「ガス会社」から新しい企業像へ。 変革に向けた挑戦を共に進めるパートナーとして
東邦ガスグループは長年において、ガスを中心としたエネルギー供給を主な事業としてきました。
ところが近年、カーボンニュートラルの推進により市場環境は大きく変化しています。
そこで、東邦ガスグループは2022年に「東邦ガスグループビジョン」を公表。このグループビジョンを実現するため、ブランドを再定義し社内外の企業イメージを向上させるパートナーとして、セブンデックスにご依頼をいただきました。



リブランディングの必要性について経営陣と共通認識を築く
グループ全体で数6,000名を超える社員を擁する同社グループの変革を実現するためには、目指すべきブランド像を定義し掲げるだけではなく、経営陣の深い理解を得ることが不可欠です。
そこで、ブランド戦略の立案やブランドアイデンティティの定義を行う前に、経営陣と共通認識を築くための勉強会や外部講師を招いた講演会の実施しました。
「ブランディングとは何か」という基本から、「なぜブランディングが必要なのか」という経営戦略上の位置づけ、そして「ブランディングによって得られる変化」まで、経営陣の視点に立ち、その必要性への理解を深められるように勉強会を設計しました。
また、理論だけではなく、よりイメージを具体的にしていただくため、実際にコーポレートリブランディングを経験した企業から外部講師を招き、体験談を語ってもらう講演会も開催しました。これにより、ブランディングの必要性について共通認識を形成し、プロジェクトの推進基盤を整えました。

会社の独自価値を明らかにし、「魅力的な地域をつくる会社」としてブランドコンセプトを定義
ブランドの今後目指すべき方向性を明らかにするために、多角的な調査・分析を行いました。 この過程で浮かび上がったのは、東邦ガスグループの地域への強い思いと、100年以上に渡る活動を通じて築いてきた地域からの信頼です。同社グループの主力事業であるガス供給は、地域の発展と共に歩んできた歴史があり、創業時から「地域をより豊かにしていく」という使命感を持ち続けてきました。
また、ガスを安全に供給し地域に安心を届けるため、「真摯に丁寧に取り組む」という姿勢が全社員に深く根付いています。その姿勢と長年に渡って守り続けてきた安心が、地域住民からの信頼を築いてきた理由であり、時代が変化しても変わらない東邦ガスグループの最も大切にするべき独自価値だと考えました。 その考えから、東邦ガスグループの目指す方向性を「魅力的な地域をつくる会社」へと再定義しました。

ブランドアイデンティティの策定と、全社からの納得と共感を得る合意形成
東邦ガスグループの目指す方向性を、社内外のステークホルダーが共通した認識を持てるように、ブランドアイデンティティとして2つのアウトプットを定義しました。目指すブランド像の正しい理解を促す「わたしたちの思い」と、そのブランド像を想起させる「コミュニケーションフレーズ」です。
ブランドアイデンティティは、企業が提供する価値や社会における存在意義を表すものであり、今後の企業活動の軸となる非常に重要なものです。東邦ガスグループには、様々な社員の意見も踏まえながら意思決定を行う企業文化があります。その文化を尊重し、セブンデックスは社内での合意形成プロセスまで丁寧に支援を行いました。
現場の社員に参加いただく制作ワークショップを実施し、その結果を踏まえ、数百を超えるブランドアイデンティティのパターンを制作しました。経営陣向けの説明資料の作成支援まで、全社で納得いただけるものが制作できるよう、半年間をかけて社内での合意形成を行いました。この丁寧なプロセスによって、深い納得と共感を得ることができ、その後の全社的な浸透活動の土台を築くことができました。

