このコンテンツは、多くの企業が抱える「採用課題」に対し、「採用ブランド策定から体験設計・クリエイティブ制作までを一貫した戦略の元に実行していくプロセス」についてご紹介する記事となっております。
採用活動において、「候補者から選ばれる」ことの難易度が高まっている中で、ブランド戦略及び体験設計(UXデザイン)、クリエイティブの観点から、選ばれるブランドを形成するための実行プロセスをまとめました。
記事を読んだ方が実践できる様に、参考アウトプットや各プロセスで意識する観点等も記載しております。
企業の採用担当の方はもちろん、マネジメント・経営層の方々に、「現状の課題を解決できそう」「こんな考え方があるんだ」と思ってもらえるコンテンツとなれば幸いです。
文字数:1万427文字
読了目安時間:20分前後
少し情報量の多いコンテンツになっていますので、ご都合の良いタイミングで見ていただけると嬉しいです。
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はじめに|採用ブランディングにおける、統合的プロセスの重要性
本編では、採用ブランディングに取り組むにあたって、ブランドの戦略策定・候補者体験設計・採用クリエイティブ制作が一貫して繋がっている状態を作るための、統合的なプロセスについてまとめさせて頂きました。
ブランドの戦略策定〜採用活動に必要なクリエイティブ制作などの各施策がバラバラに展開されることなく、一つの戦略のもとに一貫して繋がっている状態を作るためのプロセスのことを、本記事では「統合的プロセス」と呼んでいます。
目次
「候補者に選ばれること」の難易度が高まり、採用ブランド形成のためには”体験の一貫性”が重要に
では、なぜ統合的なプロセスの重要性が高まっているのか。
昨今の採用市場では、採用に力を入れている競合が増え、各企業の訴求も多様化し、多数の競合他社の中から「自社を選んでもらうこと」の難易度は、以前と比べて格段に高くなっていると感じています。
そんな採用市場では、採用ページやSNSでの「訴求」のみで差別化を図ることは難しく、候補者目線では「なんとなく良さはわかったが、他社と何が違うのかは分からない」といった状態になってしまうでしょう。
求人広告、スカウト、採用HP、Twitterなど、採用活動におけるアプローチ手法としても多角化している中で、候補者との全てのタッチポイントにて、一貫して自社の独自性・優位性を感じることができる「一貫したブランド体験の設計」が重要です。
一貫したブランド体験を提供することで、候補者がより解像度高く、より立体的に、自社の”らしさ”を捉えることができ、結果として自社への入社意思決定に繋げることができます。
そして「統合的なブランド体験」を設計するには、「ブランドとしてのポジショニング及び差別化戦略」「候補者の体験デザイン」「体験を実現するクリエイティブの制作」の3つが全て同じベクトル上にあり、一貫していることが重要な要件となります。
下記より、セブンデックスが様々な企業の事業成長をご支援していく中で体系化した、「統合的な採用ブランディング設計プロセス」を紹介していきますので、採用に関わる方にとって少しでも参考になれば幸いです。
本編|採用ブランディングにおける統合的プロセス
それでは、ここからは採用ブランディングにおける具体的なプロセスについてご紹介していきます。
ブランド体験を設計するためには、まずは採用活動における戦略やビジネスニーズも踏まえて、「どんなブランドを目指すか?」を定め(ブランドイメージ策定フェーズ)、策定したブランドイメージを認識してもらうための体験設計を行い(体験設計フェーズ)、設計した体験に基づいて、実現するために必要なクリエイティブを制作していきます(クリエイティブ制作フェーズ)。
これらのプロセスはあくまで一例であり、今回ご紹介するプロセス以外にもアプローチ方法は存在しますし、クリエイティブ制作についてはどんなクリエイティブを制作するかによってもプロセスは変動します(今回は採用サイトの想定にて記述)ので、一つの事例としてご参考いただけると嬉しいです。
【1】ブランドイメージ策定フェーズ
