ブランディングをする企業と聞いて、どのような企業を思い浮かべるでしょうか。もしかしたら多くの人が一般の消費者向け(BtoC)の企業を思い浮かべたかもしれません。しかし、法人向け(BtoB)企業にもブランディングに取り組むメリットは多く存在するのです。
本記事ではBtoB企業に所属されている方向けに、BtoB企業がブランディングを行う必要性や成功事例、効果や進め方を解説していきます。ブランディング全般について解説したウェビナーへのリンクも掲載していますので、ぜひ最後までお読みください。
目次
BtoBブランディングとは
BtoBブランディングとは、ビジネス対ビジネス(BtoB)の取引において、企業が自社の価値を高め、顧客企業や所属する社員との信頼関係を構築するための戦略です。
これまでの日本のBtoB企業の多くは、「モノが良ければ売れる」という考えのもと成長してきました。ですが、現在の市場においては、良いモノを提供するだけでは事業の成長は鈍っていく一方です。モノの良さに加えて、企業としての信頼を顧客や社員との間に築いていくことが重要な時代と言えます。
そこで必要なのが、企業としての独自の価値や会社のビジョンを伝えていく活動というわけです。これはまさにブランディングの範疇であり、日本のBtoB企業の多くがこれまで注力してこなかった分野です。
なぜBtoB企業がブランディングに取り組む必要があるのか
ここではBtoB企業にとってのブランディングの必要性を2つピックアップしてご紹介します。
訴求方法だけでは作り出せない差別化ポイント
ブランディングが重要視されるより前のBtoBマーケティングといえば、製品や技術力がいかに優れているかこそが最大の訴求方法となっていました。しかし、競合が増えたり、インターネットの普及に伴い顧客の持つ選択肢が多様になったりと、顧客が選ぶコストも、顧客に選ばれるコストも大きくなっています。価格が安い、品質が良い、といったメリットだけでは、競合を出し抜くことが難しい時代に変わっていっているのです。
ですが、ブランドイメージを適切に伝えていくことができれば、顧客に「モダンなWebサイト制作ならあの会社が得意そう!」や「とにかくスピード重視で納品してもらうならこの会社に頼もう!」といった認識をしてもらうことに繋がります。こういった差別化こそ、現代社会で顧客に選んでもらうために必要なものなのです。
VUCA(変化の激しい)時代への適応
BtoB企業がブランディングに取り組む必要性の1つとして、VUCA時代への適応のため、が挙げられます。
※VUCAとは
・変動性(Volatility)
市場や技術、政治的な環境の急速な変化が、予測を困難にし、企業の戦略策定に不確実性をもたらしている。
・不確実性(Uncertainty)
経済や社会の動向に関する不確実性が高まり、長期的な計画を立てることが難しくなっている。
・複雑性(Complexity)
グローバル化、技術の進化、環境問題など、企業が対処しなければならない問題が多岐にわたり、複雑性が増している。
・曖昧さ(Ambiguity)
正しい答えが一つではなく、多くの解釈が可能な状況が増えており、意思決定が困難になっている。
以上の頭文字をとったもの。変化が激しく、先の予想が難しいということを指す。
この時代に企業に求められるものとしては、主に以下の3点です。
- 不確実性への対応
不確実性の中で企業が一貫した方向性を保ち、顧客の信頼を維持することが必要。 - 変化への適応能力の強化
企業は迅速に状況に適応し、市場の動向に応じて戦略を変更する柔軟性が求められる。 - 競争優位の確保
競合との差別化を図り、その企業ならではの地位を市場で築くことで、顧客との強固な関係性を構築することが必要。
一貫した方向性や競合との差別化という点は、まさにブランディングで解決できるポイントです。こうしたVUCA時代への適応の解決策として、ブランド戦略を用いる企業はBtoB、BtoCに関わらず増加傾向にあります。
BtoBブランディングの成功事例とその効果
それでは、実際に行われたBtoB企業のブランディングの事例を見ていきましょう。弊社が過去にご支援した日本第3位の水道管メーカー、日本鋳鉄管株式会社様(以降、敬称略)についても掲載しています。事例をもとに、BtoB企業のどういった課題に対してブランディングが効果的なのかも知っていただけましたら幸いです。
日本鋳鉄管株式会社
日本鋳鉄管は過去、
- ステークホルダーに対して自社が提供している価値を正しく伝えられない
- 社内に蔓延している挑戦しない雰囲気
という大きく分けて2つの課題を抱えていました。
当初は、1つ目の課題を解決するためにコーポレートサイトの改修のみご依頼いただきましたが、ヒアリングを重ねて日本鋳鉄管の抱える2つ目のような課題を深く理解し、ブランディングの刷新こそが課題解決の鍵であると定義しました。
ブランディングの刷新による課題に対しての効果は、
- 日本鋳鉄管がステークホルダーに持ってもらいたい印象と合致する戦略的なコーポレートサイトの完成
- ブランドイメージの社内浸透を徹底したことによる、もっと生産性を上げよう、もっと会社を良くしよう、という現場の社員たちのモチベーションの醸造
の2つを実感できるレベルまで提供することができました。
より詳細に本事例について知りたい方には、以下の実績ページおよび弊社代表の記事がおすすめです。
Salesforce
最も有名なCRM(顧客関係管理)ツールと言っても過言ではないSalesforceも、ブランディングが優れたBtoB企業の1つです。
Salesforceブランドの肝は、そのタグラインにあります。同社のタグラインとは、「Blaze Your Trail(道を切り拓く)」というもの。Salesforceの社員やユーザーは、そのタグラインに共感したコミュニティの一員でもあるのです。
※タグラインとは?
