されることで、ユーザーは迷うことなくブランドの世界観に没入できます。こうした整合性のある体験は、ブランドへの信頼感を自然と高め、選ばれる理由へとつながっていきます。
社員のブランド理解と行動の一貫性
インナーブランディングの取り組みによって、社員一人一人がブランドの理念や価値を深く理解することは、企業の根幹を支える重要な要素です。その理解が日々の業務や顧客対応の中に自然と反映されていくことで、組織全体としての行動に一貫性が生まれます。その結果、ブランドイメージにも厚みと説得力が加わり、ブランド全体の信頼性と魅力を高めていくのです。
さらに詳しくブランディングのメリットについて知りたい方はこちらの記事も併せてご覧ください。
事例を交えながらブランディングの流れについて解説!
今回は、セブンデックスが手掛けるブランディングの流れを、東邦ガス株式会社の事例をもとにご紹介します。
実際のプロジェクトを通じて、どのようにブランディングが進められていくのか、具体的な手順や押さえるべきポイントをわかりやすく解説していきます。
東邦ガスグループは長年において、ガスを中心としたエネルギー供給を主な事業としてきました。
東邦ガスグループは2022年に「東邦ガスグループビジョン」を公表。このグループビジョンを実現するため、ブランドを再定義し社内外の企業イメージを向上させるパートナーとして、セブンデックスにご依頼をいただきました。
1.自社の現状分析
ブランディングの出発点は、自社を正しく理解すること。
定量データだけでなく現場の声や体験などの定性情報、さらにはフィールドリサーチを通じたリアルな気づきも不可欠です。競合だけでなく、異業種や他市場にも目を向けることで、多角的な視点から自社の強みや課題が見えてきます。ここでの分析が、ブランドコアをつくる次のステップ──アイデンティティ構築の成否を左右します。
今回は「自社の観点」と「市場・競合の観点」という2つの観点で行った分析方法について解説します。
自社の観点
●従業員サーベイの実施
社内に向けて企業イメージの調査を行い、現場で働く従業員からのイメージやニーズを把握することで「らしさ」や「向上させるべきイメージ像」の示唆を得てブランディングの方向性の検討に活かします。リサーチ方法は、インターネットを用いたアンケート調査やインタビューなど、目的や組織の規模に応じてさまざまなアプローチがあります。
●主要な工場・営業所等の訪問
企業文化を深く理解するためには、実際に工場や営業所を訪問し、現場の空気を肌で感じることが欠かせません。日々の業務の進め方や社員同士のコミュニケーション、職場の雰囲気には、その企業ならではの価値観や姿勢が表れます。現場での気付きを通して、暗黙知を言語化し、全社的なナレッジとして活かすことができれば、組織力の底上げにも繋がります。机上の情報だけでは見えてこない“リアル”をつかむためにも、現場訪問は非常に有意義なアプローチです。

●経営陣とのディスカッションの実施
経営陣とのディスカッションは、企業の価値観やビジョンを深く理解するための重要な機会です。意思決定の背景や中長期的な戦略を直接聞くことで、現場との認識のギャップを埋め、組織全体の方向性を明確にできます。こうした対話を通じて得た言葉は、ブランドや組織づくりの核へと昇華されていきます。

市場・競合の観点
●3C分析の実施
「Customer(市場・顧客)」「Company(自社)」「Competitor(競合)」という3つの「C」について分析する方法です。「市場・顧客」「競合」を外部環境、「自社」を内部環境として考えて行います。
3C分析を行う際は、顧客の年齢や価値観などをセグメントごとに掘り下げて理解することが重要です。競合に関しては、ただ調べるだけでなく「なぜ選ばれているのか」という理由まで踏み込んで考える必要があります。そして、自社の立ち位置をこの2つの視点と照らし合わせながら、客観的に見つめ直すことが成功への鍵となります。
●一般消費者を対象とするブランド認知調査
一般消費者を対象としたブランド認知調査は、自社ブランドが市場でどのように認識されているかを客観的に把握するために欠かせません。調査では、ブランド名の想起率やイメージ、競合との比較認知などを分析し、消費者との距離感や浸透度を可視化します。こうしたデータは、マーケティング施策の改善やブランドメッセージの再設計に直結し、戦略の精度を高める手がかりとなります。
●顧客へのインタビュー
顧客へのインタビューは、実際の利用者の体験や本音を把握し、商品やサービスの改善に活かすための手法です。表面的なアンケートでは見えてこない課題や、意外なニーズを掘り起こせる点が最大の魅力。インタビューの際は、事前に目的を明確にし、深掘りする質問を準備することが成功の鍵となります。
2.アイデンティティの構築
ブランドアイデンティティは、企業が提供する価値や社会における存在価値を表すものであり、今後の企業活動の軸となる重要なものです。そのため、ブランディングにおけるアイデンティティの構築は、ブランディング全体の中核を担う重要なステップです。
目指すブランド像(ブランドアイデンティティ)の定義化
自社の現状分析を踏まえて、企業の目指す方向性を社内外のステークホルダーが共通した認識を持てるように東邦ガスグループの目指す方向性を「魅力的な地域をつくる会社」へと再定義しました。この中では、現場社員にも参加いただいた制作ワークショップを実施し、そのアウトプットをもとに、数百パターンにおよぶブランドアイデンティティ案を作成。
さらに、経営陣向けの説明資料作成も支援しながら、全社が納得できる成果物となるよう、約半年をかけて社内での合意形成を丁寧に進めました。