採用ブランディングを進めるにあたり、まずは初めに着手するべきは「ブランドイメージの策定」です。
採用活動におけるあらゆるタッチポイントにて一貫した訴求・価値提供を行うためには、まずは土台となる「ブランドとしての勝ち筋」や「形成するべきブランドイメージ」を明確にしていく必要があります。
採用したいターゲットが、競合ではなく自社を選んでくれる状態をつくるためには、どのようなブランドイメージを形成する必要があるのか。また、どのような優位性を感じれもらえば勝っていけるのか等、後続プロセスの土台となるブランドイメージを作成していきます。
ブランド戦略を策定する流れとしては、まずは候補者・自社・市場・競合の観点からリサーチ・分析を行い、自社の採用活動を取り巻く環境について把握します。その上で、リサーチ結果を元に、自社の採用活動における優位性や独自性を見出していきます。
そして、採用の勝ち筋及び価値の提供方針に沿って、「形成するべき自社のブランドイメージ」を定義していきます。
1-1:市場調査
市場調査では、候補者を取り巻く市場としてどのような特性・傾向があるかを明らかにしていきます。
採用候補者の思考や価値観は、市場傾向の影響を受けやすく、時代によっても大きく変化するものです。
例えば、新卒採用市場において、ここ数年で「安心・安定の企業に入りたい」という思考・価値観から「成長速度の速い(速そうな)企業に入りたい」という価値観の変化は加速し、「一生勤める会社」ではなく「(転職前提で)ファーストキャリア」としての企業選定軸を持った学生は大幅に増えている傾向になります。
そしてその背景には、終身雇用の見直しや副業の台頭といった社会的背景があることが推察できます。
このように、採用市場における全体傾向や流れ、その背景にある社会的情勢などを紐解き、自社が勝負しようとしている採用市場の盤面を適切に捉えることが重要です。
具体的には、下記のような観点にてデスクリサーチを行なっていきます。
1-2:自社調査
自社調査では、候補者獲得に向けて、自社が発揮できる強み、現状のリソースによる制約・課題を明らかにしていきます。
候補者に自社を選んでもらうためには、候補者目線での「選ぶ理由」が必要であり、採用活動ではその「選ぶ理由」を何とするか?どう作るか?が非常に重要な論点になります。 この後のフェーズにて相対的に見た自社の優位性・独自性・弱点を見出していくために、採用における自社の特徴を解像度高く捉えていきます。
具体的には、既存社員へのインタビュー・これまでの面接結果振り返り・採用ファネル分析などを通じて、下記のような観点を明らかにしていきます。
1-3:競合調査
競合調査では、「1-2」で調査した自社の特徴を相対的に比較し、自社の優位性・独自性・弱点を見出していくために、採用競合となり得る会社のブランドイメージ・採用における強み・弱みを捉えていきます。
競合調査にあたり、まずは候補者が選考体験において検討する可能性のある企業(競合となり得る企業)をピックアップし、その上で各企業の特徴を書き出し、自社との差分を明らかにしていきます。
具体的には、採用ブランドに関わる下記のような項目を明らかにしていきます。
その上で、下記のような観点を明らかにしていきます。
1-4:候補者調査
候補者調査では、自社が採用したい採用候補者の行動や価値観について捉えていきます。
採用要件を満たす方に対してインタビューを実施し、インタビューでの発話を分析する手法が有効ですが、多くの企業では、トップまたは現場から「このようなスキル・経験を持った人がほしい」「このようなマインドセットの人がほしい」といった要望が雑多に寄せられていることが多いかと思いますので、まずはそれらの要望を人材要件として整理し、調査対象となる人材を明確にするところから始めていきます。
💡 この時、ステークホルダーの中で認識齟齬が生まれないように、要件の言語化は丁寧に行っていく必要があります。 例えば、「コミュニケーション力が高い人」という要望がある場合、それは「話題づくりが上手い人」なのか「論理的に意思疎通できる人」なのか、解釈によって認識齟齬が生まれてしまいます。 また、「高い人」という部分についても、どれくらいの水準なのか?は人によって認識齟齬が生まれやすい部分でもあります。