ブランドを構築する要素を凝縮した世界観を表す一言。独自性があり、ポジティブでブランドの世界観を表します。
実際にSalesforceの公式サイトを見てみると、上記のタグラインから派生して、Salesforceに関わる人々のことを「Trailblazer」と呼称しています。これによって、ステークホルダー全員に、ブランドの一部分であるという感覚を提供しています。
そして、ブランドとステークホルダーとの間に強固で良質な関係性を構築することができれば、他の企業との競争において非常に強力な優位性となるでしょう。これも、ブランディングの効果としてぜひ知っておいてほしい点の1つです。
IBM
アメリカに本拠地を置くテクノロジー関連のBtoB企業の中でも、IBMのブランドは特に効果的なブランドの1つです。その証拠に、世界の魅力的なブランドをランク付けする世界ブランドランキング2023でも、BtoC企業が多くを占めている中、18位にランクインしています。
IBMの歴史の中でも代表的な2つのブランドの転換点をここでは紹介します。
- 2000年代:e-business
市場の競争が激しくなり、次第にPC業界のリーダーから退きつつあった1980〜2000年の状況を打破するために、IBMはe-businessというコンセプトを打ち出して、ただのメーカーという立場から「サービスを中心とするインテグレータ」にブランドを再構築しました。 - 2010年代:SmartPlanet
だんだんとその利便性を増してきたデータとクラウドの可能性を見据え、SmartPlanetとコンセプトを置き、ビッグデータとクラウドを提供する企業へと転換していきました。
これらのブランド転換の根底にあるのは、「Be essential(必要不可欠な存在となれ)」というIBMのパーパスです。IBMがその時代の社会にとって必要不可欠であるためにはどういうブランドであるべきか、という答えが、本項目で紹介した2つのコンセプトに込められていることがわかります。
結果として、2023年度はソフトウェア、コンサルティング、インフラそれぞれの事業で成長しているなど、優れたブランド力を発揮しています。
BtoBブランディングの進め方
それではここで、セブンデックスの行うブランディングプロセスに則って、BtoBブランディングの進め方を解説していきます。
情報整理
情報整理フェーズでの最大の目的は、その企業らしい指針を作り出すことです。そのためには大きく分けて2つの要素を収集していく必要があります。
- 環境
– 企業の現状
– 市場の環境
– 未来の環境 - 意志
– その企業らしさ
– 企業としてどうありたいか
– 目指す目的地はどこか
以上の要素を徹底的に調査・インタビューし分析することによって、次のステップの効果が最大化されます。
企業としてあるべき姿を定義する
このステップで定義する「企業としてあるべき姿」こそが、ブランディングにおける最も大事な要素になってきます。前の項目の言葉を借りると、訴求方法以上の差別化ポイントを定義し、どのような要素をその企業ならではであるとステークホルダーに認識してもらいたいかをここで決定します。
情報整理のフェーズを徹底的に行うことによって、あるべき姿の解像度を高いものにできますし、説得力も生まれます。ブランドを体現する社員やメンバーに深く納得してもらえるものであれば、以降のプロセスもより効果的になります。
ブランドを体現したシステムを作る
このフェーズでの目的は、ここまでで定義してきたブランドの核(ブランドコア)となる部分を、ステークホルダーに理解してもらうことにあります。
代表的なものだと、パーパス、ミッション、ビジョン、バリューなどの、ブランドとしての核を表現するための仕組みが挙げられます。こういった仕組みを活用することで、社員、顧客、株主、金融機関、地域社会といった各ステークホルダーにブランドの目指す姿を伝えられるのです。
例として、セブンデックスのコーポレートサイトではどのように表現しているかをお見せします。
社内浸透・体質化・実践