タグラインの策定
社内外のステークホルダーが簡単に共通の理解を持てるように、「タグライン」を策定します。
企業の理念や価値観を、誰にでも分かりやすく、心に残る言葉で表現することで、社員の意識統一や顧客との信頼関係の構築に繋がります。言葉の選び方、デザインなどで、企業の印象や伝わり方は大きく変わるため、短くても本質を捉えた表現が求められます。
アイデンティティの構築は、ブランドの一貫性と信頼性を確立し、社内外に「何者であるか」を明確に伝えられます。そのため細部までこだわって策定することが重要です。
3.アイデンティティの浸透
ブランディングにおけるアイデンティティの浸透は、構築したブランドの価値や理念を、社内外のすべての関係者に伝え、体現させていく最終フェーズとして重要な位置づけにあります。
ブランドサイト
東邦ガスグループが実現する「誰もが住みたい地域」の様子を、サイトに訪れた人が視覚的に体験できるブランドサイトを制作しました。街の全体図や、東邦ガスグループの提供するサービスによって安心や賑わいが生まれるシーンをビジュアルで表現しています。
ブランドサイトの制作は、元ある企業イメージを刷新し、新しいコンセプトや挑戦を多くのユーザーが直感的に感じられることを狙います。

ブランドムービー
東邦ガスグループの過去から未来へと続くストーリーを動画で表現。創業から続く地域への思いと、ガス事業という枠を超えて多様なソリューションで、地域の「安心」と「賑わい」に貢献していくこれからの東邦ガスグループを伝える構成になっています。
ブランドムービーの制作は多様なステークホルダーが提供価値を理解し心象が刷新されること、また社員自身が目指す未来を直感的にイメージできることを狙います。
ブランドポスター・ブランドブック
ブランドアイデンティティである「わたしたちの思い」「コミュニケーションフレーズ」の定義に伴い、社内外のステークホルダーに正しい理解・共感を促し、ブランドに沿った心象を形成するために、複数のクリエイティブを制作。
それぞれのクリエイティブが、未来へ向かって発展していくことを目指し、社内外のステークホルダーの行動変容、そしてブランドが根付いていくことを狙いました。


アイデンティティの浸透は、ブランドの価値や理念を実際の行動や体験として一貫して体現するために必要です。構築したアイデンティティを社内外にしっかりと浸透させなければ、ブランドは「形だけ」で終わってしまいます。 アイデンティティの浸透は「ブランドを生きたものにするプロセス」であり、社内外の信頼と共感を生む鍵となります。
ブランディングを成功させるポイント
どれだけ優れた商品やサービスでも、ただ存在するだけでは選ばれません。
顧客の心に残り、信頼を築くためには、計画的なブランディング戦略が欠かせないのです。
ここでは、セブンデックスが考えるブランディングを成功へ導くために押さえるべきポイントを、解説します。

01.魅力的なブランドアイデンティティの設定
人を惹きつける志や理念は、時に言葉以上の力を持ちます。
単なる機能価値にとどまらず、感情に訴えかけるメッセージこそが、人の心を動かす原動力となるのです。
だからこそ、細部にまで想いを込め、伝え方ひとつひとつに工夫を重ねる姿勢が、ブランドの真価を高めていきます。
02.言葉と行動の一致の徹底
経営陣の言動に一貫性がなければ、現場は迷い、組織全体に混乱が生じます。
「言っていること」と「やっていること」が乖離しないよう、常にブランドコアを軸に据え、自社が目指す姿と行動がしっかりと結びついていることが求められます。
トップの姿勢こそが、ブランドの信頼性と社内の方向性を左右するのです。
03.思想とオペレーションの一体化
ブランドの思想が、現場のオペレーションによって損なわれては本末転倒です。
もし社員に挑戦を求めるのであれば、その挑戦を後押しする組織風土の醸成と、挑戦を称える仕組みを整えることが不可欠です。
思想と実行が噛み合ってこそ、ブランドは本当に力を持ち始めます。
04.先導する企業姿勢
企業の変革を本気で目指すなら、最初に変わるべきは社員ではなく、企業そのものです。
企業自らが挑戦し、リスクを引き受ける姿勢を見せることで、社員は安心してその背中を追うことができます。
逆に、社員に先陣を切らせてしまえば、リスクへの不安が先立ち、足がすくんでしまうのは当然のことです。
その他のブランディングの成功事例を紹介!
今回はセブンデックス✕東邦ガスのブランディング事例を紹介しましたが、これ以外にも数多くの企業がブランディングにより成功を収めています。
以下ではセブンデックスの事例に加え、他の注目すべきブランディング成功事例についてもご紹介しておりますのでぜひご覧ください!
ブランディングならセブンデックス
戦略的にブランドを作り上げていくことでビジネスを効果的に前進させていくことができるブランディングは、非常に重要な役割を果たします。戦略を考えるだけでは意味がなく、その戦略を的確に表現できて人に伝えることができるクリエイティブを制作でき、それらを長期的に分析改善することが必要です。これらの工程全てを行うデザイン会社はそう多くありません。多くの場合が、戦略だけ・表現だけを行なってしまっているのが現状です。
ブランディングを同じ熱量で進めてくれるプロと一緒に行うことは、より良いブランドを作り上げるためにとても重要です。全ての工程を一気通貫して行うことができるセブンデックスにぜひご相談ください。
以下の記事でおすすめのブランディング会社をご紹介しています。ぜひご覧ください。