採用するべき人材要件の整理が完了したら、要件を満たす人材にインタビューを実施するためにリクルーティングを行っていきます。
要件を満たす人材の中には、「既に入社している人材」(これまでの活動で採用できている人材)もいれば、「これまでは採用できていないが、採用していきたい人材」(現状、社員の中には要件を満たす人材がいないケース)もおりますが、後者については社外の方も含めてリクルーティング対象者を検討していきます。
リクルーティング手段としては、自社社員・知り合い・調査会社利用など様々選択肢がありますので、プロジェクトの時間的・金額的制約なども加味して適切な手段を選択していきます。
インタビューでは、UXデザインプロセスにおけるインタビューと同様に、「インタビュイーの就活体験における行動・思考・ニーズを捉えること」を念頭に、下記のような観点でインタビューを行なっていきます。
1-5:リサーチ結果分析・価値提供方針の策定
市場・自社・競合・候補者それぞれの視点でのリサーチが完了したら、リサーチ結果を元に、自社の採用における価値提供及び採用の勝ち筋を定めていきます。
具体的には、下記の要件を満たす形での方針を定めていると良いでしょう。
結果分析や勝ち筋の方針策定方法には様々なやり方がありますが、一例として弊社PJでも活用しているプロセスをご紹介します。
1-5-1:候補者のニーズ分析
方針策定にあたり、まずは「候補者が(採用活動・仕事探しにおいて)どんなニーズを保有しているか?」を明らかにしていきます。
まずは、リサーチフェーズで実施したインタビューの発話ログから、就職活動に対する価値観・考え方・行動が現れている発話を抽出。背景心理が近しい発言についてはグルーピングを行います。
その上で、発話の裏にあるニーズ(発言の背景・きっかけになるニーズ)を抽出していきます。
このプロセスは、UXデザインプロセスにおける「上位下位分析」を簡略化したものであり、「発言からニーズを抽出する」というプロセスを簡易的に実践しているものとご認識いただければと思います。
本プロセスを通じて、採用ターゲットが採用活動において満たしたい本質的なニーズを明らかにしていきます。
1-5-2:ニーズに対して訴求可能な提供価値検討
上記のリサーチ結果を踏まえて、候補者が持つニーズを満たすための自社の提供価値を見出していきます。
まずは、自社調査で把握した「自社の特徴(候補者が自社で働く上で関係してくる特徴)」を書き出していきます。
その上で、「候補者にとっての価値」へと転換し、その事象が候補者に対してどのような価値・ベネフィットになるのかを明らかにしていきます。
1-5-3:競合に対する優位性・独自性方針策定
上記のプロセスにて候補者のニーズ対して提供できる価値及び自社で訴求可能な特徴を整理できたら、競合他社の特徴とも相対比較し、自社の独自性・優位性について定義していきます。
リサーチから明確になった「採用競合となり得る企業」をピックアップし、候補者が各企業とバッティングした際に訴求する優位性を書き出していきます。
1-5-4:採用戦略方針の策定
これまでの整理を通じて「自社が採用においてどのような特徴を強みとして、候補者に対して価値提供していくか?」が整理できたら、採用としての戦略方針を整理していきます。
「どこまで戦略を具体化するか?」はこのフェーズにおける大きな論点かと思いますが、本記事のケースでは「目指すべきブランドイメージ」を定めるための方針策定となるため、目的に対して必要な下記の項目にて整理していきます。
1-6:採用ブランドイメージ策定
1-5にて整理した価値提供方針ならびに優位性・独自性の方針に基づき、「自社は、採用候補者からどのような印象を持たれれば、入社する企業として選ばれるのか?」という目指すべきブランドイメージを明確化していきます。
1-6-1:ブランドを形成する要素の整理
理想のブランドイメージを定めるにあたり、自社のブランド像を形成する要素を整理していきます。ブランドイメージ=採用候補者からの企業像になるわけですが、企業像を形成する要素は一つではありません。