ここまで定義してきたブランドコアを体現するのは、他ならない社員全員です。正しく浸透が進めばそれが企業の体質となり、最終的には社員全員がそのブランドらしい行動や意思決定を実践してくれるようになります。
浸透→体質化→実践を実現するためには、一般的に以下のプロセスを踏む必要があると言われています。これはいわゆるインナーブランディングと呼ばれるものの一部で、理念浸透については専用の記事がありますので、そちらもぜひ参照してみてください。
対外的なコミュニケーション
このフェーズにおいても、最も重要なのはブランドコアに基づく一貫性のあるブランドメッセージの発信です。一朝一夕に効果が現れることは稀で、企業外のステークホルダーとの継続的なコミュニケーションが欠かせません。
コミュニケーションにおいて一貫性を保つことによって、「〇〇と言えばこの会社!」といったような認知をステークホルダーに持ってもらうことが可能になります。結果として、市場におけるブランドの存在感が増し、長期の目線で考えたときのブランド価値の構築に役立ちます。
効果測定・新サイクルへ
ブランディングに限りませんが、継続的な成長のためには効果測定が欠かせません。
データに基づいた「評価→理解/洞察→改善」のサイクルは、ブランディングを主導していく上で常に意識しておくべきであるとセブンデックスは考えています。
ブランディングについて学べる本とウェビナー
ここまで解説してきたこと以外にも、書籍からは多くのことを学べます。実際に手元に本を置きながら勉強したいという方もいらっしゃるかと思いますので、ここではおすすめの書籍を4冊ご紹介します。
ニューヨークのアートディレクターがいま、日本のビジネスリーダーに伝えたいこと
こういう時に役に立つ
ブランドの本質を分解して言語化、可視化してまとめる際に、この本のブランドDNAについて書かれている章がとても役立ちました。
ブランド戦略シナリオ―コンテクスト・ブランディング
こういう時に役に立つ
こちらは戦略策定のフェーズでももちろん役立ちましたが、私は主に戦略策定前のリサーチフェーズで参考にさせていただきました。この本を読むことで、これからやるリサーチがどのように戦略に繋がるのかをイメージしやすくなると思います。
事例で学ぶブランディング ランドーのデザイン戦略大公開
こういう時に役に立つ
「ランドーの手法を学ぶ」の章では、実例を交えながらブランディングに必要な基礎が項目ごとに記載されているため実際のプロジェクトに置き換えて考えやすいです。
ブランドをデザインする!
こういう時に役に立つ
ブランドの本質からビジュアルアイデンティティへ昇華させるフェーズでの着眼点を事例ごとに知ることができ、着眼点の拾い方の幅が広がります。
本以外にも!セブンデックスのウェビナー
本以外でブランディングについての知識を深める方法としては、ウェビナーへの参加や視聴が挙げられます。しかしオンラインとはいえ、リアルタイムでウェビナーに参加するのにハードルを感じている方もいらっしゃることでしょう。
そこでおすすめなのが、弊社のオンデマンド型ウェビナーです。一度ダウンロードしていただければいつでも見返すことができます。弊社の代表取締役:中村がスピーカーを担当しており、過去ご視聴いただいた取引先の皆様にもわかりやすいとご好評でした。以下のリンクからダウンロードできますので、この機会にぜひご視聴ください。
ブランディングならセブンデックス!
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。BtoB企業がブランディングに取り組む必要性や効果を少しでも実感していただけましたら幸いです。
また、成功事例の項でもご紹介した通り、弊社セブンデックスにはBtoB企業様のブランディング実績もございます。ブランディングを検討される際は、ぜひご相談ください。
営業のプロフェッショナルが揃い、効果的な営業方法や戦略を持ってBtoB営業代行を行う会社も紹介します。
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