ブランド価値定義
ブランドの目指すべき方向性や、ブランドアイデンティティを定義するにあたり、セブンデックスは自社・市場・競合の3つの視点から徹底的な調査を行いました。
自社の観点では、社員6,000名に向けた従業員サーベイを通じて、社内から見た会社の本質的な「らしさ」を探るとともに、主要な工場・営業所等を訪問し、企業文化や取り組む姿勢を肌で感じ取り理解を深めています。同時に経営陣とのディスカッションを行うことで、創業以来受け継がれてきた思いや志を丁寧に紐解きました。
市場・競合の観点では、デスクリサーチを通じて業界における自社の独自価値や市場機会について考察すると同時に、一般消費者2,000名を対象としたブランド認知度調査や、顧客へのインタビューを通じて、市場から見た東邦ガスグループのイメージや期待している事について理解を深めていきました。
これらの調査を通じて明らかになったのは、多くの地域企業や人々との接点を持ち、確固たる信頼を築いてきた東邦ガスグループの強みです。この強みを活かせば、エネルギー領域に限らず幅広い産業への進出・拡大が可能であると共に、創業からつづく「地域をより豊かにしていく」という思いを実現することができます。 この調査内容を元に、前述の東邦ガスグループのブランドの目指すべき方向性やブランドアイデンティティを定義しました。


ブランドに沿った心象形成のためのクリエイティブ制作
ブランドアイデンティティである「わたしたちの思い」「コミュニケーションフレーズ」の定義に伴い、社内外のステークホルダーに正しい理解・共感を促し、ブランドに沿った心象を形成するために、複数のクリエイティブを制作しました。 社外向けにはブランドロゴや、ウェブサイト、ブランドムービーを制作。 社内向けにはブランドポスター、ブランドブックの制作、配布を行いました。
それぞれのクリエイティブが、例えば「仲間とそれについて語り合う」「この感動を誰かに共有したくなる」「街と自分の未来に胸を膨らませる」といった形で発展していくことを目指し、社内外のステークホルダーの行動変容、そしてブランドが根付いていくことを狙いました。
コミュニケーションフレーズロゴ
コミュニケーションフレーズ「未来の、まんなかへ」のロゴを制作しました。「東邦ガスグループ」を表すブルーの円と「地域やお客さま、社会」を表すイエローの円が交わり、そこが「まんなか」となることを表現しています。また、東邦ガスグループがつくる「誰もが住みたい地域」の世界観を、温かみのある手書きの書体で表現しました。



ブランドサイト
東邦ガスグループが実現する「誰もが住みたい地域」の様子を、サイトに訪れた人が視覚的に体験できるブランドサイトを制作しました。街の全体図や、東邦ガスグループの提供するサービスによって安心や賑わいが生まれるシーンをビジュアルで表現しています。
東邦ガスグループの「ガスを供給する会社」というイメージを刷新し、地域を豊かにしていくために新しい挑戦をしていくことが、直感的に感じられるブランドサイトになっています。
ブランドムービー
東邦ガスグループの過去から未来へと続くストーリーを動画で表現しています。創業から続く地域への思いと、ガス事業という枠を超えて多様なソリューションで、地域の「安心」と「賑わい」に貢献していくこれからの東邦ガスグループを伝える構成になっています。
多様なステークホルダーが東邦ガスグループの提供価値を理解し心象が刷新されること、また社員自身が目指す未来を直感的にイメージできることを狙います。

ブランドポスター
手で形づくる丸と、その丸の向こうにはわたしたちが描き、築いていく未来があることを表現し、コミュニケーションフレーズ「未来の、まんなかへ」の理解促進を図るポスターです。社内に設置し、ポスターを見かける度にブランドを認知させるのと同時に、自分たちがその未来をつくる当事者であることへの気づきをもたらすことを狙います。

ブランドブック
東邦ガスグループの過去から、新ブランドが策定された現在、そして策定後の未来をひとつのストーリーに乗せて語り、「わたしたちの思い」「コミュニケーションフレーズ」の背景にある考え方を深く理解してもらうためのブランドブックです。コンテンツ制作において、漫画調にする等、最後まで気を張らずに読み進められるように工夫しました。