候補者から見える採用ブランド像を整理すると、
- 理念
- 事業
- 組織文化・制度
- 人
- 仕事
- 描けるキャリア
という6つの要素に分割できます。
それぞれの要素において、自社のブランド像がどのような要素を持っているべきか言語化していきます。
1-6-2:形成するべきブランドイメージの明文化
1-5にて作成したこちらのキャンバスの内容を元に、自社に持ってほしいToBe(理想)の印象に含まれる要素を改めて書き出していき、最後にブランドイメージを一文で表現していきます。
一文で表現する理由としては、ブランドを取り扱う自社のメンバーが「このブランドはどんなブランドか?」を認識している必要があるためです。 (前プロセスで策定したアウトプットでは、まだ要素が多く端的にどのようなブランドであるか表現されていないため)
【2】体験設計フェーズ
ここまでのプロセスで、自社の採用活動において形成するべき理想のブランドイメージを定めました。
続いての体験設計フェーズでは、自社の選考における候補者の体験設計を行い、「どのような体験を実現すれば、定めたブランドイメージでの印象を形成できるか?」考えていきます。
体験設計フェーズでは、前段で定めた採用クラスターをペルソナとしてより具現化し、それぞれのペルソナに対する現状施策での体験を整理した上で、現状の体験をアップデートするための施策案を検討し、その上でペルソナにとっての理想の体験を描いていきます。
2-1:ペルソナ策定
体験を設計するにあたり、まずは体験を設計する対象となるペルソナ像を設計していきます。
採用活動におけるペルソナとは、採用したい候補者を具現化したものであり、候補者の価値観や考え方、就職活動におけるゴールを反映させた一人の人物像として設計します。
採用活動活動においてペルソナを作成する目的は大きく2つあると考えています。
- 採用活動を推進する上で、候補者に向けて様々な施策を展開することになりますが、施策の良し悪しをペルソナを基準に判断することで、施策の検討が常に候補者目線で行われるようにするため
- 採用活動に関わるメンバーが「獲得したい候補者」に対してそれぞれの脳内で都合よく解釈してしまう状態を避け、解像度高く共通認識を持てている状態を形成するため
採用活動を推進する上では、採用サイトや候補者向け資料・オウンドメディアなど、「候補者に向けて訴求するコンテンツ」の企画が多く発生します。またそれらのコンテンツを、候補者のことを理解している採用担当者以外が作成するというシーンも多いでしょう。
ペルソナを作成することで、ステークホルダーが多い状況下においても、候補者という軸をぶらさずに施策を展開することができます。
2-1-1:就職活動に対する価値観・考え方・行動に関する発話と、ニーズの抽出・整理
ペルソナ設計にあたり、まずは「1-4」のプロセスで整理した「就職活動に対する価値観・考え方・行動に関する発話」と、「発話の背景にある候補者のニーズ」を確認します。
(ペルソナ設計の土台となる情報を整理します)
2-1-2:価値観・考え方・行動の分岐がある項目を抽出しインタビュイーをマッピングする
続いて、ペルソナとしてのパターンと、各パターンでの人物像を明確にしていくために、候補者の中でどのような分岐が発生しているのかを整理します。
抽出した発言を整理して行くと、「獲得したい候補者」の中でも、価値観や行動の特性が一つではなく、複数のパターンがあることが分かります。 このパターンが、ペルソナのパターンにも関係してくるため、下記の画像のように、就職活動に対する価値観・考え方・行動が分岐する項目を抽出し、項目に対して各インタビュイーの立ち位置をマッピングしていきます。
2-1-3:分岐の背景から行動変数を推察する
「2-1-2」で整理した分岐に対して、なぜこのこのような分岐になったのか、インタビュイーの属性情報や思考性についての発話・実際の行動を見返し、「行動に影響を与えている因子」を特定します。
この行動変数の内容が、ペルソナシートの情報項目になります。
2-1-4:ユーザーゴールを設定し、ゴールに対して行動変数を紐づけていく