会社変革の意識を醸成するための施策
ブランドコンセプトの策定やブランドアイデンティティの定義と並行して進めていたのが、社内に「会社が変わる」という機運を醸成するための活動です。ブランドアイデンティティを定義し掲げるだけで、それを浸透させていくことはできません。表層的なブランディングで終わらせないために、まず「東邦ガスグループ全体で会社が変わっていく」という意思を示し、その期待を醸成した上でブランドを掲げることで効果的にブランド浸透ができると考えました。 主に行なったこととしては6つです。
役員インタビュー冊子の発行
経営陣全員から、会社の未来に対する考えや挑戦への姿勢を伺い、インタビュー冊子として発行しました。普段直接コミュニケーションを交わす機会が少ない会社の経営陣の変革に対する姿勢を示すことで、全社で変革に対するモチベーションを高めることを図ります。
ビジョンツリーの制作
ビジョンツリーは、東邦ガスグループ社員の思いを束ねた桜の樹のことです。社員一人ひとりから「なりたい東邦ガスグループの姿」とそのビジョンに対する思いを綴っていただき、その思いを桜の花びらに乗せた大きな桜の樹を壁一面に掲示しました。
会社が積み重ねてきた大きな幹に、社員の願いという花が咲き、大きくエネルギーに満ちた未来の実現を表現しています。

変革宣言会の実施
全社に向けて、会社を変えていく意思を示す宣言の場です。「会社が本気で変わろうとしている」ということを全社員に認識してもらうことを目的に、この施策を実施しました。
宣言会では、「ビジョンツリー」と「役員インタビュー冊子」を披露し、ビジョンツリーのイメージムービーも上映することで、変革への思いを多角的に伝える工夫を凝らしました。さらに、形式的な発表会で終わらせないように、宣言会の後に経営陣と社員が直接対話できる立食パーティーを開催。これまで遠く感じられていた経営陣と率直に語り合える場を創出することで、会社の変革を他人事ではなく、自分事として捉えられる場にしています。
セブンデックスは、会の企画から空間設計、イメージムービーの制作まで、変革の意思を効果的に伝えるための包括的な支援を行いました。醸成したい心象を効果的に醸成するためにブランドを理解している我々が一貫して設計することで、組織変革の機運を力強く後押ししています。

挑戦応援ポスターの制作
会社の変革していく機運を絶やさないために、ポスターの制作を行いました。変革に向け、失敗に対する心理的なハードルを下げ、挑戦への前向きなイメージを醸成するためのポスターです。実際に、これらポスターはグループ全社を含むすべての拠点に配布され、日々の業務で目にとまる執務室や会議室等に設置されています。

社員インタビュー冊子の発行
本社から離れた拠点・会社では、変革の機運が感じにくいという意見もありました。そこで、「身近な存在による挑戦」に焦点を当てた、全グループ会社を対象とした社員インタビュー冊子を発行しました。

マネジメント研修
マネジメント層を対象に、新しい価値を積極的に創出する組織のあり方や効果的なマネジメント手法について考える研修を企画しました。マネジメント層の意識と行動が変化することで、組織全体へと影響し、最終的には全社員が変革を実感できることを狙います。

変革宣言会実施後に行った社内向けのアンケートでは、「会社を変革していく熱意が伝わってきた」「変革にチャレンジする方たちがいる事に非常に安心した」「社長の言葉に強いメッセージを感じ、改めて私達自身で会社を変えていく必要があることを実感した」 という声をいただきました。ブランド浸透に向けた道のりは始まって間もないものの、変革機運の醸成により、既に社内では変化の予兆が感じられています。
今後も定義したブランドの社内外の浸透度合いを測るため、定期的に社内外に向けたサーベイを実施する予定です。本取り組みでリブランディングを完了とせず、継続的にブランド浸透のためのご提案を行っていくことを考えています。