ペルソナのパターンの分岐になる「就活におけるゴール」が何か、見極めていきます。 自社が獲得していきたい候補者の中でも、下記の通り、就活というファーストキャリアを選ぶ体験におけるゴールは複数発生するはずです。 このゴールが異なれば、就活における体験や就活時に発生するニーズも変わってくるため、このゴールのパターン数=ペルソナのパターン数となります。
上記の通り、就活のゴールに対して、STEP3で整理した行動変数を紐づけていき、人物像としての骨子を形成していきます。
2-1-5:ペルソナシートとして整形していく
「STEP4」まででペルソナの骨子はできている状態となるため、最後に自身以外(ペルソナ作成者)以外もペルソナに対して直感的かつ解像度高く理解できるよう、ペルソナシートとして整理していきます。
その際、ペルソナがどのような人物かより立体的に捉えられるように 「2-1-4」で書き出した情報だけでなく、「それぞれのペルソナが持つニーズがより顕著に出やすい情報」を補足しながら記載していきます。 (例えば、大学・文系/理解・保有スキル・選考企業など)
参考|ペルソナの優先順位付け
複数のペルソナが存在する場合、採用サイトなどの採用全体に寄与する施策を展開する際に「どのペルソナを意思決定の軸にすれば良いのか分からない」という問題が発生する可能性があります。
そのため、複数のペルソナが発生する場合は、どのペルソナを優先的に採用していきたいのか、優先順位付けを行いましょう。
会社として、現場として「どのペルソナを優先的に獲得していきたいのか?」というビジネス要望を元に決定し、採用に関わるメンバーの中で共通認識を持てるようにしておきましょう。
2-2:候補者の理想の体験設計(CXジャーニーの作成)
採用ペルソナができたら、いよいよペルソナの採用体験設計を行なっていきます。具体的には、CXジャーニーと呼ばれるアウトプットを作成し、体験の設計及び体験に対する認識合わせを行なっていきます。
CXジャーニーとは?
CXジャーニーとは、候補者が自社のことを知るところから、応募・選考を経て入社意思を固めるまでの体験を設計し、可視化したものです。
このアウトプットは、UXデザインにおけるカスタマージャーニーの候補者体験版となっていることから、このアウトプットを「Candidate Experience ジャーニー」→「CXジャーニー」と呼んでいます。
▼アウトプットイメージ
CXジャーニーを作成することで、設計する候補者の行動範囲を定め、範囲における行動・思考・感情・タッチポイントとの関係性を明らかにすることできるだけでなく、 採用活動に関わるチームで「提供するべき体験」に対して共通認識を持つことができます。
▼参考:カスタマージャーニーを作成するときに気を付けるポイント
CXジャーニーの中には、「AsIs(現状)CXジャーニー」と「ToBe(理想)CXジャーニー」の2種類が存在し、AsIsは現状の体験把握・ToBeは理想の体験設計を目的として作成します。 (本記事では、ToBeジャーニーを参考アウトプットとして紹介)
2-2-1:ペルソナの採用体験をフローを書き出す
CXジャーニーの設計にあたり、まずはToBe(理想)の体験の流れをとらえていきます。ペルソナが現状どのような行動フローを取っているのか、ユーザー調査で取得した情報から、就職活動開始〜入社意思決定までの流れを書き出していきます。
(下記アウトプットは、新卒採用における候補者体験の流れとしての一例を記載)
2-2-2:各シーンにおける具体的な体験を設計
次に、候補者がどのような行動をとり、その背景にはどのような背景があり、自社にどんな印象を抱いているのか。といった、各フェーズにおける具体的な体験を設計していきます。
ここでは、各フェーズの体験における「タッチポイント」「行動」「思考・感情」とのつながりを捉えることで、「どの媒体と接点を持っているときにどんな行動を取っていて、その時にどんな感情であれば良いのか」という体験と仕掛けの繋がりを捉えることができます。
そのため、同じ列に記載されている内容の整合性が取れていることを意識しながら、作成していきます。
2-2-3:全体の整合性・実現可能性を担保する
最後に、全体の体験としての整合性と、体験の実現可能性について精査していきます。
ToBe CXジャーニーの目的は、「ペルソナが自社に対して理想のブランドイメージを持ち、入社意志決定してくれる体験」に対して共通認識を持つことになりますが、ここで机上の空論となる体験を設計してしまっては、実際には実現し得ない体験となってしまい、ジャーニーとして機能しないものになってしまいます。
前段のプロセスでリサーチした「自社の強み」や「生かせるリソース」を加味しながら、実現可能な理想の体験を描くことが重要です。
【3】クリエイティブ制作フェーズ
フェーズ2にて、ペルソナに自社を選んでもらうまでの一連の体験を定義することができたら、その体験上で機能するクリエイティブを制作していきます。
クリエイティブと一口に言っても、採用サイト・採用資料(会社紹介資料)・各種媒体の原稿・オウンドメディア・動画など様々ですが、今回は新卒採用サイトを例に制作プロセスを紹介していきます。
3-1:体験上で機能するクリエイティブ定義・役割の明確化
まず第一に、先ほど設計した理想的な体験設計に対して、どの体験のどのフェーズでどのクリエイティブが機能するのかを把握していきます。
体験設計フェーズで作成したTo-BeのCXジャーニーを参考に、今回の対象となっている採用サイトがどのフェーズで体験に寄与するのか、ジャーニー上で明確にしましょう。
CXジャーニー(CXジャーニーに限らずカスタマージャーニー)は、着目する候補者の体験範囲を定め、その体験範囲の中での行動・思考・タッチポイントとの連動性を理解するために有効なフレームです。
採用サイトが機能する体験フェーズをジャーニー上で明確にすることで、採用サイトを通じて候補者の行動・思考どうデザインすれば良いのか?が明確になります。
3-2:クリエイティブで満たすべきユーザーニーズ・ビジネスニーズの明確化
「3-1」のフェーズで体験フェーズを明確にした後は、各フェーズにおいて発生する候補者の情報収集ニーズを洗い出していきます。同時に、採用サイトを通じて会社として伝えたいこと(ビジネスニーズ)も洗い出していきます。
3-3:ニーズを満たすコンテンツ企画(コンテンツインベントリストの作成)
採用サイトで満たしたいユーザーニーズ・ビジネスニーズの洗い出しが完了したら、それらのニーズを満たすコンテンツを企画していきます。
下記のコンテンツインベントリストのような形式で、コンテンツ案とその詳細、設計意図、コンテンツが満たすビジネスニーズ・ユーザーニーズの対応関係が分かるような形で整理していきます。
後続の情報設計フェーズに向けて、各コンテンツをペルソナがどのような流れで閲覧するか、利用シナリオまで設計しておけると良いでしょう。
3-4:情報設計・ビジュアルデザイン
コンテンツとその利用シナリオが確定したら、それらを元に体験(シナリオ)を実現するための情報設計・導線設計・ビジュアルデザイン制作を行い、最後に制作したデザインをもとに実装していきます。
ここからのプロセスとしては、通常のサイト制作フロート同様になるため割愛させて頂きますが、最後に弊社でご支援したPJでのアウトプットをご紹介します。
▼実際のご支援内容はこちら
さいごに
ここまで長い記事を読んで頂きありがとうございました。本記事では、根本となるブランド戦略から見直し、ブランド価値を一貫して提供するための実行プロセスについてまとめさせて頂きました。
拙い文章にはなりますが、採用活動に課題を感じている誰かにとって、少しでも意味のある記事となれば嬉しいです。
採用活動は、成功のための変数が非常に多いことから、一つの採用施策だけでは解決できない課題も多く、現状の施策ベースでの採用数に限界を感じている方も多いのではないでしょうか。
採用ブランド形成は、企業様にとって非常に大きなテーマになってきますが、持続的に採用可能な企業体制を作っていくためには非常に重要度の高いテーマであると感じています。
本コンテンツが、採用ブランディングのプロセスや重要性に対する理解を促進する一助となり、統合的な採用ブランディングに少しでも興味を持って頂けると嬉しいです。